舌苔がなく舌面が光っているように見えるのは、胃気の衰敗や胃陰の枯竭(こけつ)をあらわす。
苔が厚いのは、病変の極期によくみられ、病邪の侵入が深く、病位が裏にある。
舌苔が白→黄→灰黒色と変化する:病邪が表→裏、軽症→重症、寒証→熱証へと変化。
舌苔が潤→燥へと変化する:熱邪が盛んとなり、津液が消耗しつつある。
淡白舌:舌色は紅色が少なく白色が多い。
主に、気血が舌を栄養出来ないことに因る。重症者は、全く無血色であり、淡白にて栄潤を失い枯白舌で、危険状態であり、唇・齦・面色は蒼白で無華。淡白舌は、栄養不良と急慢性失血の貧血者に見る。
絳舌(こうぜつ):舌色が紅舌に比べて深い紅色
舌絳で舌面上に粘膩苔(ねんじたい)ある者は、中焦に汚く濁った物がある証。
絳色で無苔、光明無津(こうみょうむしん)、鏡面舌(きょうめんぜつ)と称す:内熱傷陰(ないねつしょういん)、陰津欠耗(いんしんけつもう)。
舌絳で新鮮でなく、乾枯で萎縮して豚の肝臓のようで、これは腎陰枯竭(じいんこけつ)である。
温病高熱時にも舌絳となる。その他に、慢性消耗性疾患、あるいは温熱病の後期、陰津欠虚でも絳色を見る。その他に、脱水や手術後の急性消耗性陰津の病証でも見られる。
青紫舌:青舌主陰寒、瘀血。紫舌は熱盛で気血壅滞(きけつようたい)、血瘀(けつお)を主る。
寒邪(冷える=寒湿邪)が肝(理気)腎(湿)陰経に直中(じきちゅう)して陰寒内盛となると、舌色が淡紫色で青色を帯び嫩滑湿潤となる。
舌色深青、あるいは舌辺青色、口燥するが水をすすぐ位で欲せず、あるいは舌面に瘀点・瘀斑を有す者は、気血凝滞、瘀血内積である。
嫩(どん):舌面の紋理がきめ細かくてしっとりと潤いがあり(細膩)、舌体ははれぼったくて軟らかい感じ(浮胖嬌嫩(きょうどん))がするもので、虚証が主体である。
多くは、疾病後期、抵抗力低下、正気不足で体弱の者に見られる。
胖腫(はんしゅ)と痩癟(そうへつ)(薄):舌体が正常より肥大腫脹し、口腔に充満するものを胖腫舌といい、舌体が痩せて小さく薄いものを痩癟舌(そうへつぜつ)という。
痩:痩癟舌は主に虚、一般に多くは陰血欠虚。
若し、舌質が痩薄で淡紅色で嫩:心脾両虚、気血不足で、常に貧血の者に見る。
舌質が痩薄で絳色で乾燥:陰虚熱盛(血虚内熱)
痩せ薄く無津、色は暗灰:重病
歪斜(わいしゃ):舌尖が一側に偏位することで、中風か中風の前兆を意味し、外風あるいは内風が経絡を阻塞し気血を渋滞させるために生じ、風邪中絡(ふうじゃちゅうらく)、風痰阻絡(ふうたんそらく)がよくみられる。
短縮:舌体が緊縮し伸ばすことができないもの。
寒凝による筋脈の拘縮、痰濁阻絡(たんだくそらく)による筋脈不利、熱盛傷津動風による筋脈攣急、気血・陰津不足による筋脈不栄などが原因で生じ、すべて危急の症候である。
燥苔:「燥苔」「糙苔(ぞうたい)」「燥裂苔」などがあり、舌苔の乾燥は、津液が上蒸(じょうしょう)しないためであり、津液が不足しているか上蒸する能力がないことを示す。
熱盛傷津、陰液虚損(津虚、陰虚)、燥邪傷肺などによる津液不足のほか、陽虚のために津液を生化し上蒸することができない「陽虚気化不行」の場合も発生する。
腐苔:舌苔の顆粒が粗大で厚くまばらであり、豆腐の食べかすが舌面に堆積しているように見え、ぬぐうと除去できる「無根」のものを腐苔という。
陰虚内熱の晩期に現れることが多い。
一般的な病変の経過においては、膩苔から化熱に伴って腐苔へと移行することが多く、腐苔が少なくなって新しい薄苔が生じると、正気が病邪に打ち勝って回復しつつあることを示す。
偏苔(中根部のみが薄い~少ない~無苔):胃陽が不足して上蒸できないか、腎陰が不足して上濡できないか、陰精や気血がすべて損傷している。
剝落(はくらく):舌苔が完全にあるいは部分的に剥がれ落ち、境界が不明瞭なものを「剝苔」という。
胃気と胃陰の存亡を示し、予後を判断する上で大切である。
光剝苔(こうはくたい):舌苔が完全に剥落して乳頭も消失し、舌面が「鏡面舌(きょうめんぜつ)」ともいう。陰血、陰津の虚損が重度で、
舌面を濡養できない。胃陰虚、胃腎陰虚、気血両虚などでみられる。
花剥苔:舌苔の剥落が部分的であり、剥落部位が光滑を呈す。胃気陰両傷をあらわす。
血虚、陰虚
淡紅舌 →淡紅、痩小 (血虚)
→紅 →深紅 →絳 →絳 (陰虚)
痩小 痩小 痩小 痩小
乾燥 裂紋
薄白苔→苔少ない→花剥苔→鏡面舌
李乃民編『中国舌診大診』、辛瑛編『中医舌診知識』、北京・上海中医学院編『中国針灸概要』、邵鉄濤
編『実用中医診断学』、『中医雑誌』『針灸臨床雑誌』『湖南中医雑誌』、上海中医学院編『針灸学』、川井
正久編訳『中国医学の歴史』、広東中医学院主編『中医診断学』、長澤善夫著『東洋医学概説』、創医会
学術部主編『漢方用語大辞典』、藺雲桂著福建科学技術出版社『経絡図解』、張鴎、谷忠悦、高磊編著『経
絡腧穴応用図解』、鄭魁山著『針灸集錦』、周徳安著『針灸八要』、周樹冬著『金針梅花詩鈔』、高立山著
『鍼灸心傳』、靳士英・金完成編著『経絡穴位と針灸概要』、張文進著『針灸験方』、孫学全編『針灸臨
床問答』、張吉著『経脈病候弁証と針灸論治』、李友林著『実用最佳時間針灸精義』、柳谷素霊原著『簡
明不問診察法』、丸山・張共著『舌診弁証図鑑』、宋天彬著『舌苔図譜』、邵輝氏講義など