舌体(ぜったい)の形態では、「胖大舌(はんだいぜつ)」「痩舌(そうぜつ)」「歯痕舌(しこんぜつ)」「裂紋舌(れつもんぜつ)」などが臨床的に重要です。
痰湿(たんしつ)といって、全身に水があふれると、足が浮腫(むく)むように、舌も浮腫んで、「胖大舌」になります。「胖大舌」は唇よりも舌が大きくなります。さらに浮腫むと、足が浮腫んで靴下の跡がつくように、歯の痕がつきます。「歯痕舌」です。これは脾虚(ひきょ)や陽虚(ようきょ)などの虚証(きょしょう)が進行して、舌も虚証を反映して軟弱となって歯痕がつきやすくなります。逆に、全身の血や津液(しんえき)が不足すると、舌は痩せて「痩舌」となります。鬼の面の般若のように、尖った舌になります。
「裂紋舌」は、虚証をあらわします。舌に亀裂が入っています。これは、乾燥状態が続いた田んぼをイメージしてください。
もう1つ重要なのは「歪斜舌(わいしゃぜつ)」です。患者さんに「舌を出してください」と言った時に上の写真のように、舌が偏(かたよ)って出ます。これは要注意です。脳血管障害(脳卒中)による片麻痺の可能性があります。東洋医学の「中風(ちゅうふう)」「肝風内動(かんふうないどう)」です。こういった「歪斜舌」を見た場合や、脳卒中を疑う場合、必ず、舌の裏の舌下静脈を確認します。また「顫動舌(せんどうぜつ)」といって、舌が震(ふる)える場合も要注意です。これは東洋医学的には「肝風内動」です。この震える舌も脳卒中の可能性がありますし、甲状腺機能亢進症やヒステリーでも震えます。