舌下脈絡(ぜっかみゃくらく)を観察することによって動脈硬化を診断し、かなり高い応用価値があります。その臨床的特長と診断上の意義についてのべます。
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降圧剤・抗凝固剤・抗血小板剤服用 |
- 1.脈絡紫暗(みゃくらくしあん)
舌下脈絡の色が紫暗状態を呈し、年令45才以上では、患者は動脈硬化を提示しており、そして紫暗の程度が加重してゆくにつれて、その動脈硬化の程度もまた加重しています。このときの病変、侵害の主な臓器は心と肺で、その病理変化の基本的特長は、心血瘀阻(おそ)、肺気がその散布をうしない、粛降(しゅくこう)無力、両下肢に程度のちがう水腫をともなう。
臨床症状と結合すると判断は難しくありません。たとえば紫暗の程度が比較的重く、同時にめまい、頭痛、目くらみ、記憶力減退などをともなうと、脳動脈硬化あるいは眼底動脈硬化の可能性があります。 - 2.脈絡の怒張屈曲(どちょうくっきょく)
舌下脈絡の色が紫暗である以外に、同時に怒張屈曲しているのは、高血圧症、動脈硬化であることを提示しています。舌下脈絡が甚だしく舌体より外に突出、たとえばミミズ状の場合は、その病状が比較的重いということを提示しています。このとき血圧指標を参考にこれを確定します。その病理変化は肝陽上亢で。多くは頭痛、めまい、いらいら、怒りやすいなどの症状を現します。平肝潜陽活血化瘀(へいかんせんようかっけつかお)するがよいでしょう。 - 3.脈絡結節
舌下脈絡に結節がある。小さいのは穀粒、大は米粒ぐらいの、色が紫暗の特長を持つ者は、多くは動脈硬化に不整脈が伴う者で、その脉は多く結代細遅。病機は心気不足あるいは気陰両虚(きいんりょうきょ)。益気復脉(えっきふくみゃく)あるいは養陰寧心(よういんねいしん)、活血袪瘀(かっけつきょお)するがよい。 - 4.脈絡乾燥あるいは水腫
舌下脈絡で色が暗、質が燥であるいは水腫がある。前者は陰虚火旺(いんきょかおう)あるいは陰液衰乏(いんえきすいぼう)、後者は脾、肺、腎三臓の機能異常、水液あふれ、これは患者の動脈硬化を提示する。一部の症例では舌下脈絡が水中の稚魚の胃腸のようなのがあり、半透明の中で見え隠れする。あるいは膠漆のような涎、あるいは舌体滑で魚の涎の様なというのはみな、病が重く、長引いていることを提示している。あるいは養陰あるいは袪湿と各々法を施し、活血化瘀を同時にし、補虚を兼ねて、その陽を回復させてその陰を救います。
舌下脈絡は明白でみやすいので、その血中酸素の飽和度や血液の粘稠度、充満度などが観察しやすく、その他の診断方法と比べると、簡単便利かつ傷つけることがないという優れた点があり、舌下脈絡観察は動脈硬化診断の中で、かなり高い応用価値があります。
但し、同時に指摘しておくべき事は、舌下脈絡の観察は四診の一つであり、必要な時は四診と共に、西洋医学の手段を結合して総合分析をおこなうべきであるということです。