東洋医学的には、胃から気が上蒸(じょうしょう)して、舌苔を形成します。薄い「薄苔(はくたい)」は健康な状態です。ぶ厚い「厚苔(こうたい)」は裏証(りしょう)といって病気が内臓にある状態、邪気の旺盛な状態、痰湿証などをあらわします。「薄苔(はくたい)」は見底(けんてい)といって、舌苔を透して舌質を見ることができます。「厚苔」の場合は見底できません。
薄苔 | 厚苔 |
66才、腰痛 | 61才、膀胱炎 |
「滑苔(潤苔(じゅんたい))」は舌の表面は濡(ぬ)れてツルツルしており、光っている状態です。これは体に水があふれた状態を反映しています。寒証(かんしょう)と湿証(しつしょう)をあらわします。
「燥苔」は舌苔が乾燥しています。これはからだの津液不足(しんえきふそく)(陰虚(いんきょ))や熱証(ねつしょう)をあらわしています。
薄白舌・滑苔 | 絳舌、剥苔、燥苔 | 紅舌、燥舌、厚黄苔 | 暗紅舌、燥舌 |
64才、胃腸虚弱、軟、腰背痛、肩こり | 68才、看病疲れ、不眠、不安症、食欲少、27kg | 38才、肺気腫 | 腎不全透析中52才 |
ネバネバしてベッタリ・ネットリした舌苔を「膩苔(じたい)」といいます。これは痰湿をあらわします。「滑苔(かったい)」は、サラサラにした水が体内に溜まっていますが、これが腐ってドロドロの痰湿(たんしつ)になると「膩苔(じたい)」になります。
舌苔をぬぐうと、除去できるものを「腐苔(ふたい)」といいます。「腐苔(ふたい)」は「食積(しょくせき)」といって、たべすぎなどで体内に熱がこもった場合が多いです。あと「痰湿(たんしつ)」で熱をともなう場合も「腐苔(ふたい)」となります。
膩苔 | 腐苔 |
71才、坐骨神経痛(腰椎手術)、足が引きつる | 76才、手首骨折して動けない、食欲旺盛 |
剥落苔とは、舌苔が部分的に剥(は)がれ落ちているものです。気陰両虚(きいんりょうきょ)を示します。苔が剥離した場所に異常があると考えられます。また、胃の気と陰の欠損も考えられます。
紅舌、剥落苔 | 絳舌、中央剥落苔 | 淡紅舌、右偏剥落苔 |
70才、重度のめまい、難聴 | 84才、胃、肝臓、肺癌 | 78才、リウマチ、瘦せ、食少 |
淡紫舌、中央部剥落苔 | 絳舌、中央から舌尖剥落苔 | 絳舌、中央部から舌尖剥落苔 |
65才、大腸癌手術、脂肪肝、糖尿病、高血圧 | 72才、腰椎手術、気管支炎、疲れやすい、右胸痛 | 82才、糖尿病、喘息、腰膝痛、下肢のむくみ |
下の写真のような舌を西洋医学では「地図状舌」といいます。九州大学心療内科で研究された医師の松浦達雄先生は、「地図状舌があれば心身症(しんしんしょう)を疑ってよい」と言われていました。「心身症」とは、心理的因子によって身体的疾患をおこします。ストレス性胃潰瘍などが典型的です。心が原因でカラダの病となります。また、アレルギー性疾患の患者さんも地図状舌が多いです。
淡紅舌、地図状舌 | 淡紅舌、地図状舌 | 紅舌、地図状舌 |
65才、過労、ストレス | 52才、過呼吸症候群、肩こり、不整脈 | 73才、過度のストレス性、疲労 |