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薬草クラブ ナンテン

ナンテン 南天実(なんてんじつ) メギ科

ナンテンはメギ科の灌木で中国原産といわれます。日本でも本州中部以西の温暖な地方の林野に自生状態ですが鑑賞用に垣根や庭に植えられます。ナンテンは、木化した茎(幹)をもつ草本で、普通の樹木のような形成層が無く肥大成長せず年輪をつくらないという。

南天実にはベルベリン系アルカロイドが含まれています。ベルベリンは大腸菌やコレラ菌などの細菌に対し強い抗菌、殺菌作用を示すので大衆薬の下痢止めの主薬が配合されています。ナンテンが手洗いの近くに植えられる理由もこんなところにあるのかも。

赤飯の上にナンテンの葉を添える習慣がありますが、これはナンテンの葉が毒を殺すという意味のようです。確かに生の葉の中には微量ながら青酸配糖体が含まれており、これが熱と水分で水蒸気蒸留(熱い赤飯と重箱による)のような働きをします。消毒作用のあるシアン化水素が発生し、これが赤飯の腐敗を止める働きをします。

また、魚を煮るときこの葉を入れると魚のもちがよくなります。これも同じ働きのためと考えられます。

 

我が国の最初の記録は、藤原定家の明月記(1230)といわれ、この時代に渡来したのかもしれません。江戸時代の本草書は、漢名を南燭(なんしょく)・南天燭(なんてんしょく)・和名ナツテン、ラビテン「田舎の人なんでんぢくといふ、又らんてんという人あり」などの面白い記事があります。

しかし、薬用としての効能を説いた記録は、明治末年から大正期にかけての小泉栄次郎著『和漢薬考』前編421ページ「小児百日咳ニ白南天燭ノ実ヲ黒焼トシテ服サシム」とあるのがその最初のようです。

南天実はドメステインほかのアルカロイドを含み、薬としては、近代日本人の手による開発と考えられます。

 

ナンテンの赤く熟した果実を南天実(なんてんじつ)と称し鎮咳薬。とりわけ百日咳や喘息の妙薬。

江戸文政年間にしたためられた松屋筆記(明治四十一年刊)巻之六五-三「百日咳の妙薬、小児『クツメキ』といふ病にあへば必百日許痰咳をくるしむ 如何なる医術祈禱も験(ためし)なきものなり これに南天竺(なんてんじく)の実に砂糖を加えて煎服せしむれば速やかに効あり南天実冬を経たる物尤もよし」とあります。

 

葉は「タムシには笹の葉と南天の葉を等分、水六合にて煎じ度々洗って良し」「擦傷(かすりきず)には生葉の筋をとり粉にして付くべし」「ネズミに噛まれた傷には生の葉をもみ付けて良」「舌の腫れたるには南天の葉をくわゆべし」「唇乾き裂けたるには南天葉、細末にして付くべし」などの経験的利用方が遺(のこさ)れている。

人気のある一般的な小物に、難を転ずる「南天の箸」があり、これを使うと歯を強くするという。

 

効用

・ぜんそく、百日ぜき、せき止め 咽頭炎、歯痛など、生葉3~5gをコップ1杯の水で煎じてうがいすると、消炎の効がある。

・せき止めに 乾燥した実を1日に5~10g煎服。子どもの百日ぜきには、量を減らして1日3~5gにし、蜂蜜や水あめを少量加えるとよい。ナンテンの実は作用が強いので量を過さぬこと。

・食品の防腐に 魚を煮るときに、生の葉をちぎって入れると、魚のもちがよくなる。

・喘息・百日咳 南天実5~8gを水500mlを加えて半量まで煎じ、1日3回に分服。苦いので甘草や蜂蜜を加えてもよい。また視力回復にもよい。

・喘息の特効薬 桔梗2g、南天実10粒、黒豆10粒に水300mlを加え、半量になるまで煮つめ、1日2~3回に分服。

・蜂さされに、生葉をもんで汁をつけると痛みが止まる。

乗り物酔い、魚の中毒に生葉をかむ(料理屋の前にナンテンが植えられているのもこのためかもしれません)

・脚気には根を煎じて飲む。

・熱取りにご飯と生葉をよくすり混ぜ、後頭部に貼ると特効がある。また、腫れ物、乳の腫れ、関節炎の痛みにも患部に貼ると良く効く。

・南天酒:南天実200g、グラニュー糖200gをホワイトリカー1.8ℓに2ヶ月間密封しておく。1日量1-~20ml(喘息・百日咳・インフルエンザの咳止めによい)

 

秋から冬には赤い実が目につきます。なぜ赤くなるのでしょか?

それは、タネを運んでもらうためです。ヒヨドリやジョウビタキが真っ赤に熟したナンテンを食べにやってきます。が、鳥は一度に全部食べません。数個ついばむと飛び去ってしまいます。このわけは、実が味が苦く美味しくありません。まずいだけでなく人間にとっても毒があり、それで鳥は一度にたくさんは食べないのです。ナンテンにとっては、少しずつ食べてもらい、色々な所にタネを運んでくれるほうが効率がよいのです。