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薬草クラブ スベリヒユ

スベリヒユ(生薬 全草を馬歯莧(ばしけん)という)

[気味]酸、寒

[帰経]大腸・肝・脾

[主治]腸炎痢疾・尿血・尿道炎・小便熱淋(血毒を散じ、腫れを消し、腸を利し、胎を滑らかとし、毒を解し、小便の渋り痛みを治す)(清熱袪湿・散結消腫・利尿通淋)。

 

馬歯莧あますゆくしてひえのもの 大小べんをつうじこそすれ(すべりひゆ、甘酸くして冷えの物、大小便を通じこそすれ)

すべりひゆようはれものやかさくすり いのちをのべてとしよらぬもの(すべりひゆ、癰、腫れ物や瘡のくすり。命を延べて年寄らぬもの)

(橋本竹二郎訳『和歌食物本草』)

入間道(いりまぢ)の 大屋(おほや)が原の いはゐつら 引かばぬるぬる 我(わ)にな絶えそね

(『万葉集』巻14-3378)

(入間道は現在の埼玉県入間道郡のあたりで、「大家が原に生える“いはゐづら”を引くと、ずるずるとぬるんで抜けてしまうように、私と仲はきれてしまわないようにして下さい」)

莧(ひゆ)という名前は、葉や茎をゆでるとむめりがあることや、肉厚な葉がなねらかであることから付けられた。

 

ヨーロッパや東南アジアでは、野菜として改良した立滑莧(たちすべりひゆ)が栽培されています。

別の名を五色草(五色の色)とかイワイヅルといわれています。スベリヒユは、根は白く、茎は赤紫、葉は緑紫、花は黄色、種は黒いので、一本の草に五色すべてあるからです。

スベリヒユの古名は「伊波為都良(いはいつる)」と読みます。

「伊波為都良(いはいつる)」はお祝いの時に軒先に掛けるという。いつまでの緑が保たれることから、この強い生命力がお祝いのシンボルとなっています。

高温乾燥に強く、貴重な食料になって人々を救ったことから「ひでりぐさ」の別名もあります。

乾燥に強いのは「CAM」と呼ばれる特殊な光合成システムをもっているからです。「CAM」とは、水分の蒸発が少ない夜間に気孔が開いて、二酸化炭素を取り込んで貯めこんでおきます。そして、昼間は気孔を閉じて、貯えた二酸化炭素を材料に光合成を行う。そればかりか、葉の表面はかたい皮に包み、肉厚な葉の中には粘着物質を含んで、二重三重の守りで水分が逃げ出すのを防いでいます。

 

効用

馬歯莧(スベリヒユ)には、さまざまな薬効がありますが、中でも知られているのが、利尿作用、消炎作用、抗菌作用、解毒作用など。一般に皮膚疾患であるニキビや湿疹、泌尿器系疾患である膀胱炎や尿道炎、胃腸の障害である下痢及び腹痛といった症状に対して用いられており、他にも虫さされや疣(いぼ)、急性関節炎、痔といった症状に使われています。利用する際は、葉を夏の間に採取し、それを乾燥させたものを水で煎じ、飲用されます。また、煎剤を皮膚疾患に塗布して用いられています。

*スベリヒユ(馬歯莧)には、食用の植物の中でも、最も「オメガー3脂肪酸」を含んでいます。

この「オメガー3脂肪酸」は、本来魚油に多く、血圧、心臓冠動脈病などの血管系に優れた効果があり、健康素材とし有用です。

また、馬歯莧は、抗生物質と同じように、抗菌・解毒作用があるため、膀胱炎や腎盂炎などの泌尿器系の炎症をはじめ、余分な熱と水分が体にこもる「湿熱」が原因の肺炎や気管支炎などにも用いられています。

また、湿疹やアトピーなどの湿熱による皮膚病や、できものには、内用・外用の両方で使用されます。虫さされや毒蛇には、湿布薬として使われます。

 

スベリヒユを食べる

・サラダ・天ぷら・金平・若い葉をゆでて和え物、浸し物、天日乾燥した物を水に戻して煮物・炒め物、葉を乾燥した物を煎服。

・ナスと一緒にみそ炒め・ゴマ和え・ゼンマイのようにしたものを湯揚げ・人参などと炒め煮る・葉をゆでて粥に入れる

・酸味とぬめりを味わう(茎先)

開花前の軟らかい茎先を摘む。たっぷりのお湯にひとつかみの塩を加えてサッと茹で、冷水にとり、芥子和え、からし酢味噌、煮もの、味噌汁などで淡い酸味とぬめりを味わう。天ぷらにもできる。

・とろろ

茹でた茎を細かくたたく、梅干し、納豆などを混ぜ、海苔と紫蘇で包んで食べると美味しい。またレタスに紫蘇を重ね、ご飯を薄く敷いて、前記の刻んだ物を巻いて食べると美味しい。この時は少量のしょうゆとマヨネーズを入れると味が閉まる。

保存の仕方:通気性のよいかみ袋に入れて保存。茎だけ熱湯にくぐらせた後、皿などの上で手で揉んで、天日乾燥させた後保存。保存食としてゼンマイのように戻して食べる。

 

利用法(山形県置賜地方)

調理法1、 生の若茎葉を使用:茹でて割り醤油をかけたり、酢味噌合えにして食します。

調理法2、 干し物(ひょう(=スベリヒユ)干し)を使用:炒め煮。ひょう干しに、油揚げ、こんにゃく、ちくわ、打ち豆、人参などを加えて油で炒めてから、調味料を加えて煮ます。

調理法3 、干し物(ひょう干し)を使用:浸し物、からし浸し、くるみ浸し、ごま浸し。正月には、浸し豆といっしょに割醤油で食べる家もあります。

調理法4 、干し物(ひょう干し)を使用:和え物、くるみ和え、ごま和え

調理法5 、干し物(ひょう干し)を使用:七草粥

・入浴の場合

乾燥させたもの100gほどを、布袋に入れて沸かします。痒みのある皮膚炎に、また、ニキビにも効きます。

・食用にする場合

酸味が多いいこと、シュウ酸が多く含まれているので、必ずゆがいてアクをとり調理します。