yakusou-club

薬草クラブ

薬草イラスト

薬草クラブ オケラ2(ホソバオケラ)

ホソバオケラ・蒼朮(キク科)Atractylodes lancea DC.

一名:サドオケラ(佐渡蒼朮)

寄贈者名・産地・年月日・経歴:1996、和漢薬研究所

[気味]辛・苦、温

[帰経]脾・胃

[主治]健胃、利尿(袪風除湿・燥湿健脾・散寒解表・除湿明目)

 

中国原産のキク科の多年草、我が国へは享保4年(1719)以前、中国からの白朮を薬草奉行の阿部友之進に下付されたのが始まりで、その後日本産のオケラとの交配を憂い、阿部友之進みずから佐渡に就き隔離、保護栽培をしたが、近年栽培地が荒廃して絶滅の危機になったため、奈良県十津川村に隔離、保護栽培されつつあります。

現代中国でも純系のものは稀少となりました。『神農本草経』に収載「苦・温水剤、胃を温め穀を消し、汗を止め、熱を除き、心下の急満を除く」という貴重薬物です。

 

効用

主として漢方処方用薬で、消化器、皮下の水分代謝不全の改善、健胃、利尿、発汗、鎮静の効があり、健胃消化薬、止瀉整腸薬、利尿薬、鎮暈薬、保険強壮薬、鎮痛薬とみなされる処方及びその他の処方に比較的高頻度で配合されている。白朮に比べ発汗作用が強いとされる。

 

【漢方処方例】

胃苓湯、香砂養胃湯、二朮湯

 

以下の処方には朮または蒼朮の名称で配合されているが、平胃散およびこれを基本としている処方には蒼朮を配剤する事が望ましい。

桂枝加朮附湯、香砂平胃散、治頭瘡一方、消風散、清湿化痰湯、疎経活血湯、不換金正気散、分消湯、平胃散、加味平胃散

 

蒼朮(ツァンツウ)

 

茅山(ぼうざん)の観音庵(かんのんあん)に、病気の見立てがうまく、薬草の知識も豊かな年老いた尼さんがいました。それで、山里の人びとは病気になるとよく観音庵を訪れたものです。

尼さんは、病人を診ましたが、薬草を採りに行くことはせず、すべて若い尼さんにまかせていました。若い尼さんは、言われるとおりに、野山をかけめぐって薬草を採ってきましたが、どの薬草がどんな病気に効くのかを全く知らず、ただ黙々と薬草を摘んでいました。

年とった尼さんは欲が深く、お礼を沢山する者にはよい薬をあたえ、そうでない者にはあまり効きそうもない薬草を使いました。若い尼さんはそんなやり方に不満でしたが、薬草について何の知識もなかったので、口出しすることはできません。

 

ある日のこと、貧しい村人が薬をもらいにやってきました。その人はお金を一銭も持っていませんでした。年とった尼さんはそれを知ると、どんな具合かもたずねずに追い返してしまいました。

若い尼さんは見るに見かねて、白い花をつけた薬草を一つかみもつと、村びとのあとを追いました。

「もしもし、この薬草をあげますから、煎じて飲んで下さい」

しかし、村びとの姿が見えなくなってから、心配になりました。

「あの人は何の病気だったのかしら?あの薬でよくなればいいけれど。病気が悪くなったらどうしましょう?」

 

それからしばらくしてのことです。あのときの村人がやってくると、年とった尼さんにお礼を言いました。

「若い尼さんのおかげで父の病気がよくなりました。父は膝を痛めて長年動けずにいたのです」

年とった尼さんは、

(はてな、おかしなこともあるもの。私の手許には、そういう病気を治す薬草はないのだが…)

と思い、若い尼さんを呼びつけました。

「お前はわたしの薬を盗んだのだろう?さ、早く本当のことをお言い!」

若い尼さんは、初めのうちは何のことだかさっぱり分かりませんでしたが、いつか村びとに薬草をあたえたことでとがめられているのに気づきました。

あの白い花をつけた薬草はオケラ(蒼朮)といいました。それは年とった尼さんが採ってくるように言いつけたものではなく、ほかの薬草にまぎれこんでいたものです。ですから、年とった尼さんはそれを取り除いて捨てたのです。そんなことがあったおかげで、若い尼さんはオケラが薬として役立つことを知ったのです。

 

かなりのちの話になりますが、若い尼さんは、年とった尼さんの仕打ちに耐(た)えかねて、とうとう観音庵をとびだし、俗人にもどってしまいました。

それからというもの、オケラを使っては、膝を痛め、動けなくなった病人を大勢治してあげました。オケラは、膝の病気に効くばかりでなく、嘔吐や下痢その他にも効きめのあることがしだいに知られるようになったということです。