エンゴサク 延胡索(ケシ科)Corydalis yanhuso W.T.WANG
[気味]辛・苦、温
[帰経]肝・脾・心・肺
[主治] 浄血・鎮痛・痛経(活血行気・理気止痛)
延胡索(えんごさく) 血(ち)を活(くはつ)しつつ 経(けい)通(つう)じ 心腹(むねはら)いたみ よくとむるぞや
延胡索 少(すこ)し焙(あぶ)りて もちゆべし こしらへやうに かわれるもなし (橋本竹二郎訳『新編和歌能毒』)
日一日と昼の時間が長くなる立春の頃、落ち葉の陰から薬草たちが待っていたかのように次々と芽を出してきます。このうちでも早いのが中国産エンゴサクで、地下にある1㎝ほどの球茎から糸のような細い茎を伸ばし、葉を展(ひろ)げます。
何も無いこの時節、寒さの中で「春植物」の発芽を観るのが楽しみです。
とっても可愛く思い、利口な彼らだと感心します。
なぜ?周りの仲間が眠っている間に、邪魔されることなく太陽の光を十分に浴び、短い期間に精一杯の物質を生産し、地下部へ送り、5月頃には姿を消します。
これを採り、調製・乾燥したものが生薬の「延胡索」で浄血・鎮痛・痛経の作用があり、活血行気・止痛の薬物。漢方薬の「安中散」などに配剤されています。
江戸幕府直営の小石川御薬園に、享保10年(1725)朝鮮産の延胡索50根を植えた記録があり、「本草綱目啓蒙」(1803)で小野蘭山は「享保中、漢種渡る。大葉、小葉の二品あり。大葉を牡丹葉と言い(中略)大葉は苗高さ五寸許(ばかり)。小葉は短小なり。正二月花を開く。紫のスミレの花に似たり。初め紫色後(のち)青色を帯ぶ」と述べている。
わが国にはジロボウエンゴサク、ヤマエンゴサク、ミチノクエンゴサク、エゾエンゴサクの野生があった。地下のほぼ球形の塊茎は、生薬の延胡索になるが、今も昔も、これらの在来種は品質が劣るので、中国、朝鮮産の代用にしかならないのが実情である。その中で、エゾエンゴサクのみが中国産延胡索に最も近い種類とされています。