イチョウ 銀杏、公孫樹 Ginkgo biloba
中国原産の裸子植物で、今も朝鮮半島から日本に自生しますが、氷河期にほぼ全滅し、今は生きている化石(学術分野では遺存種とよぶ)といわれ、太古のままの姿で生き続けている生命力の強い、また雌雄異株という珍しい植物です。
晩秋の静寂のなか古刹の境内を散策すると樹齢数百年かと思われるイチョウをよく見かけます。葉、枝、幹、根元と視線を運べばその壮大さに心が豊かになります。
金色のちひさき鳥のかたちして銀杏ちるなり夕日の岡に(与謝野晶子)が脳裡を掠めます。
イチョウは、《銀杏》(種子のギンナンにもこの字が当てられる)、また成長が極めて遅く孫の代まで実ができないとして漢名を《公孫樹》、葉を家鴨(あひる)か鴨(かも)の足に見立てて《鴨脚(おうきゃく)》とも書きます。また成長が極めて遅く孫の代まで実ができないとして漢名を《公孫樹》、とも書きます。古人は「イチョウは火に強く、火事にあっても枯れず、火に向かっては水を吐く」といっており、社寺の境内に多くみられるのは案外こんな言い伝えによるのかもしれません。
ギンナン
[気味]甘・苦、平
[帰経]肺・腎
[主治]空咳・帯下・夢精・小便白濁(止咳平喘、滋養、固腎、補肺)。
種子のギンナンは、肺の働きを強めるとともに保温の働きもします。止咳平喘薬(咳を止め、喘息を静める)であり、滋養、固腎、補肺の効果があり、肺病の咳、高齢者や虚弱体質者の喘息、夜尿症や頻尿に用います。ただ、やや毒性があるので、特に小児に用いる場合にはよく炒るか煮ることが勧められているようです。
近年は、銀杏葉が注目され、ヨーロッパでは薬として使われ、話題を呼んでいます。
銀杏葉エキスは脳血流量の保持を改善する働きがあり、フランスでは「タナカン」という名で老人病のボケ予防薬として使われています。そのため、日本や韓国から大量に輸出されています。
葉は害虫除けになるので、落ち葉を作物の根元に敷き込んで肥料兼害虫駆除剤としたり、本にはさんでしみの害を防いだりします。
受粉から受精までにかかる時間は、キュウリやカボチャは数時間以内です。それに対し、
花粉管から卵細胞内に放出された精子や精細胞が卵の核と合体するまでに、ソテツは2、3ヶ月、イチョウは約5ヶ月、マツでは約1年かかります。