イカリソウ・淫羊藿(メギ科)Epimedium grandiflorum Morr
春先、桜が散る頃に船の碇の形をした淡紫色または白色の花をつけるのでイカリソウといいます。
イカリソウの仲間にはトキワイカリソウ・バイカイカリソウ・キバナイカリソウ・ホソザキイカリソウなどがあります。3本の枝にそれぞれ3枚ずつ、合計9枚の小葉をつけるので三枝九葉草(さんしきゅうようそう)ともいわれます。
生薬名を全草を淫羊藿(いんようかく)といいます。その名は羊が食べて精力を強めたという伝説(注1)に由来します。
古来より補精・強壮の目的で用いられました。『本草綱目』に「この葉を食べたヤギがものすごく精力がついた」と、また、『神農本草経』に「これを服する者は男女の交わりを好むようになる。四川の北部に淫(みだ)らな羊がいて1日百遍も交わった。その羊はこの草(藿(かく))を食べたことから、それで淫羊藿の名がついた」と記されています。
小林一茶は五十二才で初めて結婚し、毎日、黄精・淫羊藿を服用して結婚生活を楽しんだとか。
中国では有名な“仙霊脾酒“(イカリソウの酒)があります。その効果は、「男子を益し、陽を興し、腰膝の冷えを治す」と、また「陽を強くし、気を益し、発条の効能あり。よく精気を益し、男子の陽物の弱いもの、女子の陰部の発育不全のものに服用させる。」と記されています。
茎葉を刻んで天日乾燥。
1日10~20gを煎服して、補精、神経衰弱、鎮静、不妊症、ヒステリー、健忘症に応用します。
茎葉30gを酒1、8ℓに浸して、1ヶ月ねかせたものを分服すれば、低血圧、不眠症、食欲不振、胃弱などに効果があります(仙霊脾酒(せんれいひしゅ)・淫羊藿酒::関節痛・しびれ・運動障害などに効果があります)。
新葉を乾かし粉末にしたものを飲用してもよい。
中国医学では、次のような効果が研究されています。
・垂体前葉・卵巣・子宮を増量し、卵巣HCG(絨毛性性腺刺激ホルモン)/LH受容特異結合を顕著に高める。
・卵巣対LHの反応を増強し、垂体対LH-RHの反応を増強する。
・睾丸と肛肌が顕著に増加。
(腎陽虚によるインポテンツや婦人の不妊症に用いる。)
(注1)中国の昔話
淫羊霍の別名を放杖草ともいうが、その由来にはこんな伝説があった。中国の昔話である。ある老人が杖を頼りにとぼとぼ歩いていると、目の前を病気にかかったような牡羊がよろよろと山道を登って行った。「あの羊は死に場所を求めて山に入ったのか。かわいそうに」とつぶやいて老人が冥福を祈っていると、先ほどの羊がすごい勢いで駆け降りてきて羊の群れに飛び込んで行き、数頭の牝羊とたわむれているではないか。驚いた老人は、再び山へ登っていく牡羊の後をつけてみると、羊は山地に生えている特定の草を夢中に食べているのだった。試しに老人もその草を食べてみると、たちまち精気がよみがえって杖を放り出し、町に駆け戻ったという。