アマチャ(ユキノシタ科)Hydrangea macrophya(Thumb.)Ser,
var,thunbergii Makino コアマチャ 富山県利賀村栽培品
日本固有の薬草。
私どもの薬草苑「神薬才花苑」で栽培してるアマチャは、日本固有の植物でヤマアジサイと同じ種類のもので、コアマチャという名のものです。
花が小さくてあまり目立ちませんが、技の先端に薄紫色の花が一杯集まっており、その周りを、薄い空色で、先端が丸みをもち凹んだ装飾花が囲っていて、とても可愛い花です。めしべが無いので不登花とか中性花などと呼ばれています。
コアマチャのもう一つの特徴は、装飾花が時を経ると次第に赤みを帯びてくることです。
生の甘茶の葉は苦く感じますが、精製するとフィロズルチンという成分の甘い味に変わります。
葉の収穫時期は7月から9月でそれを調整して作ります。繁殖法は、挿し木にて行ないます。
甘茶は第十四改正日本薬局方に医薬品として収載されており、医薬品の苦味を和らげる矯味剤や口腔清涼剤及び糖尿病患者の甘味料として用いられています。また、砂糖が普及するまで甘味料として広く使われ、防腐効果や味をまろやかにする塩なれ効果もあって現在も醤油などの製造に用いられています。毎年四月八日に行われる釈迦の降誕を祝う仏教行事の灌仏会では釈迦立像に甘茶湯を注ぐ習慣も知られています。
甘茶は、江戸時代に作り出された新しい日本民間薬であるため、薬用としての歴史は浅く、薬効が十分に伝承されていません。日本の江戸時代の薬物書「大和本草」や「物類品隲」などにも甘味のほかには“健康に益する”などと記載されているにすぎません。また、俳人の小林一茶が愛飲し元気で長寿を保ったことや、甘茶が肌に良いなどと民間的に伝承されています。
✿甘味成分としてフィロズルチン、イソズルチン、苦味成分としてタンニンを含みますが、他の茶のようなカフェインは含みません。
糖尿病患者の甘味料、歯周病、醤油や菓子、売薬、煙草の甘みにも用いられ、甘味成分は天然甘味料としてダイエットを志向した食品にも用いられています。
漢方の生薬としても抗アレルギー作用、抗酸化作用、皮膚のオートワアジーを活性作用、抗糖尿作用があります。
・内臓機能の働きを高めてくれる。
・高ぶってしまった気分を沈め、落ち着かせる。
・抗菌作用により、歯周病や口臭予防になる。
・抗酸化作用により、身体の内外のアンチエイジング効果がある。
・抗アレルギー作用により、アトピーや花粉症に効果がある。
などの効果があり、特に「抗アレルギー作用」については、市販されている薬と同じくらい、アトピー・花粉症に効くといいます。(入浴剤としてもアトピーに効果がある)
また、美容としても柔軟・消炎・保湿効果があることから、化粧品の材料としても、昔から使われているそうです。最近では、シミ取りに効果抜群、お風呂に入れるとお肌すべすべになります。
✡「花まつり」は、お釈迦さまのお誕生をお祝いする仏教行事です。
本来は、灌仏会(かんぶつえ)・仏生会(ぶっしょうえ)などといい、「花まつり」と呼ぶようになったのは明治以降のことのようです。
花まつりでは、お花で飾られたお堂(花御堂)のなかに甘茶を入れたお盆(浴盆)を置き、そこに、右手で上を、左手で下を指し示したお釈迦さまのお誕生の姿をあらわしたお像(誕生仏)を安置し、柄杓で甘茶を頭上からそそぎます。
花御堂は、お釈迦さま誕生の地ルンビニ園を、誕生仏は、お生まれになってすぐ七歩あゆまれて「天上天下唯我独尊」と言われたそのお姿をあらわします。そして、お釈迦さまの誕生を慶び、天に九匹の龍が現れて、甘露の雨を降り注いだ、という様子を模して甘茶をかけるのです。
ちなみに、経典では「甘露の雨」は香湯あるいは香水となっており、昔は五香水とか五色水という香水を用いていたようです。
今のような甘茶を使うようになったのは江戸時代からと言われますがはっきりしません。
その一
①7~9月の間にアマチャの葉を摘み、生のままの物を手揉みします。葉が柔らかくなり、団子が出来る位まで揉みます。
②手の握りこぶし程の団子を作り、瓶に入れ蓋をして日陰の乾燥しない場所に数日間保存します。
③甘い香が漂う、または食べて甘く感じた頃に天日乾燥します。この場合、団子になった物を細かく開いて乾燥します。
その二
①採取した葉を日陰乾燥します。
②乾燥した葉を水に30分間以上浸し、葉を十分湿らせます。それを軽く絞り瓶に入れ蓋をして数日保存します。この場合、むらなく発酵させるために1日に2~3回混ぜておきます。
③外温により2~3日間瓶に保存し、甘い香りがし、葉を噛むと甘く感じた頃に取り出し、手揉みをしてから天日乾燥する。
④湿らさないように保存します。
(葉を採取して水洗い)→ | (日陰乾燥)→ | (水に浸し、瓶に入れる)→ | (手揉みして天日乾燥) |
その三(2016年)
①採取した葉を柔らかくなる程に少し乾かし、手揉みし、乾かす。
②手揉みし乾燥したものを、水に浸し柔らかくした後、2度目揉んで瓶に入れる。
③2~3日間瓶に入れ、甘味が出たらゆっくり乾かす。
その四(2017年)
①採取した葉を1~2日間日陰乾燥し、柔らかくなったら手揉みして日陰乾燥する。
②これを高賀水に30分間ほど浸し、軽く絞って瓶に入れ、2~3日間保存する。1日に数回混ぜる。
③発酵して甘い香りになったら、手揉みし、水を絞り天日乾燥する。
(葉を採取して水洗い)→ | (軽く手揉みして乾燥)→ | (水に浸し瓶に入れて発酵)→ | (手揉みして天日乾燥) |
1、土瓶かヤカンに水1リットルを入れます。
2、沸騰したところで、甘茶2~3gを入れ、弱火で3分間程煮つめます。甘茶をいれた際に泡立ちが強くなる場合があるので、かき混ぜて下さい。
3、カスを除き、保温器に移します。
甘茶を長くお湯にいれすぎますと、甘味が強すぎることがあります。甘味が強すぎる場合は、お湯又は水を注ぎ足すなど適宜加減してください。
✿甘茶の利用方法
1、小豆を煮るとき、砂糖の代わりに甘茶を加えると小豆の味が引き立ちます。
2、料理に使うと、砂糖の量が軽減します。
3、血糖値が気になる方は、お茶代わりにお飲みください。
甘味成分(natural sweetner)
甘味のある成分として代表的なものはショ糖などの糖質ですが、中には非糖質で甘味を有する物質もあります。アマチャに含まれるフィロズルチン(Phyllodulcin)が代表的なものであり、これはイソクマリン骨格を有するフェノール性成分です。甘味の質は糖類とはかなり違い、やや癖のある甘味です。アマチャは伝統的な生薬製剤(丸薬など)の矯味料として用いられ、今日でもお釈迦の命日には各地の寺院で甘茶として供されています。新鮮アマチャ葉中のフィロズルチンの含量は低く、多くは配糖体の形で存在していますが、この配糖体は苦いので新鮮アマチャ葉はあまり甘くなくやや苦い程です。そのためアマチャ葉を調製するとき、β-グルコシダーゼによる発酵でフィロズルチンの生成を促すためゆっくり乾燥(ときに湿気を与えることさえある)させます。二次代謝物の配糖体で甘味を呈するものです。糖が結合しているので完全な非糖質ではないが、ショ糖の100倍以上の強い甘味をもち、また味も糖質に近いので配糖体系甘味成分は天然甘味料としてダイエットを志向した食品に用いられています。