竹(チュー)ハチク(タケノコ)
性味-甘、微寒、無毒
竹は、イネ科(イネ亜科、タケ科に分類することもある)の植物であり、種類はひじょうに多い。地下茎は通称竹鞭(むち)と言い、その葉が土に出たのを笋(タケノコ)と名づける。『本草綱目』では、「10日以内は筍(タケノコ)であり、10日以上は竹である。そこで筍の字は旬(10日)に従う」という陸(りく)佃(でん)の説を引用し、生長が早い事を形容している。笋の種類も多く、冬笋、春笋、鞭笋があり、みな食品となる。江蘇省の民間では虫食いの笋(タケノコ)を薬用にし、「虫笋」と名づけている。若葉、竹茹(笛の内皮をけずり取った細い糸)、竹瀝(生竹を熱しあぶって取った油)はみな薬用になる。
- 効用
糖尿病を治し、水道を利し、肺の熱邪を清除し、痰をきる。虫笋(虫食いのタケノコ)は有効な利水薬であり、浮腫、咳、喘息、糖尿病、消渇による煩熱などに適用される。若竹の若葉は抗癌作用がある。
- 応用
① 不腹水腫(腎炎、心臓病、肝臓病および末期の吸血虫病が引き起こした腹水症を含む)
虫笋(虫の食ったタケノコ)、古い葫蘆(ヒョウタン)各60gを水で煎じて服用する。冬瓜皮(トウガヒ)30gを加えると、なおよい。
② 小児のはしか、風疹あるいは水痘の初期、発熱で口が乾く、小便不利
新鮮な笋(タケノコ)を鯽魚(フナ)と一緒によく煮てスープをつくり、小児に飲ませれば、はしかの発作が速く出て、早期に治療する効果がある。
③ 長期の下痢、脱肛
新鮮な竹笋(タケノコ)で粥を煮て食べると効果がある。
④ 虚煩症による不眠
若い竹葉の巻いた部分(嫩竹葉巻芯)30g、灯心草(トウシンソウ)3gを水で煎じて、睡眠前に飲む。
⑤ 産後の虚熱心煩、手足の中央部の熱
新鮮な竹茹、竹葉の芯各30gを水で煎じて服用する。
⑥ 高血圧、頭痛、赤ら顔、煩わしい渇き、夜安眠しない
新鮮な竹葉の巻いた芯30~60g、夏枯草15g、槐花10gを水で煎じて服用する。
⑦ 小児の頭部のできもの、水疱瘡、黄色の汁が出るかさ
新鮮な笋殻(タケノコの皮)を黒焼きにし、細かくすりつぶし、胡麻油で調合して塗る(まず濃い茶汁で患部を洗い渇いたら薬を塗る)。
⑧各種癌症
若竹の若葉15gを水で煎じて服用する。
(葉 橘泉著『医食同源の処方箋』)
筍はあまく寒なりかハきとめ 小べんつうじきをもますもの
(筍は甘く寒なり、渇きを止め、小便を通じ気をも益す)
たけのこは目をあきらかにねつきさり むねのいきりをさますものなり
(たけのこは目を明らかにし熱気を去り、胸のいきりをさますものなり)
たけのこハ酒毒をさまし気をくだす よのねられぬにくすり也けり
(たけのこは酒毒をさまし気を降す、夜の寝られぬにくすり也けり)
たけのこはあせをもすこしいだすもの づつうをとめてたんをけすなり
(たけのこは汗を少し出すもの、頭痛を止め痰を消すなり)
たけのこハくハひにんづつう目まひつゝ むなさハきせばすこしくふべし
(たけのこは懐妊頭痛・目まいしつつ胸騒ぎするときは少し食うべし)
たけのこはそのしなしなのおほけれと いつれも過食きらふべき也
(たけのこは品々おおけれど、いずれも過食きらうべき也)
(『和歌食物本草』)
筍
苦筍(にがたけ)
[気味] 苦甘。寒。無毒。
[主治] 痰を化し、熱を除き、気を下し、水を利し、酒毒を解する。
淡筍(はちく)
[気味] 甘寒。無毒。
[主治] 痰を消し、熱を除き、婦人の惊悸(驚いて心悸亢進すること)、小児の驚癇(ひきつけ)を治す。
長間筍(しのだけ)
[気味] 苦寒。無毒。
[主治] 気を下だし、膈を利し(飲食を通じさせる)、胃を爽(さわ)やかにする。されども、多食すれば虫積を動かし、上気嘔吐させる。
[発明]
諸筍はいずれも寒冷・無毒とはいえ、性は硬く消化しにくい。消化した後、復滑利(腹のなめらかに下る)で、脾胃に益はない。ただその淡甘は愛すべきである。最も、人に宜しくない理があるからには、どうして多食してよいことがあろうか。
青字:(人見必大著『本朝食鑑』p127)
竹笋(ちくじゅん)・タケノコ
『本草』では「味は甘に属し、無毒である。消渇を主治し、水道に効き、気の働きを活発にする。長時間続けて食べる事。」
崔禹錫は「味は甘に属し、性は少冷である。水道によく効き、消渇や五痔を治す」
孟詵は「筍は気を動かし、冷や癥を起こしやすい。多食してはならない」
槇佐知子訳『医心方』食養萹)
筍(たけのこ)
[性味] 甘、寒
[帰経] 胃・大腸
[働き] ①清熱化痰:痰熱咳、胸膈痞満、胃熱口渇、食積腹脹
②解毒透疹:麻疹、湿疹
③滑腸通便:便秘、小便不利
[応用例]
①痰熱咳:筍30g+黒慈姑(くわい)40g、海蜇(うみてつ)50g
②浮腫、腹水:筍60g+冬瓜皮30g
③痰熱の咳、胸膈不利:筍60g+生姜10gを香油、紅酢、塩で炒める
[注意]
①慢性病の者は多食を控える(持病を再発させる)
②子供は多食してはならない
③胃・十二指腸潰瘍・肝硬変・慢性下痢の者は禁忌
④皮膚アレルギー、痒みのある者には禁忌
(辰巳洋著『薬膳 素材辞典』)
植え木やさんの話として、5月13日を竹の日といい、この日に竹を植えるとよく育つ。5月13日以外に植える場合は、竹に「今日は5月13日だよ」と、いって植えるそうです。
『医心方』の野菜類のトップの食品としてあげられている。
体のすみずみに養分を運ぶ気血のめぐりを良くするので、続けて食べるようにすすめている。一度の沢山食べると消化に悪いので、程ほどの量を継続して食べる事が肝要である。
イボ痔、キレ痔、その他のもろもろの痔に効く。ゆで汁を捨てずにとっておき、患部をよく洗ってみてはどうでしょう。
淡竹(はちく)やネマガリザサのタケノコは、舌の上の熱で黄ばんだものや目の黄ばみにきき、視力を良くする。脚腰の病気や糖尿病、そして酒毒を解くのにも良いとされている。
竹の原産地は中国といわれている。笹は東アジアの温帯から亜寒帯にかけて分布し、千島やサハリにも生育する。これに対して、竹は北海道の南部が北限である。
いろいろな分類法はあるが、一般には小さい物を笹、太くて大きいものを竹という。
まっすぐに伸びて早く成長するのが、「タケ」の語言と言われ身長のことを背たけという。
竹という字はタケの象形文字であり、『万葉集』にある柿本(かきのもとの)人麻呂(ひとまろ)の
小竹(ささ)の葉は み山もさやに 乱げども 吾は妹(いも)おもふ別れ来ぬれば
<小竹の葉は風にゆれ動いて騒ぎ、山をざわめかせているが、私はただひたすらに愛するあなたのことを思っているのだよ。別れて来たあなたのことを。>
この小竹はミヤコザサとされ、大伴家持(おおとものやかもち)の
わが屋(や)戸(と)の いささ群(むら)竹(たけ) 吹く風の 音のかそけき この夕(ゆうべ)かも
<わが家のわずかな竹林を吹く風の音が、かすかに聞こえる。静かな夕方だなあ>という歌は真竹を詠んだものといわれています。
正月の行事・左義長(15日に行われる悪魔を追う火祭り)を竹を使い、7月の星祭りには笹を用い、家を建てるときの地鎮祭には四方に竹をたて注連縄(しめなわ)をめぐらせて祭壇を設ける。いずれも神の拠(よ)り代(しろ)や神域を示すものとして使われている。
まっすぐで清らかなうえに、四季を通して青々として操(みさお)、節目正しく香気もあるので、中国では蘭・梅・菊とおともに四君子とされている。
神聖な穀物を入れる箕(み)は神霊を宿すものとして貴ばれていた。この箕は、弥生時代にあったようです。昔は紙の代わりに竹簡(ちくかん)を用い、筆の軸、竹ぺん、笛、茶筅(ちゃせん)、扇子等多くのものが竹から作られていいます。
食生活においても、笹の葉寿司、笹団子、笹あめ、ちまきなど使われます。これは、笹の葉には解毒作用があって、腐敗を防ぐためです。
淡竹(はちく)の葉を採って新鮮な葉を一つかみ飲むと、唾液の分泌がうながされる。そのために消化吸収がよくなる。
口の中がただれた場合や舌のできもの、糖尿病にも良い。
出産後の疲労回復には、煎じた汁をぬるめにさましてから何度も飲む。痔で悩んでいる人は、煎じた汁でよく洗うと良い。
『竹取物語』は、竹の持つ気品そのままであり、竹の成長ぶりに似ている。タケノコを「竹胎」といい、旧暦の5月5日に降る雨を「くすり雨」という。雨の後に竹を切ると、節の間に水がたまっている。これが「神水」または「竹精」といわれるものである。これには、ナマズ肌やシミを治す効能があるとされている。
この竹の水は、仲秋の名月のころには失われる。春から秋の竹は水分を含んでいるので細工物にはならない。いいかえれば、晩春から秋口までに採るのは薬用の竹なのである。
(槙 佐知子著『食べ物は医薬』)
若竹煮:筍(甘(土)・寒)にワカメ(鹹(水)・寒)、山椒(辛(金)・温)を加えます。 たけのこの甘味(土)が尅する鹹味(水)はワカメで補い、温性の山椒を加えてたけのことワカメの寒性を中和します。