リョウキョウ、高良姜(ショウガ科)Alpinia officinarum HANCEの根茎
寄贈者名・産地・年月日・経歴:橋本竹二郎氏
薬用部位・開花・採集時期:開花は5~6月、秋に根茎を採取。胃の冷えを治し止痛。
繁殖法:春株分け
6高良姜
[気味]辛、熱
[帰経]脾・胃
[主治]胃の冷えを治し止痛(散寒止痛・温中止嘔)。
地下部に生姜の根を思わせる肥厚した根茎があり、清浄な感じをもつ芳香と比較的穏やかな辛味をもっています。
日本では殆ど知られていませんが、中国南部や東南アジア諸国では、生鮮食料市場の店頭に並べられ、日常的な香辛料として用いられています。
一年性の新根茎はスライスして肉や魚介類の臭い消し、煮物やスープの香り付けに利用されるハーブです。
通称名又は英名のガランガル(galangal)は、中国名の訛ったもの。
日本では享保年間に唐船またはオランダ船により長崎からの持渡りがあり、当時の幕府御薬園での栽培記録などを読むと「高良姜」の名称が所々にみられます。
しかしときに「高」の文字を省略して「良姜」と記されています。
したがって日本では「高良姜」を、その渡来の初期から「高」を省略して「良姜」と呼ぶようになり今に至ります。
ひね生姜に相当する旧い三~四年性の根茎は、黒みを帯びた褐色でやや硬くなり、生食には向きません。
これを採って鱗片や古い根を取り除き水洗後、そのまま日千し乾燥したものが日本では生薬店で市販されています。
芳香胃腸薬とし、冷えた.胃を温め、余分に溜まった水を乾かし、消化不良や痛みを抑えてくれる作用があり、家庭薬の胃腸薬原料にされたり、漢方胃腸薬の安中散ほかに配剤されます。
日本では一般に知られないため調理に使われず、漢方薬原料として僅かに消費されるに過ぎません。
しかし陶弘景『名医別録』中品に「大温 主暴冷胃中冷逆攪乱腹痛」と収録されているので凡そ二千年の歴史をもった天産薬物、現代の日本で消費が少ないことを埋由に疎かにされてはならない重みのある薬草です。
享保年代に渡来しながら寒さを畏れることと、需要僅少のために、栽培は今に途絶えがちです。
良姜は 撹乱胸冷(かくらんむねひえ) 痰嘔吐(たんおうと) 食を消(せう)して 瀉痢(しゃり)とむるなり
良姜は こしらへやうのさまざまに ありいへども炒(いり)てそのまま
(橋本竹二郎訳『新編和歌能毒』)
・良附丸:高良姜・香附子各等分(高良姜6・香附子6・乾姜6・烏薬3・蘇葉6・陳皮6・延胡索6)、高良姜湯:高良姜5;厚朴2;当帰・桂枝各3
[要点]
高良姜は辛熱で、内攻走裏して温胃散寒に働き、胃脘冷痛にすぐれた効果を示し、寒凝気滞による嘔吐・噫気(げっぷ)・腹痛泄瀉・寒疝などにも有効である。
[参考]
①高良姜・乾姜は辛熱で温中散寒に働くが、高良姜は胃寒の脘腹冷痛・噫気横逆に、乾姜は脾寒の腹痛泄瀉に適している。
②高良姜・生姜は温中散寒に働くが、高良姜は辛熱で辛より熱が重く、裏に走(ゆ)き胃寒を散じて止痛に働くのに対し、生姜は辛温で温より辛が重く、表に走き風寒を散じて解表し、胃気を和して止嘔に働く。
[注意]
辛熱燥散し傷陰助火しやすいので、胃火の胃痛や嘔吐・傷暑の下痢・裏熱の下痢などには禁忌。