ユキノシタ・虎耳草(ユキノシタ科)Saxifraga stolonifera Meerb.
[気味]苦・辛、寒
[帰経]肺・肝
[主治]中耳炎・腫れもの・火傷・しもやけ・ふきでもの・かぶれ・扁桃腺炎・湿疹)・小児の引きつけ・利尿・暑気あたり(解熱・止咳・消炎解熱)。
ユキノシタは古い時代に中国から渡来して野生化したもののようで、半常緑多年生草木で、本州、四国、九州の湿った地上や岩上に自生する。
全体は長い毛でおおわれ、ほふく枝(地上茎である走出枝(runner/ランナー))は紅紫色の糸状で長く地上を伸び、新しい株を作る。
雪の下にあっても枯れず、緑鮮やかに生き生きしていることから名付けられたユキノシタ。中国では葉が虎の耳の形をしているというので虎耳草と呼ばれます。
ミミダレグサと呼ばれるほど耳の薬としても有名です。
また、病的なタンパク質を分解する成分が含まれていることも明らかとなっています。
花が大の字を描く同族のダイモンジ草、花弁の下に黄色い斑点のつくハルユキノシタは山地に多く見られ、同様に用いる。
江戸時代の『掌中妙薬集』には、「驚風(子供の引きつけ)に雪の下の葉をもみ、その汁を飲ますべし。」とあります。
日ざかりの 花や涼しき雪の下
(呑舟(どんしゅう))
暗き日や花なき庭の雪の下
(荷風)
「本草綱目」には「温疫(おんえき)(熱性伝性病)」には酒に擂(す)って服す。
生で用うれば人を吐利させる。
煮熟したものを用いれば吐利を止める。
又聤耳(ていじ)(化膿性中耳炎)を治するには、擣汁(とうじゅう)を滴(た)たす。
痔瘡の腫痛には、陰乾したものを桶(おけ)の中で烟(けむり)に焼いて薫ずる。」とあり、日本の民間薬のルーツになっているようです。
昔は飢饉のときの救荒食料(例えば揚げ物にして食す)にもされてくらいである。
・せき止め、去痰、生葉5~6枚をすりつぶし、食塩を少し混ぜて、子供のせきの激しいときに飲ませる。
・子供の疳、すなわりヒキツケには生の葉をよく洗って、これに塩(自然塩)を少し加えてもみ、もみだした汁を口に入れてやると特効がある。
・中耳炎や耳だれには先の汁1~2滴を耳の穴に滴(したた)らします。外耳炎・中耳炎で痛むときでも、これでビックリするほど早く痛みが取れ、早く治る。
・腫れ物、瘡、しもやけには生の葉を軽く火にかざし、柔らかくして貼ると自然にうみが出てきます。
・ウルシかぶれにも付けると効があります。
・心臓病、腎臓病などで軽いむくみのある時は、陰干しした葉を煎じて服する。
・ニキビには生の葉とドクダミの生薬を半々ずつすりつぶしてつける。
・歯痛には自然塩でもみ、出てきた汁を脱脂綿に浸し、痛い歯にくわえさせる。
・扁桃腺炎やのどの痛みにも患部に塗れば効果がある。
・痔の痛みには乾燥した葉の煎汁を脱脂綿に浸して、患部を軽くなでるようにして洗うと痛みが和らぐ。
・解熱:乾かした葉を煎じて飲みます。内臓の痛みなどにも、これをお茶がわりに少しずつ温服すると効果がある。
・葉の黒焼き粉末の利用方法:服用すれば鎮咳剤。ごま油で練って貼るとしもやけ、痔に効果がある。
・天ぷら・おひたし:葉の片面に衣を付けて食べる。地方によってはおひたしにして食べます。
・サラダ:葉の裏側が緑なら、細かくせん切りにしてサラダ油を少々たらし、かつおぶしをかけ、しょう油で食べると美味しい。
ニンニクのせん切りと半量のユキノシタのせん切りを混ぜ、梅酢ドレッシング出たべると美味しい。
・茹ですぎに注意(葉・蕾):葉や蕾は塩を少し入れて茹で、水に晒してから酢味噌和え、芥子和え、ゴマ和え、酢の物、炒めもの、汁の実、煮物などにする。酒を少し混ぜるとさらに美味しくなる。
茹ですぎるととろけてしまうので、少し硬さが残るくらいが美味しい。
・天ぷらのコツ(葉):生で衣を薄めに裏側だけにつけ、やや低温の油で揚げると見た目もよく美味しい。