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薬草クラブ ミョウガ(茗荷)

[気味]子花は、辛・甘、微温 葉・茎は苦、温

[帰経]大腸、膀胱

[主治]子花は鬱(気が欝滞して病を生じるもの)を開き、食を進め、

邪気を除き、大脳を刺激し、頭を明瞭にする。血行を良くする作用もあるので、風邪のひき始め、リウマチ、肩こり、腰痛、神経痛にもよい。また、ホルモンのバランスを整えるので、生理不順、更年期障害、生理痛などに有効。熱を冷まし解毒効果があるので、夏バテによい。薬味の調和を保つ(発汗解表・散寒通陽・解毒散結)。

 

熱帯アジアが原産で、古い時代に渡来したもので、本州以西の日本各地で自生するショウガ科の多年草です。

初夏から秋にかけて地下茎の先端から伸びる花穂の開花前のものを食用とします。

若い茎を、光を当てずに栽培したものは「みょうがたけ」と呼ばれます。野菜として栽培しているのは、日本だけです。

 

名前の由来は、古名はメカで、この名は『和名抄』(932)にみるが、谷川士(たにかわこと)清(すが)の『和訓(わくんの)栞(しおり)』(1777)によると

「メカは芽香(みょうが)の義なるべし、蘘荷(みょうが)の字音のあらじ、俗に芽をミョウガタケと言い、花をミョウガノコと言えり」

と記してあります。

 

『正倉院文書』や『延喜式』の大膳、内膳の宮中料理に用いられていた記録からみるとかなり古い時代から食用にされていまα-ピネンという精油が、胃のはたらきを活発にするため、食欲増進に役立ちます。

ちなみに、ミョウガを食べると物忘れがひどくなるというのは迷信です。

 

ミョウガを食べると物忘れがひどくなるという俗説は、泊まり客にミョウガ料理を食べさせて大金の入った財布を忘れていくように仕組んだ宿の主人が、結局は客に財布を取り戻され、自分は「アレ、宿賃をもらうのを忘れた」という落語の「茗荷宿」から広まりました。

 

ミョウガを食べる

 

料理に花穂は、ミョウガの子の名で知られ、辛み、芳香があるために、汁の実や酢の物、揚げ物、つまや薬味に広く用いられます。

・みょうがぼち(にょうが餅)

 

岐阜県美濃地方中西部から西部にかけて初夏に見られる郷土菓子の一つ。「ぼち」とは「もち(餅)」の転訛で、現地で団子を意味する方言です。そら豆を餡にした素朴な饅頭です。

 

茗荷のゆらい

釈尊のお弟子に周利槃特(しゅりはんどく)という人がいました。

一生懸命に修業に励むものの、お経の一文を覚えることもできませんでした。

彼は著しく記憶力が乏しく、ついには自分の名前すら忘れてしまうほどでした。

そこで名荷(名札)に自分の名前を書いて首にかけていました。しかし、名荷をかけていることすら忘れてしまったそうです。

このことから、後に「名荷」と「茗荷」が同音であることから「茗荷」と「物忘れ」が結びついて語られるようになったそうです。

さて、そんな周利槃特に釈尊は一本の箒(ほうき)を与え「塵(ちり)や垢(あか)を除け」と唱え、まわりを浄めることにのみ努めるように勧めました。

やがて「汚れが落ちにくいのは人の心も同じだ」と悟り、ついに仏教の教えを理解して聖者となられた、と伝えられています。
釈尊のお弟子には様々な経歴を持つ人がおられますが、彼ほど特異な人は例がないでしょう。

 

どうして「ミョウガを食べると物忘れがひどくなる」と言われるようになったのか

古典落語にある「茗荷宿(みょうがやど)」というお話から。

 

昔、ある宿場町に大きな宿屋がありました。この宿屋の老夫婦は、一人娘に婿養子を取りました。この婿は、始めはよく働いて客あしらいも良かったので、宿屋は繁盛が続きます。

ところが、老主人夫婦が亡くなって、若夫婦の代になると、この婿は道楽を覚えて商売そっちのけ。借金がかさみ、雇い人も辞めてしまい、旅館も人手に渡ることになりました。

しかし夫婦は別れもせず、残ったお金を元手に、宿場町から離れた場所で「茗荷屋」という安い宿をはじめました。婿は心を入れ替えて、またよく働くようになりましたが、町から遠い場所で客は少なく、宿賃(やどちん)も安いので、夫婦は貧乏暮らしの日々。

 

そんな茗荷屋に、ある日、よい身なりの客が来ました。

客はおかみにずしりと重い荷物を預けました。

おかみがこっそり中身を調べると、中は絹の反物と三百両もの小判の入った財布。

おかみは持って逃げようかと亭主に相談しました。しかし、捕まれば身の破滅は必定。

そこで二人は茗荷屋の名にかこつけて、「今日は先代の命日なので、屋号に因んでミョウガづくしの料理を作ります」と言って、ミョウガをたくさん食べさせ、預かった荷物のことを忘れさせようと考えました。

出した料理は、ミョウガの炊き込み御飯、ミョウガの卵とじ、ミョウガ入り味噌汁、ミョウガの漬け物、ミョウガのてんぷら、などなど。客は、おいしいおいしいとミョウガ料理を全部食べました。

 

さて翌朝、先を急ぐ客はわらじもはかずに、飛び出していきます。

「しめた!」と夫婦が喜んだのもつかの間、先ほどの客が慌てて戻ってきました。

道を歩いていると、足の裏が痛いので、宿でわらじをはかずに出たことに気付いて戻ってきたのだと言います。

客はわらじをはいて、また出て行きました。

 

夫婦がほっとしたところへ、また客が戻って来ました。

街道を歩いていると皆、荷物を持っている、自分は荷物を持っていない、宿屋に忘れてきたことに気が付いたというのです。

宿の夫婦はしぶしぶ反物と財布の入った荷物を渡しました。

 

おかみ「あーあ、当てが外れたね。ところで、お前さんもミョウガをたくさん食べたけれど、何か忘れ物をしていないかい?」

亭 主「あっ!  しまった!  宿賃をもらうのを忘れた! 」