マタタビ・木天蓼(マタタビ科)Actinidia polygama
枝葉
[気味]苦・辛、温
[帰経]―
虫瘤(木天蓼)
[気味]苦・辛、微熱
[主治]疝気の鎮痛薬。体を温めて血行をよくし、強心、利尿の働きがあり、鎮痛・強壮薬として用いる(温経散寒、強心利尿)。
本草書人見必大著『本朝食鑑』に
「食べるのは新芽・葉および子(み)で、味は辛い。胸膈の積鬱(つかえ)を披(ひら)くので、人々に賞されている。また猫が常に喜び、この樹に身をこすり着けじゃれてころげまわる。」
と記されています。
「猫にマタタビ」でよく知られ、猫が非常に好んでこれをかじっては酔う。マタタビはアイヌ語に由来します。
果実はなめらかな長楕円体で先は少しとがっていますが、虫が入ると円形で異常に膨大し虫癭(ちゅうえい)(虫こぶ)ができ、これを漢方では木天蓼(もくてんりょう)と称し薬とします。
用法
湯通しして天日乾燥、粉末にしたもの1gを1日3回内服すると、リウマチ、神経痛、腰痛、中風に効く。
湯剤としてつるを入れれば、体が温まる。猫をはじめ、ライオンなどすべてのネコ科に麻痺作用を示し、食欲不振などに効く。
虫こぶを冷え症、利尿、強心、神経痛に用いる。
天蓼はからくうん也たんをさる 風をもちらす気をもますもの
(またたびは辛く温也、痰を去り、風をもちらす気をも増すもの)
またゝびはしやくじゅや又はむしによし おほくしょくすな血をやぶるなり
(またたびは積聚や虫によし、多く食すな血を破るなり)
またたびはひゐをあたゝめ手あしなど しびれいたむにすこしくふべし
(またたびは冷えを温め手足など、シビレ痛むに少し食うべし)
(『和歌食物本草』)
マタタビの葉は、花が咲く前から全体または上半分が白く変色し、花後は消えます。これは昆虫の目印となる為だと考えます。
葉を裏から透かしてみると、白色部分はやや暗いもののほとんど緑の部分と違いがない。
ということは、葉緑素が少ないので、白色の斑紋ができているわけではない。
葉緑素はちゃんと存在しているわけである。
その次に、葉の表面を傷付けると緑になることに気づいた学生さんがいた。
葉の表皮と、葉緑素を含む葉肉組織の間に例えば空気などを含む光が乱反射する構造が存在することになる。
傷を付けると表皮と葉肉が密着し、緑色に見えるわけである。
表皮組織あるいは表皮と葉肉との間に空気を含む層が形成され、光を乱反射して白色に見えるようであり、この部分が密着するか、水分が充填されるなどして光の透過性が高くなると、緑色に変化するのであろう。
さて、その役割りは何であろうか? 開花時期に白い葉が目立つので、葉の陰に隠れる花の目印としての役割は?訪花昆虫への目印としての役割りがあるようです。
マタタビの果実を「小天髎子」といい、賊風・口眼喎斜・冷痒癖・気塊・婦人の虚労を主治する」と『薬性論』に書かれている。
『太平聖恵方』には「天蓼酒、風を治し、立ち所に奇功がある。・・」。
・保温・神経痛・リウマチ・腰痛には木天蓼30gを煎じて服用。または、粉末10gにダイダイの皮の粉末を少量混ぜ、1日3回に分けて白湯で飲む。
・胃腸病には若いツルや葉を煎じて服用。
・浴剤としてツルや葉を用いると体が温まる。
・強心・利尿・淋病・腰腹の痛みにツルを乾かし輪切りにして1日10gを煎じて2~3回に分服。
・マタタビ酒:保温・冷え症・神経痛・利尿・強心に実やツル(実なら200g、ツルなら250g)にグラニュー糖か蜂蜜を加え、ホワイトリカー1.8ℓで3ケ月漬ける。1回20mlを朝晩に服用。
・猫の病気には木天蓼の粉末をエサに混ぜて与える。
・柔らかい新芽を天ぷら、塩をやや多めに入れたお湯で茹でて水によく晒し、お浸しにや和え物、炒めもの、味噌和えにすると絶品。
・8月に採集した実を塩漬けにして保存し食用にする。薄く切って揚げ物にしてもよい。熟果を生食する。
・甘酢漬け(花):萼を外して塩少量を入れた湯で湯通しし(花の色が変わらない)甘酢に浸ける。
・マタタビ茶:蔓の先端5cmを塩茹でし、水にとって冷やす。2~3cmに刻み、乾燥してから煎りし、急須に入れて茶代用とする。
・果実の漬け物:マタタビの果実を塩水(5~10%)に一昼夜漬け込み、果実が黄色みを帯びたら半日乾かし、もろみの中にガーゼに包んで(平たく薄く広げ)浸ける。半年以上置くと美味しい。