ホオノキ(ヤハズホオノキ 矢筈朴木か矢筈厚朴)・厚朴Magnolia biloba(Rehd et Wils)Cheng
寄贈者名・産地・年月日・経歴:1999,11唐招提寺(平成7(1995)年4月18日、摂南大学の邑田祐子先生から)
薬用部位・開花・採集時期:開花は5月。収穫は7~9月、樹皮をはぎ取り、天日乾燥。
効能は、利尿・去痰・腹痛・胸腹部の膨満感。
繁殖法:とり蒔き、または春に種子蒔き
厚朴
[気味]苦・辛、温
[帰経]脾・胃・肺・大腸
[主治]利尿・去痰・腹痛・胸腹部の膨満感(行気化湿・下気除満・燥湿化痰・下気降逆)
ほうの葉
[気味]苦・辛、温
[帰経]脾・胃・肺・大腸
[主治]気分を和らげ、抗菌作用もある。
厚朴は、今から千五百年ほど前の中国梁の陶弘景(陶隠居)校定の『神農本草経』に収録「味苦・温。中風、傷寒、頭痛、寒気、驚気、血痺、死肌を去り三虫を去る」。
別録に「大温、無毒。中を温め気を益し、痰を消し、気を下すを主る。攪乱及び腹痛、膨満、胃中の冷逆、胸中の吐逆止まず、洩痢、淋露を治し、驚きを除き溜熱を去り、膨満を止め、腸胃を厚くす」と記されています。
気をめぐらす薬として半夏厚朴湯や平胃敵、厚朴三物湯ほかに用いる漢方の要薬です。
厚朴(こうぼく)は 胃冷吐逆(いひえとぎゃく)や 痰を治(ぢ)し 霍乱腹痛(くはくらんふくつう) 泄痢止(せつりとむ)るそ
厚朴は 上皮(うわかは)をみな 削(けづ)すて 姜汁(きょうじう)にひて 香色(かういろ)に炒(いる)
(橋本竹二郎訳『新編和歌能毒』)
ホオノキの木材は、質がやわらかいので、版木によく用いられたが、マッチの軸木とか、鉛筆材、げたの歯にも使われていた。また、木炭の朴(ほお)炭(すみ)は、昔はあかすりに用いられたり、なべの焦げを落とすのに使われた。
ホオノキの葉は芳香があり、殺菌作用があるため食材を包んで、朴葉寿司、朴葉餅などに使われます。
また、落ち葉となった後も、比較的火に強いため味噌や他の食材をのせて焼く朴葉味噌、朴葉焼きといった郷土料理の材料として利用されています。
葉が大きいので古くから食器代わりに食物を盛るのに用いられてきました。6世紀の王塚古墳の発掘時には、玄室の杯にホオノキの葉が敷かれていたのが見つかっています。
最近は厚朴のもつ抗菌性を応用して、虫歯の予防剤の研究が試みられている。
利尿、去痰、腹痛をはじめ胸腹部の膨満感に煎服する。また、筋肉のけいれん、こわばりを解き、いらだつ神経をやわらげる
・せき、つわり、神経性胃炎に
半夏厚朴湯(半夏5g、茯苓5g、厚朴3g、蘇葉2g、生姜3g、を1日量とする)を1日3回、食後30分くらいのときに服用する。気分がすぐれず、のど、食道部に異物感があり、動悸、めまいを伴うときによい。
・便秘に
頑丈な体質で、おなかが全般的に膨満して、弾力があり、しかも便秘するのに用いる漢方処方に、小承気湯(大黄2g、枳実2g、厚朴3gを1日量とする)がある。水400㏄に枳実、厚朴を入れて、1/2量にまで煎じたら火を止め、大黄を加えて、さらに1/2量になるまで煎じて、火から降ろす。これを1日に3回に分けて、空腹時に服用する。
「朴」という文字の訓はホオまたはボク。木から離れるものという意で、木の皮を指します。これが厚いので厚朴となりました。
春の新葉の展開と同時に花を開きます。日本のホオノキの花は、葉がすっかり開いて固まってから、おもむろに開花する習性があり、花期は、本州中部で5月下旬から6月になります。
日本に自生するものはM.obovataホオノキ一種のみ。北海道、本州、四国、九州に分布。
朝鮮半島から中国東北部にかけても自生のないところをみると、中国の種とは、かなり隔離した分布をみせます。
どこそこ壮人で樹高は、25mから30m、直径1m以上。葉の長さ20㎝~40㎝、巾13~25㎝、長楕円形の大きな葉が枝に互生、螺旋状に着き、枝先近くで節間が詰まり葉が集まって束生状になり笠のようにも見え、万葉集に「我が背子が棒げて持てるほほがしは あたかも似るか青ききぬがさ」(第19巻4204)と詠まれました。