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薬草クラブ

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薬草クラブ バトウレイ

メンモウバトレイ・綿毛馬兜鈴(ウマノスズクサ科)Aristolochia mollisiima Hannce

寄贈者名・産地・年月日・経歴:1999,11唐招提寺

薬用部位・開花・採集時期:7月に開花

繁殖法:秋に株分け

 

中国原産うまのすずくさ科の蔓性多年草、馬兜鈴、独行根。土青木香の名称で唐の新修本草に収載される薬物。

本種は清の道光28(1848)年呉其濾『植物名実図考、長編』に尋骨風の名称のもとに止痛、止血、袪風湿利関節、通絡活血の効用の新たな治療が得られ、新しく薬物として認知された薬用植物。日本には自生なく、平成元年の頃摂南大学の邑田氏が中国から導入し、平成6年に唐招提寺に移植した。

 

漢名:土青木香、馬兜鈴、茎)薬物名(処方名)天仙藤、青木香藤、馬兜鈴藤、果)馬兜鈴、根)青木香ウマノスズクサ(ウマノスズクサ科)Aristolochia debillis Sieb.Et Zucc.

寄贈者名・産地・年月日・経歴:1995,5 中国大明寺産。日本では富山県利賀村、島根県

生薬名:朱(しゅ)砂(しゃ)蓮(れん)、土(ど)青木(せいもっ)香(こう)、青木(せいもっ)香(こう)(根)、馬(ば)兜(と)鈴(れい)(果実)

関東以西、四国、九州、沖縄に自生。中国にも分布する。

 

・名前の由来

果実はほぼ球形の蒴果(さくか)を結び、これが馬の首にかける鈴に似ているので、ウマノスズクサの名ができた。生薬名の馬兜鈴も同じ意味。土青木香、青木香はともに中国名をそのまま用いている。

「本草綱目(ほんぞうこうもく)啓蒙(けいもう)」(1803)には、ツンボクサ・播州(兵庫県)でこの実、耳を毒す故に名づく」とあるが、果実が耳の毒でツンボグサとなる理由はわからないし、それが事実かどうかもわからない。

・類似植物:オオバウマノスズクサは、関東以西の太平洋岸沿いの暖地の山林の中に自生する。葉は丸くハート形、ときに波状に凹入しているものがあり、裏面には細毛が特に多くあり、葉の質も厚い点がウマノスズクサと違う。ウマノスズクサの葉は毛がないし、質も薄い。

中国では、オオバウマノスズクサの根を生薬朱砂蓮(しゅしゃれん)として、はれものを治し、鬱血して疼痛のあるものに1回1.5~3gを煎じて服用するようになっている。わが国では、オオバウマノスズクサの根も、土青木香として利用してきた。

・採取時期と調整法:10~11月ごろ、地上部が枯れかかったころに根を掘りとり、水洗いして日干しにする(青木香)。果実は緑色より黄変したところに採取し、日干しにする(馬兜鈴)。

効用

・解毒、はれものの疼痛:青木香1日量3~10gを水300㏄で半量に煎じて服用。

・去痰:馬兜鈴3~10gを1日量として、水300㏄で半量にまで煎じて服用する。

 

有毒成分

ウマノスズクサを含めたウマノスズクサ属の植物は、アリストロキア酸(Aristolochic acid)という有毒物質を含んでいます。アリストロキア酸は腎毒性があり、間質性腎炎を誘発することが知られています(1)。中国由来の生薬に含まれているアリストロキア酸によって、世界各地で腎障害の発生が報告されており、CHN(Chinese-herb nephropathy)あるいはAAN(Aristlochic acid nephlopathy)と呼ばれています。バルカン地方にみられるバルカン風土病腎症(BEN:Balkan Endemic Nephropathy)は、かび毒のオクラトキシンAが原因であると考えられていましたが、これもアリストロキア酸が原因であると指摘されています(2)。

また、アリストロキア酸には発がん性があり、IARC(国際がん研究機関)の分類で、アリストロキア酸を含む植物およびアリストロキア酸がグループ1(ヒトに発がん性がある)に分類されています(3)。

 

木香はインド原産の植物(Saussurea lappa)由来の生薬で、日本薬局方にも収載されておりアリストロキア酸を含みませんが、青木香(ウマノスズクサの根)は有毒なアリストロキア酸を含んでいます。中国や台湾から個人使用目的で持ち込まれる伝統薬には、呼称が類似している有毒なものがあるようなので、注意が必要です。

 

中毒症状

我が国での家畜の中毒事例は報告されrていませんが、 中毒した家畜は最初多尿から尿閉、血尿、出血性の下痢、食欲反芻の消失等の中毒症状を示します(家畜有毒植物学)。また、ケニアやタンザニアで薬用に用いられているウマノスズクサ属のA. bracteataのヤギへの給与試験が報告されています(4)。この報告では、肺、心、腎の出血性病変、肝の混濁、第4胃や腸の炎症が見られました。

 

ウマノスズクサ(ウマノスズクサ科)の花は雌性先熟で、糞や腐肉に似た匂いで小型のハエをおびき寄せ、花筒の奥の球形の部屋へと誘導する。部屋には柱頭があり、ハエは後戻りができずに、そこに閉じ込められる。その後、雄しべが花粉を出すと、部屋から脱出できるようになり、花粉を付けたハエは花から出ていく。

 

ウマノスズクサ。ツル性の多年草。

 

雌性期の花

ラッパのように開いた口は、細い管のような花筒を通じて、毬のように丸くふくらんだ部屋に通じている。
花の内部。部屋の底には、太い六角形の花柱がある。花柱の上部には6つの三角形の柱頭があり、側面には12個の雄しべがへばりついている。子房は下位で、断面には胚珠が6列に並んでいる。

 

 

花の内部。みずみずしい柱頭は横に広がり、雄しべはその裏側に隠れて下方に面している。葯は黄色でまだ花粉を出していない。花筒の奥には毛が斜めに生え、一方通行しか出来ないようになっているため、部屋に達したハエは後戻りできない。撮影に使用した花には2~4匹のハエが入っていた。

 

冷凍してから花を縦断した

 

雄性期の花

花の内部。柱頭は濃紫褐色に変色して起きあがり、雄しべも横を向くようになる。葯は褐色になり、黄色い花粉を出している。花筒の奥の毛は萎縮して部屋の中のハエが出られるようになっている。撮影に使用した花にもハエはいなかった。

 

ウマノスズクサ属の多くは騙し送粉をするが、中には、産卵場となるものや、交尾場となるものもある[Sakai S 2002 Aristolochia spp. (Aristolochiaceae) pollinated by flies breeding on decomposing flowers in Panama. American Journal of Botany 89:527-534. (Abstract)]