ハマスゲ、香附子(カヤツリグサ科)Cyprus rotundus L、の塊状に肥大した根茎
寄贈者名・産地・年月日:2006、那波徳枝氏栽培品
[気味]辛・微苦・微甘、平
[帰経]肝 ・三焦
[主治]婦人病の薬として、月経不順、生理痛、更年期障害、ヒステリーに、慢性胃炎、十二指腸潰瘍、神経性胃炎に用いる(疏肝理気・調経止痛)。
ハマスゲは浜の菅(すげ)という意のように、海浜砂地や河川敷などに群生している。本州、四国、九州、沖縄、朝鮮半島南部、台湾、満州、中国のほぼ全域、その他世界の亜熱帯から暖温帯にかけて広く分布する比較的小型の多年草です。
株茎から地中を横に走出茎が伸び、その先端が肥大して新苗となる。この肥大した根茎を折ってみると、チベレン、チベロール、α―β―チベロン、脂肪酸などを含み芳香があります。
秋の塊茎を掘りあげ炎の上でひげ根と隣葉を焼き去り、しばらく熱湯の中へ入れるか、せいろで十分蒸したのち、十分陽乾させたものを生薬の香附子といいます。この塊茎の形が生薬・附子を小さくしたような紡錘形で、また外側の暗褐色であることもなんとなく似ていて、芳香があるところから「香附子」の名ができたといいます。
香附子は 上気頭痛(じょうきづつう)に 虫積(むししゃく)や 鬱気(うつき)をはらひ 汗出(あせいだ)すなり
香附子は 鉄気を凶(いめ)ば 磨(うす)え入 つき砕きっゝ あたり用よ
(橋本竹二郎訳『新編和歌能毒』)
唐本草から宋本草にかけて、婦人の神経症に香附子を多く用いますが、本草綱目になると、「吐血」「血尿」「崩漏」「婦人帯下」「月候不調」とか、血症が非常に多く記載されてきます。
和剤局方の川芎茶調散は、婦人の頭痛に使われる処方ですが、男性でも気の弱い人や、脾胃ほ弱い人の神経症に使われます。香蘇散は脾胃が弱く、風邪を引いて頭痛がする時や、いつも偏頭痛がする人に使います。
婦人の生理不順による血症、それに伴う気の症状を改善する気剤として、多くは当帰や川芎と配合して使われます。もうひとつは脾胃剤と配合して、香砂六君子湯という形で使われます。
「気病の総司、女性の主師」といわれ、広く気滞による疼痛、特に生理痛や生理不順に用いられる。
香蘇散:香附子4.0;乾生姜・陳皮・蘇葉各2.0;甘草1.5
香砂六君子湯:人参・茯苓・朮・半夏各4.0;陳皮・大棗・香附子・縮砂・藿香各2.0;乾生姜1.5;甘草1.0
川芎茶調散:川芎・香附子各3.0;薄荷・荊芥・防風・白芷・羗活各2.0;甘草・細茶各1.5
・月経不順、更年期障害などの婦人病の薬として用いる。根茎5~7gを煎じ、1日2~3回に分服。
・歯ぐきが痛んだり出血したりするときは、実を粉末にして塩を混ぜたもので歯ぐきをマッサージするとよい。頭痛には塊根にハッカの葉を加えて煎じ、服用すると効果がある。また、汚れた血をきれいにする働きもある。
・風邪の初期
胃腸がふだんから虚弱で、神経質の人に特に効果がある。
香蘇散(香附子4g、蘇葉2g、陳皮2g、甘草1.5g、生姜3g。以上1日量)を水400㏄に入れて、半量になるまでせんじて、1日3回に分けて服用。服用のたびごとに熱くあたためて飲むこと。
蘇葉はシソの葉、陳皮はミカンの皮を乾燥したもの。生姜は野菜の生姜でよい。
甘草のみを薬局で求めれば材料は手軽に揃う。ときにはこれにネギの白い部分をショウガと同量小刻みに加えてもよい。