ハマゴウ・蔓荊子(クマツヅラ科)Vitex rotundifolia L.の成熟果実
寄贈者名・産地・年月日・経歴:1999,11唐招提寺
蔓荊子
[気味]苦・辛、寒
[帰経]膀胱・肝・胃
[主治] 頭痛、かぜ、消炎(散風熱・清頭目・止痛・袪風除湿)
北海道を除く砂地の海岸に群生する落葉小低木。
夏、紫色の小花を密集して咲く。秋に堅果を結び、乾かしたものが蔓荊子。消炎、鎮痛の目的で処方に配合されます。
「和名抄」(932)では波末波非(はまはひ)の和名で呼び、寺島良安は「和漢三才図絵」で浜に匍(は)う意ではないかと記している。
小野蘭山は「本草綱目啓蒙」(1803)で果実にハマシキミ、ハマカズラ、ハマゴウの和名をあげて、これは佐州(佐渡)での方言であると述べているが、今日では、この名が正しい和名になった。
名前の由来は、浜を這っているように生えるから「浜這(ハマハイ、ハマハウ)」と呼ばれ、ハマゴウになったという説があります。
もうひとつの由来は、花と実がユーカリやミントのような芳香を放ち、古くは香として用いたので「浜香(ハマコウ)」と呼ばれ、それがハマゴウになったというものです。
蔓荊子(まんけいし) 頭(かしら)の痛(いたみ) 能(よく)とめて 眼涙湿(がんるいしつ)の しびれにもよし
蔓荊子 へたをばすきと 撰捨(えりすて)て 少し炒つつ 使(つかふ)べきなり
(橋本竹二郎訳『新編和歌能毒』)
蔓荊子は辛散苦泄し寒で清熱し、軽浮上行し図面の邪を主に散じる。外感風熱による頭痛頭暈・目赤腫痛・目昏多涙・歯齦腫痛、および頭風作痛・脳鳴などに常用する。
蔓荊子・藁本・白芷は頭痛に有効である。藁本・白芷は風寒頭痛に、蔓荊子は風熱頭痛に適する。また、藁本は巓頂頭痛、白芷は前額眉稜骨間の頭痛、蔓荊子は太陽穴の頭痛に有効である。
・頭痛、かぜ、消炎薬:1日量6~10gを煎じて温服する。茎葉や果実を風呂に入れると神経痛、手足のシビレに効く。
・乳腫瘍に粉末果実を米酢に練って貼る。
・神経痛、手足のしびれ、ひきつりに
乾燥した果実(蔓(まん)荊子(けいし))と茎葉(蔓(まん)荊(けい)葉(よう))300~500gを木綿袋に入れ、水約1ℓで煮だし、袋ごとふろに入れて入浴する。果実3、茎葉7の割合がよい
・枕にハマゴウの実を詰めたものは頭痛に効くという。カンフエン、ジテルピン、ピネン、テルピネオールなど特異な芳香持つ精油成分を含む針葉樹に多く含まれるもので、森林浴の代行として注目されている。
平安時代の貴族は疲労回復や安眠のために、実を集め枕に入れて寝たそうです。
さわやかな香りに包まれて眠りにつく・・・優雅ですね。
試してみたくなりました。