ハハコグサ Gnaphalium multiceps Wall.
鼡麴草(しょこくさ)あまく平なり気をまして 中をおぎなひたんのぞくなり(甘く平なり気を益して、中(胃腸)を補い痰を除くなり)
ほうこ草ねつのすハふきとむる也 もちにつくりてくへばはらとむ(熱の咳を止める、餅に入れて作り食べれば満腹となり満足できる)
(『和歌食物本草』)
春の七草の一つである御形のこと。
中国名は清明菜で、別名仏耳草、あるいは鼠麹草と言い、江蘇省蘇南地区では「綿絮頭」、「寒食菜」と呼んでいます。全株に白い綿毛があり、民間の薬草名では「追骨風」と呼ばれ、キク科の植物です。浙江地区の民間では、いつも清明節以後に若菜をつんで、よく煮て、米の粉に入れて団子をつくります。粘り気があり、美味しく、口に合う。餅に搗き食用に供します。こちらは咳止め、去痰、利尿に応用される薬草です。
古くはホウコグサと呼んだが、「文徳天皇実録」(879)の著者がこの草の因縁話をつくり上げて、母子草の名をでっち上げたという説もある。地方にあるホウコ、ホウコバナ、ホウコウヨモギ、ホコホコなどの方言は、古名ホウコグサの名残りかもしれない。漢字を鼠麴草と言うが、葉に毛があってねずみの耳に似ていること、花が黄色の粒状で黄色のこうじに似ていることからできた名と言う。
「本草綱目(ほんぞうこうもく)啓蒙(けいもう)」(1803)で小野(おの)蘭山(らんざん)が
「三月三日の草もちはこの草で作ったものであったが、近頃ではヨモギで作るほうが、緑が濃くて喜ばれるようになった」と述べている。
この植物に対してネバリモチ、モチグサ、モチバナ、モチヨモギ、ヤマモチグサなどの方言があることは、これを裏づける資料となるであろう。
また、「和漢三才図会(わかんさんさいずえ)」(1713)には、胆石に用いる方法が出ている。
「(1)花をよく乾燥し、煙草にしてその煙を吸う。(2)三(さん)奇(き)散(さん)、これはハハコグサ全草(乾燥したもの)五十分、フキの花(乾燥)二百分、熟地黄二両、この三品を焙(い)り、よくまぜておく。胆石のとき、二銭をとり、炉にくべて、その煙を吸う」とある(一分は0.25g、一両は1.3g、一銭は約4gで換算)
・痰、せき:10gを200㏄の水で半量に煎じて服用する。またよく乾燥したものを細切りして、1回量20gほどを火にくべ、立ち上る煙を吸ってもよい。
・慢性気管炎、咳、喘息:ハハコグサ30g(新しいものは倍量)、ドクダミ15g、甘草10gを水で煎じて服用する。
・夜盲症、風に当ると涙が出る、明るいところがまぶしい:新鮮なハハコグサ60gをもち米と一緒に煮て粥をつくり、あるいは羊のレバーと炒めて、食べれば、肝臓に栄養を与え、視力を明るくする効果がある。
・清明節以後に若菜をつんで、よく煮て、米の粉に入れて団子をつくる。粘り気があり、美味で、口に合う。
・天ぷら、お浸し、和え物(若葉):白に綿毛がいっぱいの若葉を天ぷらに。さっと茹でてお浸し、和え物に、刻んでスクランブルエッグに。バター炒めかマヨネーズ和えするとこどもが食べやすい。
・草餅(若葉):ヨモギよりアクが少なく、そのままあるいはさっと茹でて加える。
・ハハコグサ茶(全草):花のさいた全草を1cm程にきり、乾燥後少し炒って急須に入れる。
・ハハコグサの団子(全草):生を刻んでさっと茹で、炊きたてのご飯に味噌少々、白ごまとともに混ぜあわせてすりこぎでつぶす。一口大にしてオーブントースターで5分くらい焼いて少し焦げ目をつけ、しょうゆをかけて食べる。小さく分けて汁の実にしてもよい。