日本ハッカ、薄荷(シソ科)Mentha arvesis L, var piperascens MALINVAUDの地上部
別名:メグサ(目草)、メザマシグサ(目覚草)、バカ(薄荷、波可)
寄贈者名・産地・年月日・経歴:2003里内氏
収穫は、開花後、下葉が黄変するころに、2~3節残して刈り取る。
繁殖法:地下茎を7cmに切り、覆土3cm、秋または早春に植え付け
[気味]辛、涼
[帰経]肺・肝
[主治]芳香健胃薬、頭をすっきりさせ、風邪による上気を取り除く。葉汁は引っかき傷に効く(疏散風熱・清頭目・利咽喉・疏肝解鬱・透疹止痒)。
東アジアの寒滞から温帯に分布。
唐『新修本草』菜部巻十八に薄荷の収載があります。「味辛苦温、無毒。賊風(あしき風邪)、傷寒で汗を発す。悪気、心腹の脹満、撹乱、宿食の消えぬものを主る下気(気を下す)」と薬効が述べられ、また「煮汁を飲むが生食にも堪える」「人家にこれを植えて汁を飲むようにすれば、汗を発し老乏(疲れ)を解す」等・・。
平安時代になると、薬物が日本産の動植物名の何かに充当するかという漢名に対して倭名(和名)を付けた『本草和名』(推定延喜18(918)年編述)や『和名類聚抄(わみょうるいじゅうしょう)』が出現。これらによると薄荷に対する当時の和名は「波(は)加(か)」または「於保阿(おほあ)良(ら)岐(き)」。しかし、延喜式諸国進年料雑薬になく、万葉集や古今集のほかの詩歌に詠まれず。
下って江戸元禄9(1696)年刊宮崎安貞『農業全書』巻之十に至って突然に収録されている。引用すれば「薄荷、是も薬に多く用ゆる物なり。作るべし。二種あり。一色はりうはくかとて気味のよきあり。是をうゆべし又ひはくかと云ふあり。作るべからず。肥地に一度うへをけば年々生ゆる物なり。たねを取りをき苗にしてもうゆべし。畦作りてうゆる事菜にかはる事なし。刈る時分は小むぎかるころ、下葉色付くを日和を見て刈り取り其後日かげにつりてかげ干しにして薬屋に売るべし。是八新の一にて、古きをば用いず。若し二年にこゆるあらば捨てて売るべからず」
次いで享保4(1719)年刊『広益地綿抄(こうえきちきんしょう)』に「葉のまわりにあらくきざあり、葉の間々より枝多く出る、葉末に花咲くうす白く小細、見るのあたらず茎葉に香気有り、少しつまみ切れば香り鼻をとほる」「本庄(埼玉県)辺に生えるは真土ゆえにや、香気甚だしく龍薄荷にまされり、両種ともに花壇に植べし、眼目かゆくむつかしきに、葉をはりてよし、あきらかにしてすずしむ」とその効能や適作地を述べています。天保十(1893)年頃に西洋ハッカ渡来する。この頃から合成メントールが出来るまでは、日本の薄荷栽培の全盛期を迎え、薄荷から取った天然メントールが世界中に輸出されていた。
薄荷平 風頭痛(ふうずつう) 鼻ふさがるや 腹はるを治(ぢ)し 汗(あせ)を発(はつす)る
薄荷をば 枝をも茎も みなさりて 葉を能洗(よくあらい) 是を用(もちい)よ
(橋本竹二郎訳『新編和歌能毒』)
芳香健胃薬で、頭をすっきりさせ、また、かぜによる上気をとり除く働きがある。葉汁は、猫によるかみ傷やひっかき傷にも効くといわれる。
・健胃、解熱(駆風) 薄荷葉1日10gを400mlの水で軽く煎じるか、熱湯を注いで2回に分けて服用する。ガスがたまり腹が張って、苦しい時にも同様にし飲む。ガスが出て腹満が治る。
・ハチの刺し傷 生葉の汁を患部にすり込む
・浴剤として用いると、皮膚の痒みによい
・ハッカはハッカ油として売られて、頭痛につけたり、鼻炎に鼻のまわりや鼻の中につけて鼻づまりなどをとります。また、ハッカ水は水の中に数滴落して、うがいをして咽喉炎に使う場合や清涼剤として口をすすぐのに使用したりします。
漢方:
加味逍遙散:当帰・芍薬・柴胡・蒼朮・茯苓各3.0;甘草・牡丹皮・梔子各2.0;薄荷・乾生姜各1.0
涼膈散:連翹5.0;芒硝・桔梗・黄芩各3.0;梔子2.0;甘草1.5;薄荷・大黄各1.0