テンモンドウ・天門冬 クサスギカズラ(ユリ科) Asparagus coohinchinensis(Lour.)Merr.var.cochinchinensis Merr.
寄贈者名・産地・年月日・経歴:唐招提寺・1999,11・兵庫県淡路島塩崎産実生後代
薬用部位・効能・開花・採集時期:開花は7~8月。2~3年目の秋に塊根を掘り、外皮をむいて乾燥。
繁殖法:春に根株を分ける。多年草
天門冬
[気味]甘・苦、寒
[帰経]肺・腎
[主治]滋養強壮、去痰、咳止め、利尿、止渇(潤肺滋腎・清熱化痰・潤腸通便)
天門冬は甘微苦・大寒で性質が肥かつ潤であり、清肺熱・滋陰・潤燥の効能を持つ。肺腎の陰虚有熱による労熱咳嗽・燥咳痰粘・喀血・熱病傷陰の舌乾口渇、あるいは腎虚内熱の消渇などに適する。また、滑腸便通にも働くので、腸燥津枯の大便秘結にも用いる。
天門冬(てんもんどう) 肺痿肺廱(はいいはいやう) 痰(たん)を治(ぢ)し 熱喘(ねつぜん)を治(ぢ)し しわぶきを留(とむ)む
天門冬 土気(つちけ)を洗(あら)ひ 心(しん)をさり 日にほしあぶり 鉄気(てつき)をば凶(いむ)
(橋本竹二郎訳『新編和歌能毒』)
クサスギカズラは雌雄異株で、葉は退化して鱗片状になって、茎の節の所に小さくなってついている。葉のように見える針状のものは、枝が変形したもの。一般に緑の植物が光合成をするのは葉によって行うが、このクサスギカズラ属は、葉が退化しているので、針のような緑の枝で光合成を営んでいる。
暖地の海岸、砂地に自生する多年草で、地下に大量の貯蔵根を持つ。体質虚弱な老人のせきや、四日市ぜんそくのような症状にも用いられる。
滋養強壮・糖尿病(天門冬を煎じる)、強壮剤に(天門冬の粉末と松ヤニの粉末を混ぜて蜜丸にする。古来より肺と呼吸器系、胃腸を丈夫にして、勃起能力をたかめるという)。
・滋養強壮:根6~10gを1日量として煎服するか、干した根を蜂蜜で1~2ヶ月漬けた後、1日2~3
個食べるようにする。
・滋養強壮、せき、痰のつまり:格好の薬食品である。さらに、利尿、止渇(のどの病的な渇きを止める)
にも効きめがある。
・咳:天門冬の蜂蜜漬け2~3個を小さく刻み、水200CCの中に入れて沸騰させて止め、冷め加減の時
に、煎じ汁を2回に分けて飲む。
・むくみのときの利尿:天門冬1日10~15gを刻み、水200CCから煎じ、1日3回に分けて服用。
・野のアスパラガス(茎):軟らかいところを摘み、さっと茹でてマヨネーズをつけたりスープに浮かべる。芥子ドレッシングや花カツオとしょうゆがけも美味しい。
・甘煮・漬け物(塊根):皮をむき、甘辛く炊く、さっと茹で、味噌漬け、もろみ浸け、粕浸けにしてもよい。
・薬酒:天門冬(生の方がよい)を酒に漬ける。乾燥した天門冬を煎じて作った液に麹を加えて発酵させる。天門冬をミキサーにかけて煮たものに麹を加えて発酵させた酒は効果がよい。血液循環をよくし、疲労回復剤になる。
温暖・湿潤気候を好み、寒に耐えがたい。強い直射日光を嫌い、強烈な日射にあうと枯れやすいので夏季は高い茎の穀物や林木・その他の薬材の間に作ると良い。
1、繁殖方法
①種子繁殖:毎年9―10月、果実が緑色から紅色に変色する頃採取する。
蒔く時期は春蒔きと秋蒔きがあり、秋蒔きは9月上旬から10月上旬にし、発芽率は高い。春蒔きは3月下旬。
溝と溝の幅は20-24cm・溝の深さは5-7cm・蒔く幅は6cm。
気温が17-20℃で、蒔いてから18―20日で発芽。発芽時から幼苗時は木陰を作って土壌の湿潤を保持する。苗が3cm頃に草取りをし施肥する。1年後に幼苗を定植する。一般に10月或は春季芽が出る前に定植する。うね距離を50cm・株距離は24cm。2行に天門冬を植え、その両側には間作を作る。
②分株繁殖 1芽と2-3個の塊根を付けた物を種苗とする。
2、栽培管理
生長期間は除草を常にするが、深く除草しない事(根を傷つけるから)。乾燥時は散水し、雨季時は排水する。
施肥と除草は同時進行し、第1回施肥は3―4月、第2回は6―7月、第3回は9月。
3、収穫
定植2―3年後に収穫する。収穫時期は9月か翌年の発芽前。
水煮か蒸し煮して紅色になったら水洗いをして皮をむく。皮を剥いた後水洗いをし、再び硫黄で薫蒸2回する。