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薬草クラブ チョウセンゴミシ(五味子)

植物名・薬物名・科名:

チョウセンゴミシ、五味子(マツブサ科)Schizandra chinensis BAILL,の成熟果実

 

寄贈者名・産地・年月日・経歴:

1999,11橋本竹二郎氏。富山県薬草園や富山医薬大薬用植物園→和漢薬研究所の赤城薬園や奈良唐招堤寺薬苑へ→

 

薬用部位・開花・採集時期:

開花は夏。収穫は秋に果実。天日乾燥。効能は、鎮咳・強壮。

 

繁殖法:

6~7月に充実した新梢を挿し木、または、4月に伸びたつるを取り木する。

 

備考:

ゴミシ・五味子

正しくはチョウセンゴミシ。朝鮮から薬物として輸入されていたが、のちに山梨県や長野県にも自生することがわかった。つる性の木で、秋になると真紅の房が垂れ下がる。酸味があり、食用にもよい。広く名前を知られてはいるが、山野では稀な植物である。同属のビナンカズラやマツブサを、料理研究家の間でゴミシと呼ぶ場合があるが、薬効は本物のゴミシに限られる。

薬用部分:果実

採取時期:9~10月

用法:果実を天日乾燥する。せきを静めるため、生薬を1日量1~5g服用する。熱を伴うせきや呼吸困難には不適。思考力低下、神経衰弱には生果を酒に漬けたものが効く。

(橋本竹二郎著『目で見る薬草百科』)

 

五味子の基源となる植物はチョウセンゴミシです。分布は、朝鮮半島北部から中国東北部。日本では、本州中部の群馬、長野、山梨の各県の山地から東北地方、北海道に稀に自生する蔓生植物です。表紙に描いた五味子も日本に自生するチョウセンゴミシと同一のものと認められます。五味子は、神農本草経・上品に収載される古くからの薬物。その名の由来は、乾いた果実を嘗めると塩辛く(鹹)、果肉を食べると酸っぱい味があって甘く、中にある腎臓形の種子を噛み潰すと苦くて辛いという五味を具えているので名付けられたと言います。また後年になって北五味子の異名で呼ばれることになりました。鎮痛、鎮痙、鎮咳、坑潰瘍作用があり、漢方薬の小青竜湯に配剤、また滋養・強壮剤として熟地黄や人参と配合した人参養栄湯などに用いられます。

 

チョウセンゴミシの和名は、日本の山地に自生がありながら、外国から渡来した帰化植物のような印象を受け、奇異な感じを与える称呼です。身近な書物を当たってみると、どの本にも「享保年問(1716~36)に朝鮮より種子渡来す」るによるとあり、当時の学者は日本に自生のあったことを知らなかった。「その後明治になってから白生することが判った」が江戸時代からの慣用名「朝鮮五味子」をそのまま誰れ云うとなく標準和名になったと言うような情況です。

 

前述したように隋以前の古代に陶弘景によって編された神農本草経には五味子ただ一種類のみ。下って明代の李時珍著『本草綱目」には「五味子に北方産のものと南方産のものとがあるが北方産のものを用いるべき」だと述べるにとどまりました。しかしその影響を受けてか、その後の日本で小野蘭山『本草綱目啓蒙」五味子の項には「南北ノ異アリ朝鮮ノ産ヲ遼五味子トシ又北五味子ト呼ブ 朝鮮ハ唐山ノ北二当ル故ナリ 享保年中朝鮮ヨリ種ヲ渡ス今人間二多ク栽ユ薬杏葉二似タリ 又木天蓼葉二似テ鋸歯粗ク皺アリ」「その毬漸ク大ニシテ長ク下垂スルコト一二寸 圓実多クツヅル 生ハ青ク熟ハ赤ク大キサ南燭子ノ如シ 秋後葉落チ藤枯ズ 黄赤色ニシテ微黒ヲ帯ブ 此実久ヲ経レバ色黒ク五味備ルコト此書に云所ノ如シ」とあり「南五味了ハサネカヅラ一名ビンツケカヅラ 熟シテ赤色 乾カシテなお赤クシテ潤ナシ苦味多ク五味備ハラズ和ノ五味子トシテ売ルモノコレナリ」「今朝鮮卜名テ売ル者数品アリ多クハ尾州ヨリ出ルヲ朝鮮五味子ト云 是名古屋五味子ナリ粒大ニ黒色潤アル者ハ朝鮮ニ異ナラズ宜ク用フベシ」と。

 

小野蘭山口授の『本草綱目啓蒙」の刊行開始が享和三(1803)年で、このころにチョウセンゴミシの和名が与えられたものと考えられます。なお尾州より出る朝鮮五味子またの名を名古屋五味子とは、信州長野県に自生するものが中山道を通って名古屋市場に出たもので、この時代すでに国内自生品のあるのを知っていたものと考えられ、ならば、原植物の和名は単にゴミシでよいではないかということになります。

五味子属は、果実が漿果を結ぶことからモクレン科より別かれてマツブサ科として扱うことが多くなりました。花後に花托が穂状に伸びる五味子属と、頭状に膨らむビナンカズラ属(日本特産属)に分類されます。

(『主治医』橋本竹二郎著)

 

五味子温(ごみしうん) 元気補(げんきおぎな)ひ 精(せい)をまし 渇(かはき)をとめて 嗽(しはぶき)によし

五味子をは 酒(さけ)に浸(ひた)して 少(すご)し炒(いり) 押砕(おしくだ)きつつ 使(つかふ)ものとよ

(橋本竹二郎訳『新編和歌能毒』)

 

五味子(ウーウェイツ)

チョウセンゴミシ、生薬名:ゴミシ

性味-甘・酸、温、無毒

五味子は、マツブサ科の食物北五味子(チョウセンゴミシ)の果実で、薬用になる。同科の植物華中五味子(南五味子)も薬用になり、北五味子と植物の外形は近似している。中国では歴代、南北朝の陶弘景、唐の蘇頌、明の李時珍以来、薬用の五味子は北五味子がよいと指摘している。

  • 薬理

適度な薬量のとき、中枢神経に対して興奮作用があり、人間の知力の活動を改善し、作業効率を高める。

動物実験:ジザンドリンは呼吸に対して興奮、強心作用があり、新陳代謝を促進し、身体の非特異性刺激に対して防衛能力を増強する。

  • 効用

種子:虚労症の補益、強陰益精、肺虚による喘息・咳、下痢、盗汗の治療。

根皮:気を行らし、血を活かし、強筋壮骨、瘀血を散らし、痛みを止める。

  • 応用

① 肺結核、咳込み、盗汗、遺精

北五味子10g、女貞子10g、甘草6gを水で煎じ、滓を取り去り、1日3回に分けて服用する。

② 伝染性肝炎、GPTの増加

五味子を炒り、すりつぶして粉末にし、1日6~10g、2~3回に分けて服用する。

③ 神経衰弱、心臓動悸による不眠

五味子6g、茯苓、菟絲子各10gを水で煎じ、滓を取り去り、蜂蜜を加え、1日2~3回に分けて服用する。

④ リウマチによる筋骨痛、腰脚痛、神経痛

南五味子の根茎1日18gに黄酒と水を加えて煎じて服用する。

(葉 橘泉著『医食同源の処方箋』)