チャはツバキ科の常緑樹で、インド、ミャンマー、中国にわたる広範囲な山岳地帯が原産地といわれます。中国では三千年前、周の時代にはすでにお茶を栽培しており、乾燥して粉末したものに湯を注いで飲んでいたといいます。
栄西の著『喫茶養生記』の冒頭には、「茶は末代養生の仙薬、人倫延命の妙術」と書いてありますから、初めは薬用に飲まれたもののようです。『和漢三才図絵』にも茶の効用として、「頭目を清め、気を下し、食を消し、痰熱を去る」と出ています。茶は、貴族社会から武家社会に伝わり、庶民の間に広まったのは煎茶が出廻った江戸時代に入ってからでした。
1、お茶
[気味]苦・甘、微寒
[帰経]心・肺・肝・腎・脾・胃
[主治]頭目を清め、のぼせを除き、胃液の分泌を促して消化を促し、食べ物を胃と五臓に導き、尿量を増やす。疲労回復に役立ち、安らいだ気分にする。しかし、多飲は禁物、飲むには温かくして飲むのがよく、冷たい物は痰を溜めやすい(袪風解暑・清爽頭目・解毒止痢・除痰利水・生津止渇・消食除膩・醒睡)。
2、ウーロン茶
[気味]苦・甘、涼
[帰経]肝・脾
[主治]肥満、利尿、精神安定(化痰消食・利水解毒・養心安神)。
3、紅茶
[気味]苦・甘、温
[帰経]脾・胃
[主治]疲労回復、ストレス解消、抗酸化作用(養心・安神・止渇・利尿)。
茶こそたゝすこしひえものせうべんを つうじてねむりさますもの也(茶こそただ少し冷やすもので、小便を通じて眠り覚ますもの也)
ちやこそたゝしょくをけす也きもくだす かハきをとめてたんねつをさる(茶こそただ食を消す也、気を下し、渇を止めて痰熱を去る)
ちやこそたゝなめあかはらをとむる也 づつうのくすりねつさますもの(茶こそただ白痢赤痢をとむるなり、頭痛の薬、熱さますもの)
ちやはつねにうすくあつきをこのむべし こくぬるきこそたんにさゝはる(茶は常に薄く熱い物を好むべし、濃くぬるきこそ痰にささわる)
ちやこそたゝねつきをさますものなれや かさをもいやししやうきさるなり(茶はただ熱を冷ますものなれや、瘡を癒やし、上気去るもの)
ちやはつねにやせたる人にいましめよ 身のうるほひをかハかしにけり(茶は常に痩せた人は戒めよ、身の潤いを乾かす)
(『和歌食物本草』)
・かぜ、頭痛に、緑茶15g、陳皮(みかんの皮)20g、山椒3~5個以上を水400㏄で、半量に煎じて、熱いうちに1回に服用する。
・下痢に、緑茶の粉末、乾燥したショウガ粉末を各等分量に混合し、1回量3~6gを白湯(さゆ)で服用する。
・天行(時節によって流行する病気)赤眼。渋痛して開けられぬ場合、煎茶の初沸に白い塩を少し加えて、頻繁に目を洗うと、開き易い。
茶の葉の成分は成長につれて変化します。主成分はカフェイン、タンニン、そして豊富なビタミンCです。カフェインは若芽に多く含まれ、タンニンは少し遅れて若芽のころが最も含有量が多い。ちなみに玉露とコーヒーのカフェイン含有量をくらべると、玉露は約3倍、茶やコーヒーにほろ苦い味をつける成分もカフェインで、高級品ほど含有も多い。茶には覚せい作用があり、精神活動を活発にしてくれるのが特長です。胃液の分泌を促して食欲を出し、尿量や排尿の回数も増します。だから疲労回復に役立ち、安らいだ気分にしてくれます。こうした効用を漢方では川芎茶調散の処方に取り入れ、頭痛や更年期障害に用いています。
・茶は五季に渡って生きる。よって、五臓に入る。吸収する力が強く、天地のパワーを全て持っています。
茶露を集めて飲むとよい。
秋から冬のお茶葉は、乳酸菌が多く甘く、解毒作用があり、温性、焼き石で焼くとよい。春のお茶葉は、
微寒で清熱作用があります。
戦国時代は殺戮(さつりく)の時代だったので、精神安定させ、気の巡りを良くするために、寒性・苦味が必要でした。それで抹茶([気味]苦・甘、寒)が流行したのかも知れません。
・和食に合うお茶の種類
食事中に飲むお茶
伝統的な日本料理のお店で食事中に出されるのは、ほうじ茶です。和食のコースに含まれる、焼いたものや、揚げ物など、オールマイティーにのめほうじ茶は火を通してあるため、カフェインの含有量も少なく、安心して飲むことができます。
料理の味を邪魔しないお茶として、食事中のお茶はほうじ茶が決まりというのが、伝統的な和食のお店では常識になっています。
寿司を食べる時には、あがりと言って、緑茶が出されます。大きな分厚い湯呑で出され、熱い温度を保持するように考えられています。お寿司屋さんでは有効成分が抽出されやすい粉茶を使っています。
緑茶に含まれるカテキンの、殺菌作用から、食中毒を防ぎ、口臭予防などとともに魚の油分などを、熱い濃いお茶を飲むことにより、洗い流し、いわゆる口直しの役割も兼ねています。
天ぷら、串カツといった油っこいものには、油分を洗い流すウーロン茶もさっぱりとして美味しくいただけます。
食後のお茶としておススメは、煎茶です。緑茶のカテキンが、口臭予防、虫歯の予防効果もあり、口の中を爽やかにしてくれます。
和菓子などと頂くお茶は上生菓子などの和菓子には、お抹茶がぴったりです。上煎茶、玉露の様な上質のお茶も良いでしょう。
タイ焼きや、豆大福、おせんべいの様な庶民的な日本のおやつには、番茶や、麦茶、ほうじ茶、玄米茶などがよくあい、甘いものには、渋みが甘さを和らげる煎茶も、とても合います。
・番茶・二番茶・三番茶・秋冬番茶(しゅうとうばんちゃ)
茶葉を摘み採った順番に応じて、「一番茶」「二番茶」「三番茶」と呼ばれます。一番茶は新茶と呼ばれることもあります。
摘み採った順番による呼ばれ方
一番茶は、その年の最初に生育した新芽を摘み採ってつくったお茶のこと。以降、摘み採った順番により、「二番茶」「三番茶」と呼ばれます。「一番茶」のことを「新茶」と呼ぶこともあります。「一番茶」はその後に摘み採られる「二番茶」「三番茶」などと対比して使われることが多く、「新茶」は1年で最初に摘まれる「初物(はつもの)」の意味を込めて、また「旬」のものとして呼ばれます。
地域によっては、三番茶を摘み採らずに、秋口に摘む「秋冬番茶」もあります。
・番茶(ばんちゃ)
日本茶の基本的な主流から外れたお茶を総称して「番茶」と呼びます。茶葉の摘採期や品質、地域などによって、さまざまな意味の番茶があります。
番外のお茶、「番茶」。番茶は、「番外茶」からきているといわれており、大きく5種類に分類されます。
1.一番茶の手摘み、あるいは若芽を摘採した後の遅れ芽を摘採したもので、品質は良好。(専門的には「一番茶」)
2.三番茶を摘採せず、そのまま枝葉を伸ばしたものを秋に摘採したもので、量的にはもっとも多い。(専門的には「秋冬番茶」)
3.仕上げ加工工程で、大きく扁平な葉を切断せずに取り出し、製品化したもの。(専門的には「頭(あたま)」)
4.昔からの非主産地で、地元消費を主として特殊製法でつくられたお茶。例として、「京番茶」「美作(みまさか)番茶」「阿波番茶」など。
5.北海道、東北、北陸地方では、地方語として「ほうじ茶」のこと。
いずれにしても、摘採期、品質、地域などで日本茶の主流から外れた番外のお茶を指しています。一説には、遅く摘み採ったお茶、つまり「晩茶」から転じて番茶、あるいは番小屋で待機中に飲んだ安いお茶を番茶という説もあります。
・緑茶
発酵(主として酸化)の少ない状態でつくられる茶。製造の第一工程で、茶葉を蒸気または火熱を用いて熱し、茶葉中にある酵素を失活させて酸化を防ぎ、固有の緑色を保たせるようにつくる。煎茶(せんちゃ)、玉露(ぎょくろ)、抹茶(まっちゃ)、玉(たま)緑茶などがあり、日本で生産される茶の大部分は緑茶である。
・煎茶(せんちゃ)
摘みたての新鮮な生葉を、蒸したり炒ったりして熱処理することで発酵を抑えた煎茶は、日本人に馴染み深いポピュラーなお茶です。
普段、もっとも飲まれているお茶、煎茶は、緑茶の中で、もっともよく飲まれている代表的なお茶です。
お茶は、茶園で栽培した生葉を加工することによって製品となります。生葉は、摘採した時点から酸化酵素の働きによって変化(発酵)が始まりますが、緑茶は新鮮な状態で熱処理(蒸す・炒る)することで酸化酵素の働きを止めた「不発酵茶」です。この「生葉を熱処理し、葉の形状を整え、水分をある程度まで下げて保存に耐えられる状態」にすることを荒茶製造といいますが、蒸して揉んで荒茶を製造するもっとも一般的な製法でつくられたお茶を「煎茶」と呼びます。
・かぶせ茶(かぶせちゃ)
太陽の光を1週間前後さえぎって新芽を育てることで、濃い緑茶の茶葉となり、旨みを感じるお茶ができあがります。
渋みが少なく旨みを多く含む「かぶせ茶」
「冠茶」と漢字で表記されることもある、かぶせ茶。ワラや寒冷紗などで1週間前後茶園を覆い(被覆栽培)、日光をさえぎって育てたお茶のことを呼びます。陽の光をあてずに新芽を育てるため、茶葉の緑色が濃くなり、渋みが少なく旨みを多く含みます。
同様に被覆栽培する緑茶として「玉露」がありますが、玉露はかぶせ茶よりも被覆期間が20日前後と長くなっています。
・玉露(ぎょくろ)
太陽の光を20日間程度さえぎって新芽を育てることで、渋みが少なく十分な旨みをもった味わいのお茶ができあがります。豊富な旨み、独特の香りが特徴の「玉露」
新芽が2~3枚開き始めたころ、茶園をヨシズやワラで20日間ほど覆い(被覆栽培)、日光をさえぎって育てたお茶が「玉露」になります。最近は、寒冷紗などの化学繊維で覆うことも多くなっています。光を制限して新芽を育てることにより、アミノ酸(テアニン)からカテキンへの生成が抑えられ、渋みが少なく、旨みが豊富な味になります。海苔に似た「覆い香」が特徴的です。
・てん茶(抹茶)
通常のお茶とは異なり、茶葉を揉まず、そのまま乾燥させた抹茶の原料となるお茶です。
抹茶の原料として用いられる「てん茶」
主に抹茶の原料となるお茶。玉露と同じように、茶園をヨシズやワラで覆い(被覆栽培)、日光をさえぎって育てた生葉(一番茶)を原料としますが、蒸した後、揉まずにそのまま乾燥し、茎や葉脈などを除いた後、細片が「てん茶(碾茶)」となります。一般に、玉露の被覆期間である20日前後より長く被覆されます。名称の「碾(てん)」は挽臼を表していて、挽臼で粉砕するためのお茶であることから「てん茶(碾茶)」と呼ばれます。出荷直前に石臼で挽いたものは抹茶として出荷されます。
・玉緑茶(たまりょくちゃ)
嬉野茶などに代表されるお茶で、主に九州北・中部でつくられます。ぐりっと丸まった茶葉の形が特徴的なお茶です。
渋みが少なくまろやかな「玉緑茶」
荒茶製造工程の途中までは煎茶と変わりませんが、精揉(最後に形を細長くまっすぐに整える)工程がなく、回転するドラムに茶葉を入れ熱風を通して茶葉を乾燥するため、撚れておらず、丸いぐりっとした形状に仕上がったお茶のことを「玉緑茶」と呼びます。「ムシグリ」「ぐり茶」とも呼ばれることもあります。
渋みが少なく、まろやかな味わいが特徴です。九州北部から中部でつくられ、佐賀の嬉野が代表的な産地です。
・玄米茶(げんまいちゃ)
玄米とほぼ同じ量の番茶や煎茶を混ぜてつくられる玄米茶は、さっぱりとした味わいで、幅広い年代の方にお勧めできるお茶です。
炒り玄米の香ばしさが楽しめる「玄米茶」
水に浸して蒸した玄米を炒り、これに番茶や煎茶などをほぼ同量の割合で加えたお茶が「玄米茶」となります。炒り玄米の香ばしさと、番茶や煎茶のさっぱりとした味わいが楽しめます。玄米が混入していることで、煎茶や番茶の使用量が少なくなることから、カフェインが少なく、お子さまやお年寄りの方にもお勧めできるお茶です。