センキュウ、川芎(セリ科)Ligusticum chuanxiong HORT,の根茎
寄贈者名・産地・年月日・経歴:1996、橋本竹二郎氏
薬用部位・効能・開花・採集時期:開花は9~10月、
収穫は、茎葉が枯れる11月頃に根茎を掘る。湯通しして輪切りにして乾燥。
川芎
[気味]辛、温
[帰経]肝・胆・心包
[主治]貧血、冷え、月経痛、月経不順、頭痛、関節痛、しびれ(血行促進、活血行気、抗菌、免疫賦活)(活血行気・祛風止痛)
川芎(せんきう)は 眼涙(がんるい)をとめ 頭痛(づつう)やめ 血(ち)をやしなひて 欝気(うつき)ひらくぞ
川芎は 唐(から)は火(ひ)をいめ 和(わ)はあぶれ 唐をも和をも 芦頭皮(ろづかは)をされ
(橋本竹二郎訳『新編和歌能毒』)
川芎は辛温香竄で「走(ゆ)きて守らず」、頭巓に上行し、血海に下達し、皮毛に外徹し、四肢に傍通し、「血中の気薬」である。辛酸温通により活血化瘀・行気止痛に働くので、寒凝気滞血瘀の月経不順・経閉通経・癥瘕腹痛、肝欝気滞血瘀の脇肋絞痛、気滞血瘀の癰疽腫痛、跌打損傷の瘀血腫痛などに用いる。また、辛温昇散・疎通し、頭目に上行し皮膚に外達し、祛風止痛の効能を持ち、頭痛・風湿痺痛に対する良薬であり、とくに頭痛には風寒・風熱・血虚・気虚・血瘀を問わず、配合が適切であれば有効である。ただし、発表の力は強くなく、止痛にすぐれている。
平安時代の古代法典『延喜式(えんぎしき)』のなかの諸国進年料雑薬などに尾張国、遠江(遠州)より朝廷に貢進されたとの記載があり、また、日本最古の薬物辞書『本草和名』にも「芎窮(きゅうきゅう)、和名於无奈(おむな)加都(かづ)良(ら)久(く)佐(さ)」として収録されており、古くから日本にて栽培されていたものと考えられます。
江戸中期に中国から薬用として伝来、当帰(とうき)とともに婦人薬として栽培化された。日本栽培品は果実が熟さず、以来、株分けにより繁殖がくり返され、独自の植物になっている。
川芎(せんきゅう)とはもとは芎窮と呼ばれ、中国三国時代の王朝である蜀(しょく)の国のキュウキュウが佳品とされていましたが、蜀はやがて四(し)川(せん)と呼ばれるようになり、センキュウとなったといいます。日本産のものは東南アジア諸国で日芎(にっきゅう)という。
多肥料作物ですから有機質肥料を施し、干し草を切って敷藁をし、地面に降り注ぐ真夏の暑さを遮断する工夫をし、専ら茎葉の展開に努めるならば、八月の下旬には白い小花を複散形状に抽出、さらに九月、十月と十日に一度の割合で施肥し、十一月に入りこれを止めます。やがて降霜により葉が黄ばみ始めたころ、指先で試し掘りすると拳大の芋(根茎)が触るならば豊作です。小さい芋や数珠が連なったような根茎(所謂そろばん玉)を除いて大きいゴツゴツした芋とを選別します。その際、形の良い中位の芋は翌年の種苗として必要量を選び、できることなら直ぐにその場で植え付けるのが良策です。収穫前に、次年度に作る畑に基肥を入れて植付けられるように予め用意しておくよう心掛けます。根が深くないので収穫の作業は比較的容易です。土をできるだけ落とし、茎・葉、蘆頭および鬚根を除いた芋を水洗し、釜で湯を沸かし、この中に入れて茹で上げます。ゆであがりの目安は太い部分を試し切りして半透明になり、でん粉が糊化していれば充分です。これを笊(ざる)のようなものに入れてから、畳針に糸を通して芋を数珠繋ぎにし、これを天井から吊るしストーブのような火でゆっくり乾燥させられると生薬「センキュウ」のでき上がりです。