ジャノヒゲ・麦門冬(ユリ科)Ophiopogon japonicus KER-GAWL,の塊根
寄贈者名・産地・年月日・経歴:1999,11唐招提寺
薬用部位・開花・採集時期:開花は初夏。収穫は、5月に紡錘根を。
[気味]甘・苦、微寒
[帰経]肺・心・胃
[主治]咳止め、痰切り、声がれ、滋養強壮。心臓、糖尿病に用いる(清熱潤肺・止咳・養胃生津・清心除煩・潤腸通便)
麦門冬 痰熱をさり 陰をまし 渇(かわき)をとめて 嘔(からえづ)きやむ
麦門冬 湯に浸(ひた)しつゝ 心をさり 日にほし焙り 用いこそすれ
(橋本竹二郎訳『新編和歌能毒』)
妹待つと三笠の山の山(やま)菅(すげ)の止(や)まずや恋ひむ命死なずは
((妹待つと)三笠の山の山菅のように,やまずに恋い慕うことであろうか,命さえ絶えないのなら。)
(『万葉集』巻12 – 3066)
別名「リュウノウヒゲ」ともいう。山林のへりや草原の日の当たるところに生える多年草。北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国からヒマラヤまでに分布するもので、日本はジャノヒゲの分布の東限になっています。
・滋養・強壮 乾燥した根(麦門冬)5~10gに蜂蜜5~10gを加えて煎じ服用。
・せき止め 麦門冬10g、半夏・硬米5g、人参・甘草2g、大棗3gを煎じて服用。
・風邪の咳、喘息、百日咳、気管支炎等で、分泌物の少なく、痰の切れにくい咳に1日量6~12gを水500mlで半量まで煎じ、1日3回に分けて服用する。
・心臓病や滋養強壮 麦門冬に蜂蜜を加えて、煎じて服用。
漢方薬
・麦門冬湯:麦門冬10.0;半夏・粳米各5.0;大棗3.0;人参・甘草各2.0
・竹葉石膏湯:石膏10.0;麦門冬・粳米各6.0;半夏4.0;人参3.0;竹葉・甘草各2.0
・生脈散:麦門冬・人参各6.0;五味子3.0
・梅酢漬け:根先についている塊根を水に浸し、土を落とす。さっと茹で、熱いうちに赤梅酢とミリン(同量)を合わせた液に漬ける。味噌漬けにしてもよい。
・薬酒(塊根):隠れるくらいの焼酎に約1年間漬けて作った麦門冬酒は血液の循環をよくし、疲労回復、鎮咳剤となる
類似植物
ジャノヒゲ属のものは花が下向きに咲き、種子が青色になるが、よく似たヤブラン属花は上向きに咲き、種子が黒色や緑黒色になる。
見分け方は次表のようになる。
植物名 |
葉の縁のざらつき | 葉の幅 | 種子の色 |
ジャノヒゲ | 著しい | 2.4㎜ | 青色 |
ヒエヤブラン | ほとんどない | 1.5~2.0㎜ | 黒色 |
ヤブラン | 多少はある | 1㎝ | 緑黒色 |
オオバジャノヒゲ | 多少はある | 4~6㎜ | 汚藍色 |