シュウカイドウ(シュウカイドウ科)漢名 秋海棠
中国原産で、各地に栽培される。白井光太郎著『改訂増補日本博物学年表』(1941)によれば、寛永18年(1641)にシュウカイドウを中国から輸入すとしている。
名前の由来
天明4年(1784)、スウエーデンのツンベルク著『日本植物誌』(フローラ・ヤポニカ)は、長崎で採集したシュウカイドウを日本名sjukaidoと記している。和名のシュウカイオドウは、漢名の音読みによるが、島田充房著の『花彙(かい)・草部・巻2』にのせたある図には、「八月(はちがつ)春(しゅん)」と出ていて、秋海棠を別名のように記してある。
シュウカイドウの名前は、春に咲くバラ科のカイドウ(ハナカイドウ)に似て、秋に咲くところからと言われています。中国で美人の形容詞に使われるカイドウの花も、垂れて少し下向きに咲きますし、確かに花の色はよく似ています。種子植物には、一つの花にメシベとオシベがあるもの、同じ株に雌花と雄花が咲くもの(雌雄異花)、雌花をつける雌株と雄花をつける雄株に分かれるもの(雌雄異株)があります。
シュウカイドウは雌雄異花で、雌花と雄花の違いがよくわかります。 雄花をつける枝は上に伸びていますが、雌花をつける枝は、垂れ下がっています。
雌花にはオシベは見あたらず、子房(詳しく言うと、子房下位ですので、子房を包む花托の部分)には3個の翼状の突起が飛び出ています。 雄花の子房部分は退化してしまっています。
秋海棠 西瓜(すいか)の色に 咲きにけり
(松尾芭蕉)
昔のスイカは色が薄かったのでしょうか?
ところで、この雌花と雄花のつくりの違いは、街でよく見かける四季咲きベゴニア(ヘゴニア・センパフロレンス)でも同じです。 ただし、シュウカイドウと比べると、花は密集して咲きますし、雌花も雄花も垂れ下がらず、子房の部分も花弁化したガクも同じ色、メシベもオシベも同じ黄色ですので、よく注意してみないと、雌花と雄花の区別は難しいかもしれません。
シュウカイドウの地下に不整形の塊茎があり、中国では、全草や塊茎を健胃、駆虫剤等に使用している。
食用としては、シュウ酸を含み、酸味があり美味しいが、新鮮な葉、花を、サラダなどに散らして食べる程度にしたい 。
薬効・用い方
有効成分は、全草に殺菌作用がある、シュウ酸を含有。皮膚病、たむしの痒みなどには、茎葉を生のまま、すり潰して、患部に直接塗布する
栽培メモ
水湿の日陰が良い。春に前年の塊根から発芽したのを分けて植えるが、ムカゴを植えてもよく、すぐに根を下ろす。茎にシュウ酸を含み、酸味があって食用にするが、多食は良くない。
採集時期
8~9月の開花期に、茎葉をとり、そのまま水洗いして用いる。
シュウカイドウ(秋海棠)は、Begonia属の、中国原産の多年草で、江戸時代に渡来しました。 ベゴニアの仲間は、熱帯から亜熱帯にかけて分布する植物ですが、このシュウカイドウは、日本でも戸外で越冬できるため、半野生化し、湿度の保たれている路傍などで見かけることがあります。