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薬草クラブ シソ・紫蘇葉、紫蘇子

シソ・紫蘇葉、紫蘇子(シソ科)Perilla frutescens BRITTON var、acuta KUDO

寄贈者名・産地・年月日・経歴:1995,4橋本竹二郎氏

 

1、紫蘇葉

[気味]辛、温

[帰経]肺・脾・胃

[主治]体の中の冷えを温め気として発散し、心身ともによみがえらせ、その色は紫で血分に入り血を和する。

蟹海老魚貝類の毒を解す(発表散寒・行気寛中・解魚蟹毒)。

ストレスを除き気分を発散させ、血を調える。胃腸の冷えを除き健胃薬となる。一切の魚毒を消す。口内炎・口臭・咽頭炎を除くなどの作用がある。

紫蘇の薬効の辛温は体表や消化管、気管支、気管の粘膜の血行を促進し、身体の表裏を温める作用を意味し、うっとうしさを晴らし、湿気を追い出す作用があります。

 

2、紫蘇子

[気味]辛、温

[帰経]肺・大腸

[主治]気の鬱帯を沈め、咳止め、便秘に。醤油の防腐剤として用いる(下気消痰・止咳平喘・寛腸潤燥)。

 

3、紫梗(茎)

[気味]辛、温

[帰経]肺・脾

[主治]胃腸を調え、気をめぐらせ、安胎薬。

 

紫蘇温(うん) 霍乱吐(かくらんと)逆(ぎゃく) 胃をひらき 頭痛を治(ぢ)して 気を下す也

紫蘇は火を いむものぞかし くきをさり 葉斗(ははかり)えりて 是を用(もちひ)よ

紫蘇子平 咳逆をとめ 気をくだし 痰せき嘔吐 喘急を治(ぢ)す

紫蘇子をは 少し焙りて 用へし こしらへやうは 別(べち)の儀はなし

(橋本竹二郎訳『新編和歌能毒』)

 

 

シソはシソ科の植物で、我国へは奈良・平安時代に渡来したとされています。大別すると葉が赤紫色のアカジソと青色のアオジソ(青蘇)の二系統がありますが、一般にはアカジソを薬用に、アオジソは食用に用います。

貝原益軒は『大和本草』に「葉の表裏ともに紫で、香気の良いものを佳品とし、梅雨の前後にすみやかに葉を摘み取れ」と述べています。

中国明代の李時珍の書いた『本草綱目』に紫蘇の由来が記されています。蘇とは、よみがえるで、性が舒暢(ゆるやか)で、気をめぐらし、血を和するものだから蘇という、とあり、紫蘇とは白蘇(エゴマのこと)と区別するため、色を表す字をつけたものといわれます。

紫蘇の葉を摘み指先で揉むと、濃い赤紫色の液汁が染み出してくると同時に、食欲をそそる清潔な香気が

漂ってきます。しかし、色はあっても香がなく青臭いものは野蘇(やそ)といって薬には用いられません。

・紫蘇という植物は、茎葉ともに濃い赤紫色で、しかも香気の甚だ強いものが本物の紫蘇です。中国の本草書『名医別録』に、「身体の中の冷えを温めてこれを気として発散し、心身ともによみがえらせる作用があり、ゆえに蘇と称する」「その色は紫で血分に入る」「血を和する」とあります。

・紫蘇は中国の中・南部の原産。我が国へは、奈良・平安時代に渡来し、各地で栽培・普及されつつ今日に至ります。半夏厚朴湯、藿香生気散、香蘇散、柴朴湯ほかの漢方処方に配剤される重要な生薬です。

・刺身のツマとして。ツマは刺身を引き立てるための飾りものだけではなく、すべて薬としての作用があります。

もし魚が傷んでいたり、細菌などがついていたりすると食中毒になるかもしれません。翌日、ツマを食べた人と残した人とでは大きな差がつきます。ツマはそれぞれが消化剤であり、抗酸化剤であり、解毒剤なのです。

 

効用

・魚毒・蟹毒・肉毒に紫蘇葉10gを濃く煎じて服用。葉を生食してもよい。また、ショウガの汁を飲む。

・胃腸が弱く、風邪の初期に、紫蘇の葉とショウガを一緒に服用すると効果的です。また、濃く煎じてうがいをすると、扁桃炎や去痰作用があります。

・憂うつな気分の時は、紫蘇を料理に使ったり、紫蘇葉茶を飲むと効果的です。

・刺身や蟹を食べるときは、紫蘇の葉を一緒に食べると、魚毒の予防になります。

・紫蘇の種子は、慢性の咳に良く効きます(三子養親湯:紫蘇子・白芥子・ラブ子各9.0)。

・紫蘇の茎は、安胎薬として使われます。妊娠時に、胎毒を消すドクダミと一緒に服用する良いでしょう。

・入浴に、茎葉を布袋に入れて用いる。発汗作用、排毒作用、ストレスの発散・順気作用があり、冷え症、リウマチ、神経痛に効果的です。

・奈須怇徳の『本朝医談』によれば、加藤清正は朝鮮出兵した際、部下のノイローゼ、ストレスなどのよる指揮の低下に香蘇散(香蘇散:香附子4.0;乾生姜・陳皮・蘇葉各2.0;甘草1.5紫蘇葉、陳皮、甘草、生姜、香附子)を用いて治したとあります。

 

紫蘇を食べる

・梅干し

紫蘇の葉にはアントシアンという色素があり、これは中性からアルカリ性で紫色の呈紫蘇は梅漬けに欠かすことのできないものです。

し、酸性あるいは空気中の酸素に合うと酸化されて赤紅色に変化します。

つまり、漬けると梅に含まれるクエン酸などの有機酸によって赤紅色に変わります。

梅をつける前に梅を干したり、シソをもむのは空気にさらし酸化させ、色を鮮明にするためです。ウメの実とシソの薬効を組み合わせ(消化吸収の促進、防腐作用と殺菌・解毒作用)や反応の巧みさなど、素晴らしい先人の知恵です。

各食材・調味料・薬味の四気・五味・効能

・梅は、酸味があり平性の性質がある。効能は、疲労回復、血液浄化、食欲増進、胃腸障害、老化防止、美容、情緒安定に効果。

・シソは、辛味があり身体を温める性質がある。効能は、身体の中の冷えを温めてこれを気として発散し、心身ともによみがえらせ、魚毒を解す。

・塩は、甘味と鹹味があり冷やす性質がある。効能は、脾胃を調和し、食べ物を消化し、食中毒を解す。

考察

梅干しは平性にて、五味は苦味以外の四味に配され、臓腑経脈は肝・脾・胃・肺・腎・大腸に帰入しています。効能は、邪を除き、熱を消し、鬱を開き、渇を潤し、胸膈の煩悶および酒毒を除き、咽喉の腫れ痛みや口瘡を癒やし、一切の食毒・魚毒を解す働きがあります。日本独特のもので生活の知恵から生まれた漬物といえます。

 

・紫蘇のふりかけ

シソの葉を陰干しにしてよく乾燥させ、粉末にする。これを炒りごまをすりつぶして混ぜ、薄い塩味にしてこれをご飯に振りかけて食べます。また、梅干しを漬けるときに出来る梅酢につけこみ、これを同様に乾燥させて粉にし、ゆかりを作ってふりかけにしてもよい。

 

・塩漬け

葉を塩漬けにしておいて、おにぎりに巻いたり、海苔巻きのようにお寿司にまいて使っても大変おいしく、食欲アップです。キャベツ・白菜・キュウリ・カブなどと組み合わせて塩漬けにすると、風味がましておいしい。

 

紫蘇・ジュース

材料 シソの葉300g、レモン3個(又はクエン酸30g)、純正ハチミツ1カップ半(又は氷砂糖150g)後に紅紫色が退色する。退色した葉を取り出し、新しい葉を入れる。これを繰り返し、終了作り方 2リットルの水を沸騰させ、その中へ適時紫蘇の葉を入れる。シソの葉は、数十秒

したらハチミツ(または氷砂糖)を溶かします(甘味は各自で合わせる)。冷えてからレモン

汁(またはクエン酸)を入れる(すっぱさは好みで加減する)。自然派シソ・ジュースの出来

上がり。冷蔵庫で1年程保存が出来ます。


・紫蘇種子のふりかけ

材料 シソの半熟種子、しょうゆ、みりん適量

作り方 種子は、完熟する前の、噛むとポリと割れる位の殻付き種子を採取し(9月中しょうゆとみりんを入れ、とろ火で数分間沸騰させ煮詰める。

旬より10月初旬)、よく水洗いをする。鍋に半熟の殻付き種子と種子の3分の1量の適当な入れ物に移して保存する。温かいご飯にかけて食べると、とっても良い香と味が楽しめます。

 

・紫蘇飯

シソの葉を細かく刻み、よく汁を絞り、それに天然塩を加え、菜飯のようにご飯と混ぜる。

とても美味しく、食欲が出ます。

本物の紫蘇は、エゴマに近縁の青紫蘇と混植すると先祖帰りをするので注意してください。シソの葉にも、葉緑素がいっぱい入っていますが、それにも増して紅紫の色素が色彩的に強く、緑色を覆うように隠してしまいます。この色素は、日が短くなって花が咲く頃になると褪色してきます。元禄九年稿成った宮崎安貞の『農業全書』に、「暑さにあへば、葉の色青くなる。青くならざる内に、早く(葉を)つむべし」と実検を記しています。

 

紫蘇の名の由来(繆文渭著『中国の民話』)

陰暦九月九日の菊の節句のことでした。

金持ちの息子たちが飲み屋で、蟹(かに)の食べくらべに興じていました。その季節の蟹は油がのっており、ミソもたっぷりあっておいしいのです。卓上にはすでに蟹のカラが山と積まれていました。

ちょうどその時、名医の華佗(かだ)が弟子をともなって店に入ってきました。華佗は蟹の食べくらべに夢中の若者たちをじっと眺めていましたが、つかつかと近づいて言いました。

 

「蟹は寒性の食物だ。食べ過ぎるとあとが怖いぞ!」

「おれたちの金で食べているんだ。余計な世話はやくなよ」

「食い過ぎると腹をこわす。命を落とすことだってあるんだ」

「うるさいなあ、おどかさんでくれよ。せっかくの蟹がまずくなるじゃないか。たとえ死んでも、おやじさんとは関係ないだろう」

酒がまわっている若者たちは聞く耳を持ちません。

「蟹はうまい、蟹を食べて死んだなんて聞いたことがあるかい?さあ、どんどん食えよ。うんと食って、あのおやじをうらやましがらせてやろうぜ」

若者たちが言うことを聞かないので、華佗は飲み屋のあるじに言いました。

「もうこれ以上出しなさんな。命にかかわるからな」

しかし、あるじは若者たちに沢山たべてもらってもうけを増やそうと考えていましたから、これも耳を傾けようとはしません。華佗は仕方なく、弟子を相手に酒を飲んでいました。

 

そのうちに夜がふけてきましたが、先ほどまではしゃいでいた若者たちがとつぜん腹痛を訴えだしたのです。ひどい痛み方で、冷や汗をだらだらとかく者、食卓の下で転げまわる者もいます。

「痛い、痛い。早く医者を呼んでくれ」

「こんな夜ふけに、どこへ言って医者をさがせというのだね」

飲み屋のあるじもすっかりあわててしまいました。

「どれ、わしが診てあげよう」

と華佗がいいました。若者たちが見上げると、先ほど蟹を食べすぎては

いけないと注意してくれた、あのおやじさんではありませんか。

「先生、どうかおたのみします。お金はいくらでも

払いますから」

「いや、金はいらん。だが、これからは年寄りの言うことはよく聞いて、あんな乱痴(らんち)気(き)騒ぎをすてはならんぞ」

華佗は弟子をともなうと町はずれの野原へ行き、紫色の草と茎と葉を摘んでもどり、それを煎じて若者たちに飲ませました。不思議なことに暫くすると、腹痛は次第にやわらいでいきました。

華佗は若者たちの手当てをしながら、

(この紫色の草にはまだ名が付いていない。煎じて病人に飲ませて楽になるのだから紫舒(ズスウ)と呼ぶことにしよう)

と考えていました。「舒」とは、気分がよくなると言う意味です。

華佗に助けられた若者たちは何度もお礼を言って帰って行きました。

「あぶないところだった。これからは金もうけのことばかり考えずに、人さまの命を大事にすることだね」

飲み屋のあるじは、しきりにうなずいたのでした。

弟子は華佗にたずねました。

「先生、あの紫色の葉が蟹の毒を消すということは、どの書物に乗っていたのですか?」

「書物に出ていたのでない。動物が食べているのを見て知ったのだよ」

 

ある年の夏、華佗が江南(揚子江下流の南岸一帯)の川辺で薬草を採集していたときのことでした。ふと見ると、カワウソが大きな魚を捕えて、長いことかかって呑みこんでいました。カワウソの腹の皮は今にも張りさけんばかりにふくれあがっていました。呑みこんだ魚が大きすぎて、苦しいのでしょう。水中にもぐったり、岸辺にはいあがったり、灸に暴れだしたりしています。やがて、カワウソは岸辺の草むらで、紫色の草を食べてから暫く横たわっていましたが、次第によくなっていったようすでした。

その一部始終を見ていた華佗は、次のように考えました。つまり、魚類は涼性だが、紫色の草は温性の植物である。この草を用いれば魚の毒を消すことができるのだ、と。

 

その後、華佗はその薬草を原料にして、丸薬や粉薬をつくりました。この薬草には、寒邪(悪寒・頭痛・発熱・身体痛・関節痛・腹痛・下痢などをおこす陰邪)を散らす、消化器を強める、肺の機能を活発にする、気のめぐりをよくする、腸の蠕動(消化器官が食物を下へ送る運動)を促す、せきを止める、痰をとかすなどの作用があることがわかり、多くの病人の治療に役立てました。

 

華佗が名づけた紫舒という薬草名ですが、なぜか、後世の人々は紫蘇(ヅスウ)と呼ぶようになりました。それは、「舒(スウ)」と「蘇(スウ)」の発音が似ているところから、なまってそうなったのかも知れません。