サンショウ
1、山椒
[気味]辛、温
[帰経]脾・胃・肺・腎
[主治]胃の働きの弱くなった消化不良や消化不良による胸苦しさ、みぞおちのつかえ、腹の冷え、腹部のガスの停滞、それに伴う腹痛に効果がある。また、肺を温め、胃を健やかし、腎陽(じんよう)を助ける。若芽は魚臭を消す(散寒燥湿・止痛・散肺寒・補腎火)。
山椒はからくうん也むししゃくじゅ 目をあきらかに歯をかたくなす(山椒は辛く温なり、虫積聚、目を明らかにし、歯を堅くする)
さんせうハすいしゆわうだんしょくむねに つかゆるをちし中をあたゝむ(山椒は水腫、黄疸、食胸につかえるを治し、中を温める)
さんせうはすハぶきしやくりよくとむる むねはらひえていたむにそよき(山椒はすわぶき(咳)しゃっくりをよく止める、胸や腹が冷え痛むに良い)
さんせうは気をよくくだすものぞかし むしをもころす身をかろくなす(山椒は気をよく下すものなり、虫をも殺し、身を軽くなす)
さんせうをとしひさしくもしょくするな のちはかならず気りょくへるもの(山椒を年久しくも食するな、後は必ず気力が減るもの)
(橋本竹二郎訳『和歌食物本草』)
辛味性健胃薬である。七味唐がらしの一味で胃液の分泌を盛んにする香辛料、蛔虫駆除の働きもあります。
源順(みなもとのしたごう)(平安時代中期)『和名抄』)は蜀椒を奈留波之(なるはじ)加美(かみ)、または不佐波之加美(ふさはじかみ)とよんでいます。正月に飲む酒に「屠蘇散」を入れて飲みますが、この中にもサンショウとセンキュウが入っています。一年病気知らずで、元気に過ごすことを祈念して飲みます。屠蘇散の初出は、一説には三国時代の名医・華佗の処方によるものと言われています。中国の唐の時代に日本にも伝えられ、平安時代、嵯峨天皇の弘仁年間に宮中のお正月の儀式として、四方拝(しほうはい)の後にお屠蘇を飲むようになったと言われています。時代がくだって一般庶民の間にも広まり、正月三が日や祝い事の日に、疫病邪気を払い、長寿幸福を得る儀式として広まりました。
・三月に新芽を摘んで、魚羹(あつもの)(魚・鳥の肉や野菜を入れた熱い吸い物)にちらして腥臭(なまぐさみ)を除く働きがあります。
・四・五月に青い実を採っても、また能く味を添える。あるいは、青い実を採取し、酒塩で漬け浸して収蔵すると、年を経ても腐敗しません。(また、米のとぎ汁を冷やし、白塩を加え)
(山椒) | (薬味に使う山椒の果皮) | (山椒の種子(椒目)) |
花椒
[気味]辛、熱
[帰経]肺・腎・脾・胃
[主治]寒証の胃腹の冷え・痛み・嘔吐・下痢・消化不良、肺寒の咳嗽、関節・筋肉の冷え・痛み・麻痺(散寒止痛・燥湿・解毒駆虫)。
・マーボー豆腐や担々麺などの四川料理には、花椒の痺れるような辛さと唐辛子のピリっとした辛さのハーモニーである麻婆味が基本であり、花椒は欠かせません。
・陰虚火旺には禁忌。妊婦、小児は避けるほうがよいです。
・生は少し毒性の油成分が揮発してしまうため調理は短時間で行う。
・種は椒目といい、気味は苦・寒で利尿作用がある。果皮と一緒には用いない。
・花椒塩 焦げない程度に炒った塩と同量の粉末にした花椒をまぜたものを花椒塩と呼び、中国各地で揚げ物に付けて食べるのに用いられています。花椒と塩を混ぜ合わせると、寒熱のバランスが良くなり、味も辛味・甘味・鹹味がミックスされます。また、双方ともに胃・肺・腎に作用するので、特に秋から冬にかけての薬味として最高の物といえます。
花椒 [気味]辛、熱 [帰経]肺・腎・脾・胃
塩 [気味]甘・鹹、寒 [帰経]胃・肺・腎 [主治]脾胃を調和し、食べ物を消化し、食中毒を解す。
(人見必大著『本朝食鑑』に「山椒は、塩を得て味が佳くなる。椒を食べて、誤って噎(む)せた場合は、塩を得て解するとよい。」と記載されています。)
3、冬山椒
[気味]苦・辛、温
[帰経]肺・腎・脾・胃
[主治]芳香健胃、駆風、殺虫薬で、やや麻酔性を帯びている。風寒湿邪による麻痺、
肺気上逆、四肢関節の赤い腫れと痛みを治す。
・山椒の実とチリメンジャコの佃煮
材料 チリメンジャコ、半熟の冬山椒(または山椒)の実、酒、しょうゆ、ミリン
作り方:
緑の色の半熟の青山椒の実を採り、流水で洗い、沸騰した湯に一つまみの塩を入れ、洗った山椒の実を入れ10分間茹でます。茹で上がったら、冷水に30分程さらしてアク抜きをして十分に水切りをする。
鍋に酒としょうゆを入れて煮たった所へちりめんじゃこを入れ、煮汁が無くなった頃に山椒の実とミリンを入れ、水分がなくなるまで弱火で煮つめる(水は使わない)。
・ちりめんじゃこは、甘味と鹹味があり身体を温める性質がある。効能は、気血を生じ、営衛を長じ、肌肉を滋し、筋骨を壮にし、臓腑・経脈に通じさせる。人体では脾胃の土精を滋養し、穀気を引き出し全身に行らせる。
各食材・調味料・薬味の四気・五味・効能
・山椒は、辛味があり温める性質がある。効能は、胃弱、消化不良、胸苦しさ、みぞおちのつかえ、腹の冷え、腹部のガスの停滞、腹痛に、温肺、健胃、補腎陽する。
・酒は、甘味、苦味と辛味があり、身体を温める性質がある。効能は、少量では神経を興奮させ、血液循環を増進させ、薬力の発揮を促進する。鳥魚・蔬菓の毒を消す。
・しょうゆは、鹹味と甘味があり少し冷やす性質で黒色です。効能は、一切の飲食および百薬の毒をも消す。
・ミリンは、甘味と辛味があり温める性質があります。効能は、食欲増進、腹中の冷えを除く。薬味の調和
を保つ。
考察
この佃煮は、炊きたてのご飯にのせて食べると食欲をそそぎます。
そのわけは、温性の働きがあり味のバランスもよく、食材のみで臓腑経脈への帰入は全てに行きわたり、
身体全体の気血を養い、五臓と胃の機能を助けるからです。
ただし、全体が温性に傾いているため、涼性の白菜の漬物やお茶を一緒に飲食するとよいです。
山椒は小粒でもぴりりと辛い」といわれていますが、サンショウは、とても小さな粒なのに食べるとその小さな粒に似合わずピリリと辛いということから転じて、「見かけや体は小さいけれど、気性や才能はなかなかで侮れない」という意味です。
古名をハジカミという。果が熟すると黒い光沢の種子をはじき出す。はじけ実の転訛である。黒色の種子を椒目(しょくもく)といい、気味は苦、寒で、主治は利尿作用があります。
・胃腸病、胃下垂症、胃拡張症に果皮2gを煎じて服用。山椒昆布か木の芽あえを食べていると回虫の予防になるともいいいます。
・ぬか味噌は、夏場になると腐敗しやすくなるが、サンショウの実(種子と果皮ともに使用)を一握り入れてかきまぜておくと腐敗しにくくなります。
・果皮を除いた種は黒い小さな粒で、ふつうは使われないのですが、地方によっては、目の薬といって「サンショウの実1日3粒3年食えば昼間でも星見える」「毎日4~5粒食べると目まいがなおる」などといわれ、粒はかまないで飲み込むのがよいとされています。
・入浴効果:サンショウには芳香性の強い精油成分が多く、また辛味成分があります。それらの成分を含む葉や果実を使って、浴槽の中に入れて温補効果を高めます。
冷え症、生理不順、寝汗、関節痛、耳なり、膀胱炎、腎虚、胃アトニー、胃痛、腸の中のガス、肩こり、腰痛、打ち身、ひび、あかぎれ、しもやけ、痔など、温めて全身の血行をよくして症状を緩和します。
芳香性の効果は、脳の働きや自律神経の調節をする働きもあります。