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薬草クラブ サンシュユ・山茱萸

サンシュユ・山茱萸(ミズキ科)Cornus officinalis SIEB、etZUCC

寄贈者名 1999,11唐招提寺

[気味]酸、微温
[帰経]肝・腎
[主治]滋養・強壮薬として、老化予防やめまい・耳鳴り・遺尿・尿意過多・腰や膝の痛み(補益肝腎・固経止血・斂汗固脱)

 

山茱萸は 腎虚(じんき)耳鳴 腰膝の いたみをとめて 精をますなり

山茱萸は さねをのぞきて 酒に入れ 煮たるをあけて 焙(あやり)用(もちゆ) 

(橋本竹二郎訳『新編和歌能毒』)

 

那須大八郎と鶴富姫の悲しい恋の物語・宮崎県民謡「ひえつき節」“庭のさんしゅの木 鳴る鈴かけてよ・・・那須の大八鶴富おいてヨ ”に出ています。

中国原産のミズキ科の落葉高木で、漢字では山茱萸と書き、そのままの音読みでサンシュユと和名が付けられました。日本に渡来したのは享保七年(1722)「朝鮮国より山茱萸・黄苓」が渡来した(小石川植物園草木目録付記)という記録と、小石川芥川御預薬園に「朝鮮産山茱萸八粒を下種」の記載が残っています。以来幕府の御薬園を中心にして日本各地へ広がり、薬用または鑑賞のために栽培されています。

春の一番に咲く薬木で、別名を春(はる)黄金(こがね)花(ばな)と呼び、静まりかえった薬草苑に黄金の光を散りばめ、他の薬草に春を知らせているようです。ちなみに、秋の果実は真っ赤に色味、秋(あき)珊瑚(さんご)とも呼ばれます。

漢方では、果実の種子を除き、果肉を乾燥した物が“山茱萸”とよび、滋養・強壮薬として、老化予防やめまい・耳鳴り・遺尿・尿意過多・腰や膝の痛みなどに応用します。漢方処方の八(はち)味(み)丸(がん)にも配合されています。

 

古書には「腎気を補い、陽道を興し、陰茎を堅くし、精髄を添え、老人の尿不節を止どめ、面上の瘡を治し、よく汗を出させ、月水(月経)の定まらざるを止どむ」と記されています。これらは皆、老化現象を改善する働きです。

民間でも、滋養・強壮薬として、耳鳴り・めまい・頻尿・老人の夜尿症・インポテンツ・遺精などに「山茱萸」を煎じて服用します。また、山茱萸酒を作り服用するのもよいのではないか。山茱萸酒は古書に「神経のいらだちを鎮め、性欲を回復させ、小便の頻尿や腰痛などを治す」と述べられています。

 

「山茱萸」はウメと並んで数少ない酸味漢薬の代表選手です。他にも五味子、酸棗仁、木瓜など、ほんの数種類あるだけです。“五行説”では、薬味の“酸”は肝を補い、腎を助け、肺を益する働きを意味するので、現代人にとって特に大切な薬といえます。

・疲労回復の薬用酒の作り方 赤く熟した果実をとり、熱湯にしばらく浸したのち、半乾きになったら種子をとり出して、果肉だけを日干しにします。乾燥した果肉200g、グラニュー糖200gをホワイトリカー1.8ℓに漬け、2~3ヶ月後に布でこして別の瓶に移し、服用します。