ゲンノショウコ Geranium thunbergii
本州、四国、九州に見られる多年草で、花の色は東日本では白色、西日本では紅色、東海地方は西日本の系列になるのか、所によって紅・白の入り交じる場所もあります。土用の丑の日の頃に葉茎を採取し、日干し乾燥させてから保存します。葉にもっとも成分が多いので、傷つけないように調整をしてください。
昔から民間薬として愛されてきた貴重な薬草です(ゲンノショウコの葉茎、特に葉にはタンニンが多く含まれていますが、開花期の6~8月ごろには、特に20%の高い値を示します)。
ゲンノショウコは「現の証拠」で、下痢をした時に煎じて飲むとすぐに効きめが現れるので、この名前がついたといわれています。
和名のミコシグサ(神輿草)、イシャイラズ、タチマチグサなどは江戸時代ごろからの名です。タチマチグサとは、飲めばたちまち下痢が止まるの意味でしょう。イシャイラズは、飲めば直ちに下痢が止まり、医者に行く必要もない、という意味でしょうか。また、熟した果実が裂けた状態が、みこしの屋根に似ていることからミコシグサの名があります。
下痢のときは濃く煎じ、便秘には熱湯を注いだものを直ぐに服用し、これを治す便利な薬草です。
貝原益軒『大和本草(1709)』に「茎葉ともに陰干にして末となし湯にて服す能く痢を治す赤痢に尤も可也」そして中国文献に無いと言う。佐渡志に「現ノ証拠、往年、因幡(いなば)・伯耆(ほうき)の二州に痢疾流行せしとき、国(こく)守(しゅ)より令ありて、雇医の薬を用いず、この草一味を味噌汁にて煎じて飲ましたらよく効あり。」、文政五(1822)年那須恒徳『本朝医談』に「茎葉花共に陰乾、末として痢を治す赤痢尤も可なり。痢病は唐人より日本人能く療治を覚えたり」と日本人によって開発された薬品だと記されています。
薬効
主成分はタンニン酸で、これは、腸をひきしめる働きと防腐作用による下痢止めの働きがあります。その他、末梢血管の強化作用をもつケルセチン、血圧を下げるヒヨリン、解毒作用の強いコハク酸などが含まれています。
・下痢の場合は、ゲンノショウコの粉末か10~30gを30分以上煎じた濃い煎汁を服用する。胃潰瘍や胃ガンの手術のあと、胃液の分泌が足りずに下痢になることも多いのです。
・小便の出が悪いときや便通のよくないときには熱湯を注いだら直ぐに飲むようにします。
・便秘・のぼせ・にきび・胃腸虚弱には茶剤として熱湯を注ぎ服用。
・腫れ物は煎汁で洗う。腫れ物や切り傷には濃い煎じ汁をつけると炎症が引き、特に切り傷などには痕を残さず治ります。
・普段から胃腸の弱い人は決明子(エビスグサ)と一緒に服用するとよいでしょう。
・口内炎・歯痛にはうがい。
・あせも・ただれに薬湯として用いる。