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薬草クラブ クワ

クワ(クワ科)Morus bombycis Koidz.

 

 

・桑椹(そうじん)(クワの成熟した集合果)

[気味]甘、寒

[帰経]心・肝・腎

[主治]陰血不足の目まい・耳鳴り・病後の虚弱・不眠・目がかすむ・白髪・消渇、便秘(滋陰補血・生発烏髮、生津、潤腸通便)。

 

・桑白皮(そうはくひ)(6~7月に採取して天日に乾燥した桑の根の皮)

[気味]甘・辛、寒

[帰経]肺

[主治]肺熱の咳喘・喀血や肺気壅実の水腫脹満・小便不利(瀉肺平喘、行水消腫)。

 

・桑葉(晩秋に採取した物がよい)

[気味]苦・甘、寒

[帰経]肺・肝

[主治]外感風熱の発熱・軽い咳・頭痛・咽痛、風熱・肝火上炎の目赤・涙。肝陰不足による目のかすみ・痒み(疏散風熱、清肺潤燥・止咳、平肝陽、明目)。

 

・桑枝

[気味]苦、平

[帰経]肝

[主治]風湿痺痛、四肢の痙攣、運動障害、浮腫(特に下腿)(袪風湿・通経絡・利関節、行水退腫)。

 

根の皮を桑白皮(そうはくひ)、葉は桑葉(そうよう)、枝は桑枝(そうし)、果実は桑椹(そうじん)といい、桑は全体が薬になるので、「諸仏菩薩の木」と呼ばれ、「不老長寿の薬」といわれていました。桑の木で造った箸を使うと長生きするもと言われています。

桑の名は「食葉」あるいは「蚕葉」が転訛したものらしく、『日本書紀』の持統天皇の項に、「桑紵梨栗蕪菁等ノ草木ヲ殖ウルヲ勧メルコトヲ天下ニ詔シテ令ス」(桑・苧(からむし)・梨・栗・蕪菁(あおな)など植えるのを奨励するよう、全国に命令する)とあるように、古くから利用してきたものの一つです。

 

桑にまつわる伝説や信仰が各地に伝わっており、雨乞い、豊穣、妊娠に、雷鳴時に「くわばら桑原」と呪文を唱えるなどその良い例でしょう。これらは、人間と桑の木とが、いかに多く関わりを持ったかの証でもあります。

 

群馬県富岡市の貫前(ぬきさき)神社では、毎年正月三日に水的(みずまと)の神事があります。桑の木で作った弓に蓬(よもぎ)の矢をつがえて的を射、吉凶を占うと言います。恐らく、中国の古い習わしの、男児出生に桑弧(そうこ)蓬矢(ほうし)(桑の木で作った弓とよもぎの矢)をもって、天地四方を射、将来四方に雄飛するようにと、祝ったと言う故事が日本の昔に伝えられて残っているのかもしれません。

 

足乳(たらち)根(ね)の母のその業(なり)の桑すらに願へば衣(きぬ)に着るといふものを(『万葉集』第7巻1357) 

桑の実や 花なき蝶の 世捨て酒(芭蕉)

 

6~7月に採取して天日に乾燥した桑の根の皮は「桑白皮」と呼ばれる生薬。かすかに特異な味と臭気がある。桑白皮は桑東南根白皮(そうとうなんこんはくひ)ともいわれ、根が東南の方向に伸びたものを上品といい、利尿・消炎・血圧降下・血統降下作用があります。根にはフラボノイドのモルシン、シクロモルシン、クワノンなどが含まれており、根の煎液を咳止めに用いられてきました。桑白皮を配合する漢方処方に清肺湯があり、これは咳が出て痰の多い症状、たとえば気管支炎や気管支拡張症などに使われます。

 

葉を陰干しにしたものは「桑葉」といって茶剤に使う。葉にはルチンが含まれており、抗糖尿、抗高血圧作用があり、口の渇き・痰や咳・頭痛・目の充血などを取るので茶剤として使われます。この桑葉の煎汁は江戸時代の遊郭で、陰部の毛はえ薬として使われていました。

 

桑椹は肝臓・腎臓の働きを高めるので、強請・強壮・疲労回復に用いられます。「腎陰虚や腎虚による病にも、桑実、酒で煮つめて飲ませよ」(江戸時代の『いろは救民薬の歌』)とあり、元気がなく、とくに性欲の衰えた人には抜群のようです。

「飲酒して大いに酔い、解せざれば大豆の汁・葛花・桑椹子の汁は皆可なり。」『食経』)とあり、酒毒をとるのにも有効です。

 

また田舎では桑酒が冷え症や不眠症に効くといって自家製を競ったものです。つくり方は、成熟した桑の実を採取し、焼酎1.8ℓに桑の実600gと砂糖大さじ1杯くらいの割合で入れ、二ヶ月ほど密閉しておくだけでよいです。就寝前に飲むと、強壮の効果もあるといわれます。

 

桑枝は神経痛や関節炎、リウマチなどに用います。

 

また、桑に生えるキクラゲ(桑耳(そうじ))は婦人薬の良薬で、血の道に良く活血や充血・出血などにも効があるとされています。

 

蚕の糞を蚕砂(さんしゃ)と呼び、神経痛や中風の予防に、打ち身・骨折や頭のフケ取りに利用されます。

 

効用

・咳止め(喘息・咳)、消炎、利尿、水腫には桑白皮5~10gを水100mlで煎じ、1日2~3回に分服。

・壮年期の脱毛には、桑の生葉300gに水2ℓを加えとろ火で20~30分間煎じ、その煎液で1日2回頭を洗う。1ヶ月続ける。

・高血圧・動脈硬化・強壮・疲労回復に葉を茶剤にまたクワ茶、桑実酒を作って服用する。

・動脈硬化・中風(丸薬) クワの葉・桑白皮と黒ゴマを少し炒って粉末とし、ハチミツで練った丸薬を服用する。(脳溢血には、クワの細いひげ根に効果があるという)

・高血圧・神経痛(クワの葉)

お茶代りに飲むと、補血・強壮剤として中風・高血圧・動脈硬化・脳溢血・淋病・神経痛に効果があります。ひげ根を煎じて服用するのもよい。

・クワ茶として葉と小枝を焙じて普通のお茶のように服用。茶剤は不老長寿の茶として養蚕地では珍重。

・疲労回復・強壮には桑実酒、生果実500g~1kg・グラニュー糖200g・ホワイトリカー1.8ℓを用い、2~3ヶ月密封。寝る前に20mlを服用。高血圧の予防や治療に、咳にもよい。

・冷え症・低血圧(果実酒)1ヶ月以上漬けた果実酒もしくは乾燥果実を煎じて服用すれば滋養強壮、利尿、鎮咳剤となり、神経衰弱、運動麻痺、知覚マヒ、酒毒、冷え症、不眠症、低血圧、性欲減退に効果があります。

・咳・腎臓病・便秘(桑白皮・桑椹)1日5~10gを煎じて服用すれば、消炎・利尿・鎮咳・袪痰・緩下剤として百日咳・呼吸困難・喘息・咳・痰・肺結核・肺水腫・肺気腫・腎臓病・尿量減少・便秘・のぼせ・脳溢血に用いられます。

・おなかのガス・体臭(クワ葉)粉末を服用すれば、駆風薬となり、体臭を減少させ、寝汗にもよい。

・抜け毛止め(葉) 煎液を頭部によくすり込む。

・ふけとり(灰) 桑の枝を焼いた灰に熱湯を注いだ上澄み液で洗髪。

 

桑を食べる

・生で、粉末で(若葉・新芽):生のまま天ぷらにするほか、茹でて和え物、汁の実。若葉や生長した葉の乾燥粉末をお好み焼きや天ぷらの衣に混ぜるとクワの効果が得られます。

・クワ茶(葉・枝):葉を蒸して乾燥したものをクワ茶。若い枝を細かく刻み少し焦げるくらいに炒ってお茶として飲むと美味しい。

・桑葉の若葉はゆでてお浸しに。

・ジャム、焼酎漬け:熟した果実は生食するほかにジャム、焼酎漬けにして利用します。

・果実酒(桑椹酒):果実と米麹を混ぜて発酵させて作った桑椹酒は、古来より不老長寿の薬として愛用されました。桑の太い根の白皮の煎液を煮つめ、米麹を入れてクワ酒を作るのもよいです。

・クワに実味噌 桑の実を軟らかく煮てすりつぶし、それと同量の黒練りゴマ、赤味噌、黒砂糖を加えて練り上げる。食パンの両面に塗り、フライパンでカラッとなるまで焼き上げると美味しい。