栗 Castanea crenata Sieb. et Zucc. (ブナ科 クリ属)
栗
[気味]甘・鹹、温
[帰経]脾・胃・腎
[主治]補腎の代表果実。腸胃を丈夫にし、腎気を補い、食欲不振、疲れ、下痢、足腰のだるさ、咳、頻尿、夜尿。多く食すると腸胃を損う(養胃健脾・補腎強筋・活血止血・止咳化痰・健脳)。
かち栗はあまく平にてどくもなし ちをめぐらしてひゐをおぎなふ(かち栗は甘く平にて毒もなし、血をめぐらして冷えを補う)
かちくりを屋ハらかににて百ひやうに すこしづゝくへしんやくぞかし(かち栗を柔らかいに煮て百病に、少しづつ食え、腎薬ぞかし)
かちくりをきずいへかねはしょくすへし 又はこにしてつけよいゆべし(かち栗を傷癒えかねは食すべし、又、粉にして付けると良い)
栗こそはあぢしハはゆくうんのもの じんををぎなひあしつよくなす(栗の味は鹹く温のもの、腎気を補い足強くする)
くりはたた胃のふあつくし気をもます 生にてくへばほねいたみとむ(くりは胃の腑を強くし気を益し、生にて食べると骨痛が止む)
くりをただ日にほしさらししょくすれば 気をくだすなり虚をもをぎなふ(くりを日にさらして食すると、気を下すなり虚をも補う)
くりこそおほくしょくすなきをふさぐ じんきょのこしのいたみをもとむ(くりを多く食すると気を塞ぐ、腎虚の腰痛をとめる)
(江戸時代の食物本草書『和歌食物本草』)
三栗(みつくり)の那賀(なか)に向へる曝(さらし)井(ゐ)の絶えず通(かよ)はむそこに妻もが(万葉集 巻91―745)
(那賀の村里のすぐ向かいにある曝井の水が絶えず湧き出すように、絶え間なく通って行きたいものです。その場所に妻がいてくれたらこの上なくよいものだがね。三栗は栗のイガの中に実が三つ入っている物をいい、その真ん中のクリが「中」、つまり「那賀」にかかっています。)
野生の物は堅果(ナッツ)が小さく、シバグリなどと呼び、この野生のクリを改良し、栽培品種が作り出され、有名な丹波のタンバグリなどが作り出されました。中国には別種の甘栗にするシナグリがあります。
名前の由来は、平安時代に出た国語辞書『和名抄(わみょうしょう)』(932)には、「久利」の和名に「栗子」の漢字が当てていますが、栗子とか栗は、中国の甘栗の漢名でありました。クリの語源は、黒い実、黒実、これがクリになったと言われています。栗の中国音はリです。
イガが茶色になると四つに裂けて、太陽に照らされて光り輝く三つ栗が顔をのぞかせますが、私たちが食べている栗は、じつは種の部分で、ほかの果物であれば、普通は食べずに捨てる種が、栗のもっともおいしいところなのです。栗の実はどこかというと、渋皮と鬼皮と呼ばれている固い殻の部分をさします。“皮”と名がついていても、栗の実です。そして、栗を包んでいる一番外側のイガは栗の皮なのです。ちなみに、通常ひとつの栗には3つの実が入っています。外側はクリーム色して厚く、かたい丈夫な果皮で、これを破ると、種皮である渋皮にくるまった1個の種子があらわれます。
お正月料理に「かち栗いり黒豆」が添えられますが、かち栗は食物本草書『和歌食物本草』に「かち栗を柔らかいに煮て百病に、少しずつ食え、腎薬となる」と、黒豆も同書に「黒豆を塩にて煮しめ常に食え、腎を補う薬である」と同じく腎の薬と書かれており、これを年の初めに食べると、老化予防となり不老長寿の薬となるのではと考えます。
『医心方』では「栗の実は腸や胃を丈夫にし、腎臓の働きを助けるもの」とされています。
そのため「栗の木の下で栗を食べると、脚の弱い人が起きて歩けるようになる」とまで書かれています。
現代人に不足している人間に必要不可欠な微量要素の亜鉛が豊富です。亜鉛が不足すると味覚障害・生殖機能の減退・肌荒れ・抜け毛等の症状がでるとされてます。最近わかったことで、渋皮にはポリフェノールの一種であるタンニン・プロアントシアニジンを多く含み、この物質は体の活性酸素を取り除きます。ガンに効くとか?
その1、栗を熱湯で10分間茹でます。中の実が柔らかくなります。茹でたクリを、温かい間に絹糸に通して天日乾燥します。完全に乾いた後はカビが付かないように保存します。皮をむいた状態でも、そのまま保存しても構いません。
その2、栗を天日乾燥し、その間に焦げが栗の皮に着くくらいに炒ります。これを、中のクリが縮んで音がするくらいまで天日乾燥します。皮をむいても、そのままでも保存可能です。
とても堅い栗が出来ます。口にほおばっていると、何ともいえない甘味が味わえます。その2の方が美味しくなります。
各食材・調味料・薬味の四気・五味・効能
・栗は、甘味と鹹味があり身体を温める。効能は、補腎の代表果実。腸胃を丈夫にし、腎気を補い、食欲不振、疲れ、下痢、足腰のだるさ、咳、頻尿、夜尿。
・黒豆は、甘味があり平性である。効能は、腎臓病。血を活し、排尿をよくし、気分をおだやかにし、諸々の風熱を除き、一切の毒を解する。
考察 温性のおかずです。お正月料理に「かち栗いり黒豆」が添えられますが、かち栗は食物本草書『和歌食物本草』に「かち栗を柔らかいに煮て百病に、少しずつ食え、腎薬となる」と、黒豆も同書に「黒豆を塩にて煮しめ常に食え、腎を補う薬である」と同じく腎の薬と書かれており、これを年の初めに食べると、老化予防となり不老長寿の薬となるのではと考えます。
(かち栗) | (黒豆のかち栗入り) |