クチナシ・山梔子(アカネ科)Gardenia jasminoides Ellis var.jasminoides
寄贈者名 唐招提寺・1996,4 1999,11 奈良県橿原市近郊より実の大きいものを撰抜、実生苗とする。
山梔子
[気味]苦・寒
[帰経]心・肺・肝・胃・三焦
[主治]熱を去り、胸中のもだえ苦しみを除き、或いは心中の痛みを鎮め。又はのどの塞がりを開き又よく不眠を治す(清熱瀉火・除煩、清熱利湿、清熱凉血・止血、清熱解毒)。
果実は天平の時代から布を黄色に染めるのとして用いられ、一般の木の実は熟すと口を開くのですがクチナシは口を開かないので「口無し」という。花言葉は“沈黙”。面白いことに、囲碁盤や将棋盤の脚はこの果実を形どっており「口を出さない」「口をきかない」ということによるものとのこと。
耳なしの山のくちなし得(え)てしがな思ひの色の下染(したぞめ)にせむ(『古今和歌集』一〇二六)よみ人知らず
熟した果熟を押し潰すと濃朱色の果汁が滲(し)み出て指先が黄色になり、これを衣に付けると鮮やかな山吹色(やまぶきいろ)に染まります。口が無いから話さない、聞こえないから耳無、誰にも知られず丁度良い、密かに想いを寄せる私の心も知られずに済む、せめて恋の下染めにしよう。
クチナシの実は梔子と呼ぶ生薬です。細長く萎びた感じのするのが水梔子(すいしし)、丸味を帯び充実感は、山梔子(さんしし)として区別。日本産のものは後者に属します。枝先に着く果実は、ひと霜下りたところで丁寧に摘み採り、水洗後ざるに広げて熱湯を掛け、乾燥保存。緩下薬で、また天然の安全な黄色染料となります。
古書にクチナシ(山梔子)は、「熱を去り、胸中のもだえ苦しみを除き、心中の痛みを鎮め、のどの塞がりを開き、不眠を治す。」とあり、消炎・利尿・止血・鎮静の効能があります。打撲症には実を粉にしてうどん粉とまぜ、これを卵白でねって湿布するとよく効きます。
昔は黄疸の特効薬とされ、黄疸が早く治るようにと、子供が生まれるとクチナシで染めた萌(も)え黄(ぎ)の産着(うぶぎ)をつけて着せ、丈夫な赤ん坊に育って欲しいとの願いがこめられたようです。
晩秋の色付いた頃に採集し、熱湯に通して天日乾燥して保存し、ご飯やお粥に炊き込み、栗きんとんやピラフ、沢庵漬け、餅などの天然の安全な黄色の色着けに利用すると良いでしょう。
・黄疸・吐血・充血・フケ症 クチナシ5~10gを刻んで煎服。
・扁桃腺炎・のど風邪・口内の荒れ・歯肉の腫れにクチナシ20個をヤカン一杯の水でトロ火で約一時間煮る。ウイスキー色になったら出来上がり(冷蔵庫で保存可能)。始末に終えない喉の不快症状はみるみる良くなる。(うがいと併用すると良い)
・打ち身・捻挫 クチナシの粉大さじ2杯、小麦粉同量に対し、卵白小1個を混ぜ合わせると、マヨネーズのようになめらかになります。これを布、又は紙にのばし、その上にガーゼをのせ、患部に貼ります。乾くので、油紙をして包帯します。熱のある時は1日2回くらい換えます。うっ血があると真っ黒に出てきて、後遺症が残らず治ります。黒いのがとれるまで湿布を続けます。
いつも痛くて歩くのが不自由であったが、クチナシの湿布で、何十年も前の怪我が真っ黒になって出てきました。痛みが取れ、うっ血も治りました。
急性のものや突き指、捻挫などは、2日も貼っておれば黒く出て来て早く治ります。
・膝の水がたまって痛む クチナシ湿布を膝にすると共に、土踏まずにヒマの種をすりつぶして小麦粉と酢を混ぜ、和紙か布にのばして貼っておくと水がとれ、腫れが引きます。
・消炎 腫れて熱を持ち、赤くなっている色々な腫れ物に、内服・外用共に用います。内服には、乾燥した実5~8gを1日量にし、煎じて飲むか、1~2gを黒焼きにして飲みます。外用には、実を粉にして、つなぎに等量の小麦粉を加え、酢で練って貼る。
・クチナシ酒 クチナシgを焼酎750mlに入れ2~3ヶ月放置する。眠れない人の鎮静剤として20~30mlを寝る前に服用(飲みにくい場合は蜂蜜や砂糖を使用)。
・煎汁を飯に炊き込んだ「梔子飯」などもお正月にふさわしい健康作りの食べ物です。ご飯やお粥に炊き込んだり、ピラフや沢庵漬けなどの食品の色着けに利用すると良い。
・コリコリ美味しい(花) 花びらはそのまま天ぷらに。さっと茹でて酢の物はぬめりが出て美味しく、熟眠できる。花のゼリー固めや、生あるいは湯通しでサラダもコリコリした歯触りが楽しい。米とアズキをよく煮てから、山梔子の花と砂糖を入れた粥も美味い。花茶にしてもジャスミンに似た香りが楽しめる。
・中国では梔子窩頭という梔子まんじゅう(梔子・卵・きな粉などから作る)があり、風邪による喉の痛みや発熱に、また胸やけや肝炎、特に黄疸のある人にはよく食されるといいます。