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薬草クラブ

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薬草クラブ クズ

クズ 葛根(根)、葛花(かっか)(花)Pueraria thunbergiana Benth

 

 

葛根

[気味]甘・辛、涼

[帰経]脾・胃

[主治]頭痛、発熱、頸すじや背中の彎曲(血糖降下、冠状動脈の流血量を増加、血液循環を良くする、解熱(解肌退熱・透疹・生津止渇・昇陽止瀉)。

 

葛粉

[気味]甘、平

[帰経]脾・胃

[主治]熱を除き、煩を去り、胃を開き、渇を止め、便を利し、酒毒および諸毒を解す。つまりこれは足陽明経の薬であり、兼ねて脾経に入る。

 

葛花

[気味]甘、平

[帰経]脾・胃

[主治]二日酔い止め、酒毒を解す妙薬(醒胃止渇・解酒毒)

 

クズは、北海道・本州・四国・九州の山野に普通に見られる多年生の蔓草です。地下に太くて大きい根があり、春になると株根から蔓茎を出し、大きく広い三小葉を広げながら分枝、葉を着けた節のところが地面に着くとそこから根を出し、土地を引締め表土の流出を防ぎつつ、地表面を覆い尽くしながら旺盛に繁茂します。その最盛期の蔓の先端は、一日に36cm、年間で30から50mも伸長します。

クズはマメ科植物ですから空中窒素を固定するので地力のない痩せた土地でも良く育ちます。そして秋から冬になって土地部の葉や茎(蔓)が寒さに晒(さら)されると、それまでに光合成によって生産された同化産物を一夜にして根に転送、これを貯蔵することによって肥大させます。この肥大根が漢方薬葛根湯(風治散)原料の「葛根」です。

そして「葛根」の貯蔵澱粉を取り出したものが「葛粉」です。葛根は、血糖効果作用、脳・冠動脈の血流量をまし、血液循環を良くする作用、鎮痙作用、解熱作用などが実験的に確認され、口渇を止める、酒の酔いをさます、解熱する、頭痛・歯痛・肩こりを治すなど幅広く応用されています。

 

葛粉にもほぼ同じような効能があり、風邪のときに飲む「葛湯(くずゆ)」は、身体を温め、肩や首筋のしこりを取り除きます。葛粉は「ゴマ豆腐」「葛きり」「葛餅」にし、和菓子の製造に欠くことのできない原料として重用されます。近年はトウモロコシやジャガイモ澱粉を加工し「本葛」とか「吉野葛」とか称して市販されています。やはり葛根から採った本物のクズ澱粉でなければ効用は期待できません。お買い求めの際は表示を確かめて下さい。しかし本物の入手は、困難を極めます。やはり寒中に葛根を掘り、砕き、寒晒し水飛(すいひ)し澱粉を採る手作り葛粉を造ってみては如何でしょうか。

 

葛の花 水に引きずる 嵐かな  一茶

山冷えや 葛の根を掘る国栖の奥   佐久間龍花

 

クズは大和の国の国栖(くず)の人が葛粉を作り、売りに来た事からクズ(葛)と呼ばれるようになったといわれます。

古書に、「渇を止め、津を生じ、腠を開き、汗を発し、肌を解し、脾胃虚弱者の排瀉、傷寒中風、陽明頭痛、血痢、温虐、陽風、痘疹を治す」とあり、発汗、解熱、鎮痙薬として、熱性病、感冒、首筋や背肩の筋肉のこりなどに応用されます。

また、「葛根に其用四あり、一に渇を止め、二に酒を解し、三に邪を発散し、四に瘡疹の出で難きを発す」とあり、諸薬の毒を解する奇効があるとし、昔はオールマイテイーの薬で、葛根湯医者がいました。

 

葛花は二日酔い、その他酒毒を解す妙薬です。

民間では、葛粉からクズ湯を作り、風邪の初期の寒気や熱を取り、咽の渇きや下痢などに使用します。クズの青汁は切り傷に外用したり糖尿病にも用います。

葛粉は根を洗い、外皮を除き、すりおろして粥状にし、これを綿布でこす。放置して上澄み液を捨て、これを何度か繰り返し、最後に残った沈殿物を収穫します。薬用には、白色の綺麗なものより灰色を帯びたものが良いです。

 

薬理

葛根のすべてのフラボンは冠状動脈の流血量を増加させ、心筋の酸素消費量を低下させる。脳の血管にある程度の拡張作用があり、脳下垂体後葉のホルモンが引き起こす急性心筋虚血症に対して保護作用があり、さらに脳の血管と外周の血管に対して拡張作用があります。これは、葛根が高血圧および肢体麻痺を緩めることができる原因のひとつです。動物実験では、痙攣の解除、血糖の降下、解熱などの作用があります。

 

効用

・二日酔いに:乾燥したクズの花(葛花)3~5gを300㏄の水で煎じ、煮立ったら火を止め、冷めてから飲む

・かぜのひき始めに:くず湯として熱いものを飲む

・高血圧、興奮、煩燥、頭痛、口の乾き、肩や背の曲がりなどの症状をともなう:生の葛根15~18g、鈎藤(釣藤鈎)6~10gを水で煎じ、1日2回に分けて服用する。

・狭心症、心臓の悶痛及びそれによる肩や背中の痛み:生の葛根15~18g、丹参18g、茯苓10g、甘草6g、を水で煎じて、1日2回に分けて服用する。

・慢性鼻たけ、前額痛、鼻づまり:粉葛根12g、辛夷3g、桂枝3g、桔梗6g、白芷6gを水で煎じて服用する。

・急性腸炎、下痢、煩熱口渇:むし焼きにした葛根12g、黄連3g、黄芩6g、生甘草5gを水で煎じて服用する。

・突発性耳聾:葛根10~15g、甘草3gを水で煎じて分けて服用する。

 

クズを食べる

・若芽は、塩でもみ、細かく刻んでゆで、和え物・酢の物にする。クズの若葉の天ぷらもおつなものである。

・漬け物(花・蕾):熱湯にサッとくぐらせ、甘酢、三倍酢、芥子和えなどにするか、かき揚げにする。塩漬けもよい。酢漬けは色も香りもよくなる。

・クズの花ご飯:房から外した花を熱湯で30秒ほど茹で、梅酢に漬ける。クズの新芽10cmと若葉を塩茹でし、刻んで温かいご飯に混ぜ、食べる直前に梅酢に漬けた花を散らす。

・きんとん(塊根):蒸して裏ごしすれば美味しいきんとん。薄く広げればクズチップ、棒状にしてチョコレートコーテイチングすれば高級なお菓子となる。

・クズの酵母、花酒、花酢:花を20ℓの容器に半分以上入れ、軽く押さえて、容器の外側に量の印をつける。これに砂糖1~2kgを入れ、さらに水を印の所まで入れる。このまま放置すると赤い液体になる。このクズ酵母液は少し弱いので少しイースト菌を足せばふっくらしたパンが焼ける。クズ酵母液はしだいに美味しい酒になる。花酒ゼリーもきれい。永く置けばクズ酢になり、クズの香りのする寿司ができる。

・クズの花の乾燥粉末を蜂蜜で5mm大の丸薬にして常服すると黄疸、肝炎、肝硬変の改善薬。

・新芽茶:新芽10cmを煎じて服用すると養毛剤となり黒髪となる。

・健康飲料に 水洗いした生の根を約100g、小さく刻んでミキサーに入れ、水を加えて砕いたあと、繊維質が沈殿したら、上澄み液を別の容器へ移し、これを1週間分として、朝夕2回、食前に飲む。飲み残しは冷蔵庫に保存しておくこと。