クサギ(Clerodendrum trichotomum Thunb,)
正眼寺住職の山川宗玄老師著『無心の一歩をあゆむ』には、次のように記載されています。「クサギは虫も鳥も寄りつかない強い匂いのある木ですが、正眼寺の僧堂ではこの葉を干して冬の保存食としている。そのお心は“ 他の生き物の生存を脅かすのはできるだけ避けておきたい”」。
若葉を茹でて水にひたし、アク抜きをしてからひたし物にし、乾燥させて保存し、必要時に水で戻して汁の実に使われます。
葉には独特な異臭があることから、臭木の和名がつけられました。漢名は臭梧桐(しゅうごとう)です。
初秋の白と赤色の花、晩秋のブローチのような赤と藍色の実、そして葉の悪臭と花の甘い香り。それぞれ独創性をもつクサギはとても興味深い植物です。
葉は、煎液をはれ物や痔の患部に当て、リウマチや高血圧、下痢には煎じた液を服用します。
藍色の果実は「常山の実」とよばれて染料になり、布を美しい水色に染め上げます。
落葉のこの頃の雑木林のなかで、赤い5枚の萼の中心に藍色の実を見つけた場合、それは大変ラッキーなことです。素敵な自然との類いまれな出会いです。