キハダ・黄柏(おうばく)(ミカン科)Phellodemdron amurense Ruprecht.
寄贈者名 唐招提寺・1999・富山県大岩産後代
黄柏
[気味]苦、寒
[帰経]腎・胆・膀胱
[主治]細菌性腸炎、腸内異常発酵、急性胃炎(清熱燥湿・清熱瀉火・清熱解毒)
・急性・慢性胃腸病、腹痛、胃アトニー症、腸内異常発酵、細菌性下利、細菌性腸炎、食欲不振、消化不良、二日酔い、黄疸、腎臓炎、膀胱炎、子宮出血、帯下には黄柏末3~5gを三回に分服。
・急性胃炎、十二指腸潰瘍に黄柏5gを煎服。
・口内炎に煎じ汁でうがい。
・眼病、眼の充血、結膜炎に煎じ汁で洗眼。
・打撲、捻挫、神経痛、リウマチ、腰痛に黄柏を薄めた酢でドロドロにし、紙か布にのべて患部に貼る。1日2回貼りかえる。
・火傷、股ずれ、湿疹に黄柏末をごま油で練ってつける。乾いたら貼りかえる。
黄栢は 虫を安(やすん)じ 陰を益し 泄痢をとめて 黄疸を治す
黄栢は 上皮(うわかわ)をよく 削(けず)り捨(すて) 剉(きざみ)てあぶり つかひこそすれ(橋本竹二郎訳『新編和歌能毒』)
分布は北海道、本州、四国、九州、樺太、南千島、アムール、ウスリー、中国東北部。葉裏に毛の多いヒロハキハダ、コルク皮の厚いミヤマキハダ他の変種がある。ブナ帯に付随して生育、二次林に多く、野烏のシメが好んで実をついばみ種子を散布します。凡そ150万年前、日本列島完成期と言われる鮮新世や1万年前、第四紀洪積世の地層から種子の遺体が散点的に報告、第三紀には北半球に広く分布していたと言う。
雌雄異株の落葉高木。樹高25m、直径50cm以上に達します。花が美しいという木でもなし また葉もこれといった特徴もなく、たヾ、みどり一色で目立たない。しかし、幹の皮を剥ぐと、なんとも鮮やかな黄色い、しかも、みずみずしい皮が見えてきます。ゆび先でさわると粘りがあって、冷たい感じがします。臭いを嗅いで見ると、少々青臭いが殆んど無臭に近い。黄色に染まった指をなめてみると苦い。しかし、いやな味ではなく、むしろ爽やかな感じです。
漢方を「蘗木(ばくぼく)」「黄蘗」といいます。「蘗」は巨木のことであり、黄蘗は樹皮が黄色の大木ということになります。漢方では内皮(コルク層を除きいた)を乾燥したものを「黄柏」と呼び、黄連解毒湯、中黄膏などに配合され、内外用に使われます。
木曽の「百草」、奈良の「陀羅尼介」、鳥取の「練熊」など、強壮健胃の原料とされています。美しい黄色は染料に、材は狂いが少ないため、机、棚、家具、飾り柱に用いられます。
「陀羅尼助(だらにすけ)」(奈良・大峯山地域)の名は、僧が長い「陀羅尼」というお経を誦えたり、苦行をする時、黄柏エキスの苦味で、催してくる眠気をさまし、意識を回復させた。すなわち、“陀羅尼”を“助ける”というところからきている。陀羅尼助は黄柏とアオキをいれて煮詰めます。
古書に「キハダは寒冷の地に生育するので、その精力は皆皮に在る。故に、人の皮膚に主効がある。」ともあり、キハダは“黄肌”の意味で、樹皮の内皮が黄色だから、その名があります。
黄柏は「味苦寒、血熱を去り、下痢を止どめ、腹痛を治す。また、黄疸を治す。何れも熱を除くが本薬の主る所なり」また、『金匱要略』には「黄柏を自死せる六畜の肉を喰い其の毒に中たる者を治すに用いる」とあるように、苦味健胃・整腸薬、消炎性収斂薬として胃腸薬・腹痛・黄疸・下痢などの症状に応用されます。また、打ち身・打撲傷などに外用し、突き目や眼の充血には洗顔すると良く効きます。
江戸期の「いろは救民救薬の歌」にも
「病み眼にも、ただれ眼にも明礬と、キワダを煎じて洗え、妙なり」
「くじきにも、また打ち身にも、早速にキワダ、うどんの粉をば酢にて付くべし」
「乳癌や乳房の腫れは水仙の根をすり、キワダに混ぜて飲むべし」とあるくらいである。
これらの黄柏の効能は、ベルベリンの作用やステリン類の脂肪酸エステルなどの粘性を利用したものです。
ベルベリンの殺菌作用は大腸菌、コレラ菌、チフス菌、赤痢菌、淋菌など多くの細菌に有効です。
また、腸内の殺菌作用や腸管の蠕動抑制の作用を持っているので、下痢止めの薬になくてはならない物です。