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薬草クラブ キキョウ

キキョウ(桔梗)(キキョウ科)Platycodon grandiflorum(Jacp,)A、DC,の根

キキョウは、シベリア、中国東北部、朝鮮半島、日本に一種のみ分布しています。日本では、ブナ帯より下部の、日当りの良い山地、席野に自然分布しています。野生品では茎の先に1~2個の花をつけるのに対し、栽培して栄巷状態が良くなると、茎の上部で盛んに分枝し、各茎の先端に蕾を多数着けるようになります。

 

桔梗

[気味]苦・辛、平

[帰経]肺

[主治]気管支炎や乾性の咳嗽・排膿薬として化膿性疾患・扁桃腺炎・咽喉痛・排尿閉・尿困難(宣肺袪痰・排膿消腫・宣肺通利水道)。

 

効用

夏から秋にかけて採取し、乾燥したものを「桔梗根」と呼び、古書に「桔梗、咳を止め、痰を去り、膿を消し、痛みを鎮む。又よく咽痛を治す。此れみな気を増し、気の欝滞を除くに基ずくものなり」とあり、鎮咳・去痰薬として、気管支炎や乾性の咳嗽に、また、排膿薬として化膿性疾患、扁桃腺炎、咽喉痛などに用います。

 

・桔梗湯(甘草3・桔梗2) 咳や痰が出る時、激しい喉の痛み、しわがれ声の特効薬であり、うがいをしてから飲むとよい。

・韓国では桔梗の若根をアク抜きして、漬け物や砂糖漬にして「根は胸の痛みを治し、喉をうるおしゼンソクを消し、痰を去り、よく声を出す」と、江戸時代の文献「本草綱目」に記載されています。

・うるしがぶれに茎葉の汁をしぼって塗る。

・桔梗にはマクロフアージを活性化する物質があることを発見されました。

 

参考

桔梗は肺経気分薬で、辛散苦泄し質軽で昇浮し、肺気を開提し胸膈を開宜し、咽喉を利し袪痰止咳に働き、外邪犯肺による咳嗽・喀痰・鼻塞・胸悶・咽喉腫痛・失音などに、寒熱を問わず用いる事が出来る。また、排膿消腫に長じ、肺癰吐膿。癰疽腫毒にも使用できる。

なお、肺と大腸は表裏をなし、肺気の壅滞を宣通すれば腸胃を宣通することができるので、痢疾の腹痛・裏急後重に有効である。さらに、肺気を宣通すれば水道が通暢して小便が通利するために、小便癃閉に有効であり、「病は下にあればこれを上に取る」の例である。

このほか、古代から桔梗は諸薬の舟揖といわれ、昇浮の性質をもとに胸郭以上の病変に引経薬として使用される。下陥の病変に対して昇浮に作用する。

 

きりきりしゃんとして咲く桔梗かな(小林一茶)

桔梗は“気品”とか“変わらぬ愛”という花言葉は、まさにこの花にピッタリです。

 

秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 七種の花 萩の花、尾花(ススキ)、葛花、瞿麦(なでしこ)が花、女郎花(おみなえし)また藤(ふじ)袴(ばかま) 朝顔の花   (『万葉集』山上憶良)

(ここで詠まれている“朝顔”はキキョウであったといわれています。この頃はまだ朝顔は渡来していなかったようで、昔はキキョウのことをアサガオと呼んでいたようです。

 

紫のふっとふくらむ キキョウかな  (正岡子規)

桔梗の咲く時 ぽんと云さうな(加賀千代女)

キキョウの名の由来は漢名の桔梗を音読みしたものですが、根が結実して硬直するために、この名が付いたとされています。

古くは「きちかう」とよばれた桔梗は、万葉の頃からその花が愛されてきました。青みを帯びた紫色(桔梗色)の蕾がぽんと裂けると程なく黄色の花粉をいっぱい付けた雄蕊が開き、雄蕊が萎れる頃に雌蕊がグイと顔を出します。自家受粉を避けるため蕊の長さに差をつけている植物が多いところ、桔梗は雌雄の蕊(しべ)の成熟期をずらすことで互いの接触を避けているのです。

 

桔梗紋

 

美濃の土岐一族を代表する紋でありました。昔は桔梗の花を一輪桔梗は秋の草原に咲く可憐な花でした。その楚々たる姿をめでて、秋の七草の1つにもなっています。朝顔の名で呼ばれているのがそれである。これは古代の呼称であるが、一名岡止々支(ととき)ともいう。これは「岡に咲く神草」という意で、このトトキの生えている土地から土岐の語ができ、土岐氏が桔梗を家紋に用いるのはそのためでしょう。

土岐氏は、清和源氏系で、土岐氏初代となった土岐光衝は治承・寿永の乱の時代の人物で、鎌倉幕府の成立にともない源頼朝の御家人になった。ある戦の時に野に咲いていた水色の桔梗の花を兜の前立にさして戦ったところ大勝利を得たことから縁起のいい花として桔梗の図案を家紋として採用し、清和源氏を象徴するものとなりました。また桔梗の「更に吉(さらによし)」という語呂に縁起をかついだという説もあります。土岐氏の「水色桔梗」の旗紋は「白地に水色で染付けした桔梗紋」と「水色の地に染め抜きの桔梗紋」があります。

 

 

キキョウを食べる

 

・若葉は軽くゆであえものに、新鮮な根は漬物にします。韓国の詩のトラジは桔梗をさす。韓国では桔梗の若根をアク抜きして、漬け物や砂糖漬にして食します。風邪を引きにくくし、咳や痰も良く取れる。トラジナムルの和えもの。

 

・若芽や茎の先端の柔らかいところを生のまま天ぷら、炒めもの、茹でて水に晒しゴマ和え、酢味噌和えとする。花は天ぷらにしてもきれい。根はササガキとし、水によく晒してきんぴら風にする。

 

・薬酒 花を摘み、茎から出る乳汁をふき取り、約三倍量の焼酎に漬けると、2~3時間で澄んだ淡青紫色に仕上がる。色の美しい1~2週間の内に飲みきる。

 

・トドククイ=キキョウの根焼き

キキョウの根は皮をむいて縦半分に切り、塩水に浸けて苦味を抜きます。キキョウの根(3本)を棒でたたいてのし、裏表に油醤油を塗ります(油醬油は、ごま油(1)+濃い口醤油(0.5)を混ぜたもの)。キキョウの根を両面1回ずつ焼きます。

焼いたキキョウの根にタレを塗って、もう一度焼いてできあがり。たれは、コチュジャン(1)、砂糖(0.5)、濃い口醤油(0.5)、刻みねぎ(0.5)、おろしニンニク(0.3)、ごま(0.3)、ごま油(0.3)。

キキョウの根焼きの完成 。 キキョウの根は、強壮剤としても効果的で肺と脾臓、腎臓、胃腸を丈夫にします。特に女性に良いとされる植物です。

 

・トラジナムルの和えもの

キキョウの根の部分を使って韓国ではナムルにすることが多い。少し苦みがあるので苦手な人も多いのですが、味つけにお酢をプラスすることでおいしいナムルが出来上がります。

材料 キキョウの根100g、キュウリ2分の1本、セリ5本、塩少々

タレ コチュジャン小1、お酢・粉唐辛子各小1強、みじん切りのニンニク2分の1片分、長ネギみじん切り適量、ごま油小2分の1、砂糖・塩各少々

作り方:①きゅうりは縦半分に切って斜めにスライス。セリは3cm長さに切る。②ききょうの根に塩をふってよく揉む。これを冷水でよく洗う③タレをよく混ぜ合わせる。

④ボウルに、全部入れる。タレを入れて手で混ぜ合わせる。

 

栽培方法

種子繁殖:18―25℃で、種蒔き後10―15日で発芽。

14―18℃で、種蒔き後25―30日で発芽。

直蒔きと育苗方があるが、直蒔きの方が良い。

直蒔きには冬蒔きと春蒔きがあり、冬蒔きの方が良い。冬蒔きは11月初旬で、次年の春に発芽する。

春蒔きは4月上旬から中旬で、50℃の温水に撹拌しながら袋に入れて8時間浸す。

育苗は、よく太陽に当り風を避けるような所を選ぶ。

1,2mの苗床に10cm間隔に1cmの溝に筋蒔きし覆土し、土壌の湿度を保持すると15日で発芽する。

苗高が1,5cmになったら、過密部分や弱い苗を間引きする。

苗高が3cmになったら、3-4cm間隔に間引きする。

晩秋か春の発芽前に植え替えする。

 

参考書籍

橋本竹二郎著『目で見る薬草百科』・『主治医』・橋本竹二郎訳『新編和歌能毒』

青田啓太郎著『草根木皮』、神戸中医学研究会編著『中医臨床のための中医学』

辰巳 洋著『薬膳・素材辞典』、渡邊武著『平成薬証論』、寺師 睦宗訓 汪昻著『本草備要』、

水野瑞夫監修 田中俊弘編集『日本薬草全書』、上海中医学院出版『薬用植物栽培と加工』、片岡寧豊著『やまと花萬葉』、田中 修著『花の不思議100』、『クイズ植物入門』、多田多恵子著『したたかな植物たち』