yakusou-club

薬草クラブ

薬草イラスト

薬草クラブ エビスグサ(結決明子)

エビスグサ・決明子(マメ科)Cassia obtusifolia L.の成熟種子


[気味]甘・苦・鹹、微寒

[帰経]肝・胆・腎

[主治] 健胃、緩下(清肝益腎・袪風明目・潤腸通便)

 

北アメリカ原産の一年草で、江戸時代に中国から渡来したもの。種子は、角張った菱形の円柱形、長さ六ミリ、径三ミリ、褐色で光沢がある。この種子を決明子と称して薬用にします。六角形であるところから、土佐地方では六角ソウとも言う。また一般にはハブ茶と呼んで市販されている。決明は明を開くの意で、視力を回復するということであるが、これは目の薬ではなく、便通を調える作用があって、便通がよくなると、目の回りの充血がとれて、自然に視界がはっきりする。この因果関係から決明子の名ができたようだ。

森立之榎元本『神農本草経』には中品に収載され「決明、味鹹・平、川沢に生ず。青盲・目淫(ただれめ)・白膜・眼赤痛・涙出ずるものを治す。久しく服すれば、精光を益し、身を軽くす」とあり、古くから利尿、緩下薬として知られ、小便の出がよくなり、目がぱっちりするので「決明」と呼ばれるようになったといいます。

昭和五年六月に春陽堂書店から発行された 『新註校訂国訳本草綱目』草部第十六巻三三五頁「決明(本経上品)」の項の欄外の注に「牧野日フ、決明ニハ幾種カアルヨウデアルガえびすぐさヲソレノ正品卜定メオク、コレハ處ニヨリ六角さうト呼バレルガソレハ民間デ薬用トシテ用イラレル基種子の形状カラ釆夕名でアル」と、以後日本ではエビスグサを決明に充当するようになったようです。

明代の李時珍の『本草綱目』に「決明には二種ある。一種は馬蹄決明であって茎の高さ三~四尺(中略)その角の中に数十粒の子が参差として相連り、馬蹄のような形をなしている。色は青緑だ。眼の薬に入れて最も良し」と。この薬物の原植物は、日本各地で栽培されるハブソウ(望江南)を充当。「はぶ茶」原料としてエビスグサとともに大いに利用される植物です。マメ科植物でありながら蝶形花冠はなく放射総称花を開き、また空中窒素を固定する根瘤菌をほとんど付けません。しかし植物体には窒素を多量に含むため、畑にすきこんで緑肥効果が得られます。

 

決明子(けつめいし) 肝熱(かんねつ)をさり 目(め)の疼(いたみ) 泪(なみだ)をも留(とめ)め 鼻血(はなぢ)をもとむ

決明子 こしらへやうの 別(べち)になし 其(その)ままおろし 少炒(すこしいる)べし     (橋本竹二郎訳『新編和歌能毒』)

 

決明子は甘苦鹹・寒で、軽揚の気を稟ており、昇降できるのが特長であり、肝胆の欝火を清泄し、風熱を疏散し、兼ねて益腎し、さらに潤腸通便にも働く。目は肝竅で瞳子は腎を司るので、肝胆欝熱・風熱外襲による頭痛目赤にも肝腎陰虚による目暗不明にも使用でき、「眼科常用の薬物」と称されてる。潤腸通便の効能をもち、内熱腸燥便秘や肝火上炎に便秘をともなう場合に適する。

 

[参考]

夏枯草・決明子は清肝明目に働き、肝火の目赤に用いられる。夏枯草は降肝火・散結気にすぐれ瘰癧・癭瘤の要薬であり、決明子は清肝益腎・宣散風熱にすぐれ滑腸通便にも働く。

 

効用

エビスグサの効能は広く、驚くほどの効果があります。

利尿・消化不良・胃腸病に特に良く効きます。便秘・慢性胃腸病・消化不良・胃拡張・胃下垂・胃酸過多・胃アトニー・口内炎・じんま疹・アトピー性皮膚炎・腎臓病・腎盂炎・心臓病・糖尿病・婦人病・結核・肝臓病・リウマチ・神経痛・脳病・毒虫さされ・その他幅広い効果がある。

 

・便秘:1回5gを煎じて服用する。また、ゲンノショウコとドクダミを一緒に煎じて服用するのもよい。

・高血圧予防、健康増進:1日10gほどを土びんで煎じてお茶がわりに飲むとよいが、同量の薏苡仁(ハトムギの種子)を加えて飲むと健康茶として好ましい。連用することが必要。決明子、薏苡仁はもとにほうじてから使用する

・神経痛、リウマチ:決明子、防已(オオツヅラフジの根茎)、桑白皮(クワの根)各12gをまぜて煎服。

・口内炎:濃く煎じた物を3~5分間口に含み、2~3回繰り返すときれいに治る。

・急性じんま疹:濃く煎じてのみ、腹部マッサージをします。じんま疹が出たら、すぐにひまし油を2~3回飲んで下剤とし、その後で決明子を濃く煎じてのむと、ほとんど間違いなく治る。

・二日酔い:決明子を濃く煎じて飲んで寝ると二日酔いはしません。

・肋膜炎・心臓病・腎臓病・糖尿病:決明子、ゲンオショウコを適当に配合して煎じて飲みます。

・腹痛:決明子一つかみをかんで飲みます。歯の悪い人は濃く煎じて一度に飲みます。