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薬草クラブ アカマツ

アカマツ(赤松葉・松節) Pinus densiflora Sieb.et Zucc.(マツ科)

 

松は、古くから、庭先に黒松や赤松が植え、不老長寿や福寿の象徴としての信仰があり、正月に門松として使われています。また、全国の結核療養所は松林の中にありました。さらに、末期の悪性の病の人が、松の根の上に座り朝日に手をかざしていたところ治癒したという話を聞いたこともあります。

[気味]苦、温

[帰経]肝・腎

[主治]命を養うを司り、以て天に応ず。多く服し久しく服すも人を傷わず。身を軽くし、気を益し年を延んとする。

 


(唐招提寺境内の赤松)
効用

松は、中国の薬物書『神農本草経』に「上薬百二十種、君と為す。命を養うを司(つかさど)り、以て天に応ず。多く服し久しく服すも人を傷(そこな)わず。身を軽くし、気を益し年を延(のばさ)んと欲する者、上経に基づく。」とあります。

上品薬物(安全で健康で長生きするのに役立つ薬)に選ばれているほどです。

また、中国の古書に、「リウマチや関節痛・神経痛の痛み、脳梗塞などの脳疾患、婦人科疾患、耳・目などの疾病に効果があり、不老延命する。」と、書かれており、自然治癒力が期待できます。

又、日本では、修行僧が、一握りの松葉を食して断食に入ります。体内に潜む一切の邪毒を排し、気力を保つためといいます。

松節は、「筋骨を強くし、耳・目を利し、崩・帯を治す(李時珍)」「臭覚が次第に戻ってくる。」「歴節風で四肢が解け抜けんとする如きに良い」「三年の中風に、汗が出て立ちどころに癒える」「中を守り、臓腑を安んじ、毛髪を生じ、熱病の流行を避ける。」とあります。

 

アカマツ葉の利用方法

ジュースにして飲んでも、発酵させて飲んでも、お風呂に入れてもとても効果のある薬草です。

・ジュースで飲む方法は、1日量、本年生れの若葉10g、レモン1/4、水200mlをミキサーに入れ30~40秒かくはん。これをこし、適量のハチミツを混ぜて服用。

・松葉酒の作り方は、新芽300g、ホワイトリカー1、8リットル、ハチミツ1/2カップを入れ、日の当たる場所で置く。その場合、栓はゆるめにする。2~3週間で出来上がり、1日盃1~2杯服用。

・入浴法は、なべに生の葉を入れて濃い目に煎じ、その煎じ汁を浴槽の中に入れます。

腰痛などの痛み、動脈硬化、冷え症、ストレスや肝臓病、糖尿病、気管支炎などに効果があります。

 

✡門松


「新年 はるくれば、門に松こそたてりけれ、松は祝いものなれば、君が命ぞながからん」という歌が『梁塵秘抄(りょうじんひしょう)](巻一1179)に載っています。また1346年成立の『拾玉集(しゅうぎょくしゅう)』には源頼朝の歌として「わが思う君がすみかの面影ば松立つ門の春の景色に」とあります。門松を立てる風習は、どうも漠然としていますが、わが国ではこの12世紀後半頃からの鎌倉時代にかけての成立ではないかと考えられます。

門松の立て方は、本来門に向って左は陽、国生みの男神イザナギ命で雄松、つまりクロマツを、右は陰で女神のイザナミ命で雌松であるアカマツを立て、延寿嘉祥を祝うといいます。

柳田国男氏によると松は「正月に降り給ふ神々のより処」だそうです。したがって「お正月様」とか「お松様」と呼ばれ、仏壇、台所、土蔵、厩舎などに一本一本立てます。

マツを採る日は、1と9の日を嫌うので30日または28日以前に伐り採って飾りつけます。更に4階(死)、6階(無)、9階(苦)を嫌うといい、枝わかれしない1本のもの、または2~3本のものが喜ばれます。更に毬果(きゅうか)の着いたものは金が成るといいます。

一条冬良著『世諺問答(せげんもんどう)』(1490頃)には「門の前に松竹を立て侍(はべ)り、松は千歳(ちとせ)をちぎり、竹はよろず代を契(ちぎ)る草木なれば年の初めの祝事にたて侍るべし」と竹が添えられます。

江戸時代になると梅がこれに加わり、また将軍家松平氏に因(ちな)んでか、松がとりわけ尊ばれ、各大名屋敷はいとも豪壮な門松を飾りつけることになります。

『源氏物語』「初音」に、「子(ね)の日の小松引き」の様子の一節が書かれていますが、これは、正月初めの子の日に、人々が野外に出て若菜を摘んだり、小さな松の木を引いたりして宴を催し、邪気を払い長寿を祝う行事で、この日に丘や山に登って四方を望むと陰陽の精気を得て煩悩を除くという思想に基づき、松は延寿・若菜は邪気を払う意味があるといいます。

 

✡子の日の御遊び

…平安時代,正月初めの子の日に貴族たちが楽しんだ野遊び。小松の根引き(小松引き)や若菜摘みなどが行われたが,これらは年頭にあたって,松の寿を身につけたり,若菜の羮(あつもの)を食して邪気を払おうとしたものと思われる。現行の民俗のなかに,正月初山入りに雌雄の小松を引いてきて後に苗代の水口に立てたり,初山入りそのものをネノビ,ネノキムカエといったりする所のあるのは,わずかにこの影響が残っているものであろう。…

 

松の花言葉は「不老長寿」、変わらぬ「ご縁」にちなんで、めでたい草木の象徴であります。

岩肌に根をでこぼこと露出し、岩の亀裂の奥深くまで入り込み、しっかり岩を固定し、凜として立つ赤松の木を見ることがありますが、松には、土壌緊縛力(どじょうきんばくりょく)といって土壌をつなぎ止める力がとても強く、樹齢40~50年の物では約20トンもあるそうです。ちなみにミズナラは600kgほどです。