(1)気味
食べ物(薬物)の性質、作用をいう言葉で、寒・熱・温・涼を気といい、酸・苦・甘・辛・鹹(かん)を味といいます。また、薬気と薬味の両方を合わせて気味といいます。食べ物の気味の組み合わせが異なれば生じる作用も異なります。それぞれの食べ物にはすべて気と味があり、同じ温性でも味が異なると作用も異なり、同じ味でも気が異なれば作用も異なります。
(注)1四気とは食べ物には「温性」「熱性」「寒性」「「涼性」という4つの性質があり、「温性」は体を温める性質(生姜・栗・鶏肉など)、「熱性」は体を熱くする性質(羊肉・胡椒・唐辛子など)、「寒性」は体を強く冷やす性質(苦瓜・スイカなど)、「涼性」は体を冷やす性質(大根・キユウリなど)。この他に、「平性」があり、その性質は比較的平和であり、実際上は寒や熱に偏っている場合もあります。
(注)2酸は「すっぱい」、苦は「にがい」、甘は「あまい」、辛は「からい」、鹹(かん)は「しおからい」を五味といいます。
五味の作用:酸味:物を引き締める、収斂する作用(サバやカニの酢醬油の例のように、タンパク質を引き締める作用)
苦味:固める作用と熱をとる作用(炭の味でもわかるように下痢便をかためる作用)
甘味:調和、補う作用(筋肉痛をやわらげ、緊張を緩和する作用)
辛味:発散する作用と循環を良くし温める作用(トウガラシやワサビを食べると発汗するように、汗をかかせ、風邪などを発散する作用)
鹹味:物を和らげ、潤す作用
また、この五味は、五臓が病んだ時、欲する味でもあります。例えば、塩気を強く欲する時は腎機能がみだれかけている時であって、そのまま塩分を摂り過ぎるとむくむようになる。酸味を欲する時は肝が弱ってきている前兆であるし、苦い物を多く欲する時は心に気を付ける。甘い物を多く欲する時は、胃がこわれる前ぶれであり、さらに食べ続けると胃が悪くなり、肌や口元にフキデモノが出来る。辛い物を食べ過ぎると咳や喘息などの呼吸器疾患に悪いし、大腸にも悪い。特に痔に。しかし、風邪の初期にはネギやショウガ、トウガラシのスープは発汗作用にすぐれ、よく効きます。
(2)帰経
食べ物(薬物)の作用を臓腑経脈に関連づけたものであり、その食べ物がどの臓腑経脈の病変に効果があるかを説明しています。例えば、桔梗は咳嗽気喘の肺経病を治療することができるので、すなわち肺経に帰入する。一種類の食べ物が数経に帰入する場合は治療範囲が広くなるわけです。
例えば、ネギ([気味] 辛、温 [帰経] 肺・胃)に付いて説明すると、気は温性で味は辛味、帰経は肺経と胃経。風邪の悪寒を取り除き、咳や痰を鎮め(肺経の症状)、腹痛や下痢(胃腸の症状)を治す。が主治となります。
(注)経脈:人体の全ての組織器官・五臓六腑・四肢百骸(ひゃくがい)・五官九竅(きゅうきょう)に気血を流し、体内全ての機能を調節している流れる道すじを「経絡(けいらく)」と呼ばれています。経絡の『経』とは『縦線』のことで、経脈は、気血が運行する主な通路で、経絡系統中で直行する主要幹線である。十二経脈と奇経八脈に大きく分けられる。十二経脈には肺経・大腸経・胃経・脾経・心経・小腸経・膀胱経・腎経・心包経・三焦経・胆経・肝経がある。