食べ物の細目

食べ物の細目

薬草イラスト

食養生の基礎 ニラ

[気味]辛・甘、温
[帰経]肝・腎・胃
[主治]内臓を温め、疲労回復、食を進め下痢を治す。肝経の病を主る。最も中脈を補うのによい(補陽和中降気・舒筋活血化瘀・解毒)。

 

中国西部原産と考えられる葷(くん)の類である。中国名を韮、日本への渡来は早く、『和名抄』(932)にコニラという古名で出ている。

人見必大著『本朝食鑑』に「韮(にら)は、五辛の一つ(韮(にら)・薤(らっきょう)・葱(ねぎ)・蒜(にんにく)・薑(しょうが))であるから、妄(みだり)に食べるわけではない。肝経の病を主る。心腎に帰し、胃口の瘀血を散し、鬱痰の食道を塞ぐのを除く。ゆえに噎膈(いっかく)(しょくつかえ)の病を治す。痔および脱肛を洗う。最も中を補うのによいものである。」また、「噎膈・嘔吐。食をうけつけぬ時、韭葉・鶏卵白を味噌汁とよく煮て粥とし、食すれば癒える」とあります。

・風邪のひきはじめに刻んで熱湯を注ぎ、少量の塩を入れて飲むと汗が出て快眠が得られます。

・茎葉を煮て食べると、内臓を温め、疲労回復し、食をよくし、下痢を治す。激しい下痢で、俗に腹をこわしたという場合は、ニラ入りの熱い粥を食べるとよいです。

・頻尿、遺精、疝痛、下痢に種子5~10gを煎じて服用する。韮は辛温壮陽して暖腎固精に長じ、腎陽虚衰・精関不固の要薬となります。

・ニラは、中薬学では血液循環をよくして古血を排除する(活性化瘀薬)、また強精・強壮薬、胃に対する効用、つまり胃腸が冷えたり、潰瘍性の出血を伴うものによい薬として記載されています。これを夜尿症や頻尿に用いる場合には、体を温めることによって尿意を和らげるという作用があります。ただしニラを多食すると、腸の蠕動運動を急に刺激して下痢しやすくなるので、多食はつつしむべきです。

 

ニラを食べる

ニラとしらすの卵とじ

作り方 ニラは3センチほどに切り、油少々入れてフライパンで軽く炒める。しらすを入れて混ぜ、そこに卵にだし汁を少し入れて溶いた物をまわし入れる。塩、こしょう少々。卵が固まったら完成。

各食材・調味料・薬味の四気・五味・効能

・ニラは、辛味と甘味があり身体を温める性質がある。効能は、内臓を温め、疲労回復、食を進め下痢を治す。肝経の病を主る。最も中脈を補うのによい。

・シラス[気味]甘・鹹、温 [帰経]脾・肝・腎・心 [主治]気血(身体のエンジンとガソリン)を補い、気血虚弱、息ぎれ、めまい、むくみを治す。

・卵は、甘味があり平性の性質がある。効能は、心を鎮め、癲を止め、肺を潤し、肝を補い、腎を滋し、脾胃を調える。多食は害を起こす。

・塩は、甘味と鹹味があり冷やす性質がある。効能は、脾胃を調和し、食べ物を消化し、食中毒を解す。

・コショウは辛味があり身体を熱する性質があります。効能は、内臓諸器官を温め、魚肉の食中毒を解す。

考察

温性の食材のニラ・しらすをごま油で炒める段階までは熱性となりますが、塩を加えることにより少し熱性が抑えられ、胃にもたれなくしています。体力が低下したときなど、ニラとシラスの効能が期待でき、また、五味に関しては、甘味が多いので腎を損ないやすい(土剋水)のですが、腎を補う鹹味と辛味によって味のバランスが調います。臓腑経脈に関して、全てに帰入しており、身体によいおかずとなっています。

ニラは、江戸時代の人見必大著『本朝食鑑』に「肝経の病を主る。心腎に帰し、胃口の瘀血を散し、鬱痰の食道を塞ぐのを除く。ゆえに噎膈(いっかく)(しょくつかえ)の病を治す。痔および脱肛を洗う。最も中を補うのによいものである。」また、「噎膈・嘔吐。食をうけつけぬ時、韭葉・鶏卵白を味噌汁とよく煮て粥とし、食すれば癒える」と書かれているように、内臓を温め、疲労回復、食を進め下痢を治す働きがあり、シラスは気血(身体のエンジンとガソリン)を補い、気血虚弱、息ぎれ、めまい、むくみを治す働きをもっています。卵は、心の乱れを鎮め、癇を止め、肺を補い、腎を養い、脾胃を整える働きがあります。

 

ギンナンとニラの粥 頻尿・夜尿症 

材料 ギンナン20個、モチ約7㎝角のもの2個、ニラ30g、蓮根100g、山芋50g、玄米1カップ、昆布ダシスープ13カップ、塩少々。

作り方

玄米は洗米して、水に一夜浸けた後、水切りして、サラダ油を少々まぶしておく。ギンナンは炒って殻を取り、薄皮と渋皮を取っておく。ニラはよく洗い、3㎝長に切っておく。蓮根は皮をむき、厚さ3㎝のイチョウ形に切り、水にさらしておく。山芋は皮をむいて、1㎝角に切っておく。

玄米を、昆布のダシスープで1時間ほど弱火で煮て粥を作る。これに、ギンナン、蓮根、山芋を加えて、すべてに火が通るまで煮る。全体が煮えたら、程よく切って焼いたモチとニラを加えて、ひと煮たちさせ、最後に塩味をつけて食べる。

 

各食材・調味料・薬味の四気・五味・効能

・ニラは、辛味と甘味があり身体を温める性質がある。効能は、内臓を温め、疲労回復、食を進め下痢を治す。肝経の病を主る。最も中脈を補うのによい。

・ギンナン[気味]甘・苦、平 [帰経]肺・腎[主治]肺を暖め、気を補益にする。止咳平喘薬(咳を止め、喘息を静める)であり、滋養、固腎、補肺の効果がある。肺病の咳、老人の虚弱体質の喘息に用いるが、やや毒性あり。

・餅は、甘味があり身体を温める性質である。効能は、気を益し、血のめぐりをよくし、脾胃を暖め、大便を固くし、小便の頻数を縮め、汗を止める。多食すると胃に停滞し熱の害を生ずる。

・レンコンは、甘味があり身体を冷やす性質がある。効能は、胸苦しさを除き、胃を開き、食滞を消し、酒毒および蟹毒を解し、産後の古血を散らす。また、利尿作用と共に便通をよくし、体内の老廃物や毒素を排泄する。

・ヤマイモは、甘味があり身体を少し冷やす性質である。効能は、疲労倦怠・食欲不振・下痢・夜尿・頻尿・腰腿だるい・慢性の咳。

・玄米は、甘味があり微涼性の性質である。効能は、補気健脾・利水化痰・安神・補肝腎。

・昆布は、甘味と鹹・酸味があり身体を冷やす性質がある。効能は、積堅を破り、水腫を利し、瘰癧を消す。

・塩は、甘味と鹹味があり冷やす性質がある。効能は、脾胃を調和し、食べ物を消化し、食中毒を解す。

考察

全体には平性の食べ物となっています。五味はバランス良く配され、臓腑経脈は食材のみで全てに帰入しています。ニラは、中薬学では血液循環をよくして古血を排除する(活性化瘀薬)、また強精・強壮薬、胃に対する効用、つまり胃腸が冷えたり、潰瘍性の出血を伴うものによい薬として記載されています。これを夜尿症や頻尿に用いる場合には、体を温めることによって尿意を和らげるという作用があります。ただしニラを多食すると、腸の蠕動運動を急に刺激して下痢しやすくなるので、多食はつつしむべきです。