食べ物の細目

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薬草イラスト

食養生の基礎 トウガラシ

 

 

[気味]辛、熱
[帰経]心・脾
[主治]香辛料として胃液分泌を増進し、食欲増進し、身体を温める。胃腸を患う人は食さない(温中散寒・開胃除湿・駆虫殺菌・温通瀉血)。

 

青くても有るべきものを唐辛子 (芭蕉)

 

うつくしや野分(のわき)のあとのとうがらし (蕪村)

 

『本朝食鑑』に「胸膈を開き、宿食(消化不良)を下し、欝滞を利し、悪気を去り、邪瘴(山川湿熱欝蒸の気で、熱病を起こさせる邪悪なもの)を去り、・・・」とあり、「番椒(ばんしょう)」(トウガラシ)の辛・熱・峻烈(しゅんれつ)さは、山椒・胡椒・芥薑(かいきょう)よりも甚だしい。もし過食すると、たちまち害に遇うことを知らねばならない・・・」と。

 

トウガラシの後を引くような辛さの正体は、カプサイシンという成分で、血行を良くし、発汗を促す働きがあるので、脂肪を燃焼し、肥満予防に効果があるといわれています。しかし、カプサイシンの辛味成分は、刺激が強いため、摂取し過ぎると味覚が麻痺したり、胃の粘膜を傷つけてしまったりして、却って身体に逆効果になるので、食べる時には摂り過ぎに注意が必要です。

「金魚育て草」の異名があるほど金魚の薬として有名です。また飼鳥の便秘にも、トウガラシを少量とかして飲ませるとよいとか。昔、寒い道中を旅する人は、腹巻の中にトウガラシをしのばせていました。今でも特にスキー靴に入れて足を温める人もいます。

 

トウガラシは、ナス科の植物の果実です。ピーマンやパプリカと同じ仲間で、辛味の強いものを香辛料や調味料の原料として使うのが一般的です。推定原産地は南アメリカといわれ、ペルーではトウモロコシなどとともに2000年も前に栽培がされていたといいます。昔から香辛料として使われてきました。

これがヨーロッパに渡り、中国へ。日本への渡来は1542年ポルトガル人が持ち込んだという説と、1592年、文禄の役の際に朝鮮から持ち帰ったのが始まりだという説とがあるがいずれにしてもこの頃渡来しました。トウガラシの名は、唐から渡った芥子の意。しかし長崎の唐船貿易地では、唐枯らしに通じるのでこの音を避け、南蛮から渡ったので南蛮または南蛮胡椒、朝鮮から渡ってきたので高麗胡椒、そして近年は蛮の字を改め蕃椒の異名となりました。

 

トウガラシは、日本の醤油や味噌といった調味料に合うためか、急速に栽培され、普及しました。江戸時代には各地でそれぞれの地に適した栽培品種の多くが作出され現在に至っています。

海外では、南半球や赤道直下の暑い地域や地中海周辺などでよく使われる香辛料として親しまれてきました。現代でもインドや東南アジア各地を旅行して料理を食べると必ずといってよいくらい「チリ・ソース」が出されます。チリとはトウガラシのことで地名による称呼です。ヨーロッパ諸国ではカプシクム(Capsicum)又はレツド・ペッパー(Red pepper)、アメリカではレッド・ペッパーもしくはチリ・ペッパー。中国料理の代表的な調味料「豆板醤」「ラー油」の原料であり、韓国料理では定番の漬物「キムチ」には欠かせないものがトウガラシです。薬味として「トウガラシ」を使う時には、細かくして乾燥させたり焙煎して作られた七味唐辛子や一味唐辛子を麺類や鍋物などに少量使うのが一般的です。

 

トウガラシを食べる

唐辛子・花椒を味噌に混ぜてトッピング

唐辛子、花椒を粉末にし、温めた味噌に混ぜてできあがり。分量は、それぞれ1~3%程が良いでしょう。焼き豆腐などにトッピングすると、食欲が増します。身体を熱する働きがあるので、冷える性質の食事に添えるのもよいでしょう。

・トウガラシは、辛味があり身体を熱する性質がある。効能は、香辛料として胃液分泌を増進し、食欲増進。身体を温める。

・花椒は、辛味があり身体を熱する性質がある。効能は、寒証の胃腹の冷え・痛み・嘔吐・下痢・消化不良、肺寒の咳嗽、関節・筋肉の冷え・痛み・麻痺。

・味噌は、甘味と鹹味があり、身体を温める性質がある。効能は、腹中を補い、気を益し、脾胃を調え、心腎を滋し、嘔吐を収め、腹下しを止め、四肢を強くし、皮膚を潤し、酒毒および鳥魚獣菜毒を解す。

唐辛子(とうがらし)を薬味にするとピッタリの料理

・うどん:温かいうどんに七味唐辛子、一味唐辛子をふりかけて。

・蕎麦:温かい蕎麦に七味唐辛子、一味唐辛子をふりかけて。

・焼き鳥:焼きたての焼き鳥にパラパラと七味を降りかけて。

・納豆:ねぎなどの薬味と一緒に唐辛子も入れて。

・焼肉:焼肉のタレに少量入れて。

・鍋物(水炊きなど):ポン酢やごまだれなどの鍋物のタレに少量入れて。

 

禁忌・注意

・肝陽上亢・陰虚には禁忌。老人・妊婦・小児は控える。前立腺肥大・膀胱炎・痔疾患・便秘の場合は控える。

・唐辛子に含まれるビタミンCはビタミンKや止血剤の働きを破壊するので禁忌。

・にんじんや胡瓜に含まれるビタミンCを低下させ、レバーに含まれる銅や鉄を破壊するので、一緒に摂らない。

・唐辛子に含まれるビタミンCがカボチャによって破壊されてしまうので一緒に摂らない。

 

味噌作りの時、最後に唐辛子を乗せていくのは、唐辛子の駆虫殺菌作用を利用したものです。