冬は温かい食べ物が美味しくなる季節です。湯豆腐、白菜鍋、しゃぶしゃぶ等の鍋料理のタレには、ユズ、スダチ、カボス、レモンなどの酸味のある果汁は欠かせません。五行説で酸は肝を養うとあります。
気味は酸・寒で帰経は肝・胃に入る。食毒を消し、酒毒を解すといわれ、冬期間の薬味として大切です。
ユズは、中国の長江上流域が原産といわれていて、唐の時代に遣唐使が持ち帰ったとされている。日本では、奈良時代には栽培が始まり、食酢などとして使われていた。
(ユズ・カボス・スダチ)
スダチ(酢橘)
[気味] 酸・寒
[帰経] 肝・胃
[主治]食積を消し、酒毒を解す。疲労回復、心を落ち着かせる。 (ユズ・カボス・スダチ)
カボス(臭母酢)
[気味]酸・甘、寒
[帰経]脾・胃・肺
[主治]疲労回復、食欲増進 薬味、食積を消し、酒毒を解す。心を落ち着かせる(開胃消食・理気止渇・潤肺)。
ユズ(柚子)
[気味]甘・酸、寒
[帰経] 肺・脾・肝
[主治]食欲不振・消化不良・痰多咳嗽・二日酔い(気を下し、胸を利し、鬱を開き、酒気をおい、五味を和し、生臭を消す。健脾消食・止咳化痰・解酒)。
柚子の皮
[気味]苦・辛、温
[帰経]胃・肺
[主治]気を下し、膈(むね)を利し、鬱を開き、酒気を逐(お)い、五味を和し、生臭さを除き、魚や菌の毒を散らす。
・スダチの効能
含まれている酸味の成分にあり、その正体は「クエン酸」です。クエン酸には新陳代謝を活発にする働きがあり、疲労回復に効果的です。また、スダチは柑橘類の中でも「ユズ」に次いでビタミンCの含有量が豊富です。ビタミンCやクエン酸などの相乗効果により、食欲を高め、胃腸の働きを正常に保つための手助けをします。また、柑橘類に多く含まれている香りの成分「リモネン」には、心を落ち着け、気持ちを鎮めるという効果もあります。まさにスダチは疲れている時にはピッタリの食材と言えるでしょう。スダチに含まれる特異成分としてスダチチンがあり、血液中の血糖値を下げるインシュリンの働きを助ける効果を持っています。
・カボスの効能
カボスに含まれている酸味の成分にあり、その正体は「クエン酸」です。
カボスには、同量のレモンの中に含まれるクエン酸の量の約2倍が含まれています。
クエン酸には新陳代謝を活発にし、疲労物質の原因である乳酸の増加を抑えるので疲労の予防にも効果的であり、胃腸の調子を整え、血液のドロドロをきれいにして、サラサラにする効果もあります。
また、カボスは、柑橘類の中でも、ゆずとほぼ同量のビタミンCが含まれており、ビタミンCやクエン酸の相乗効果により、食欲を高め、さらに胃腸の働きを整える手助けをします。また、柑橘類に多く含まれている香りの成分「リモネン」には、鎮静効果もあります。まさにカボスは疲れている時には積極的に取り入れたい食材です。
スダチ、カボスを薬味として使う料理:冷奴、刺身、焼き魚、豆腐料理、鍋物、天ぷら、お吸い物・お雑煮、茶碗蒸し
・ユズの効能
中国から渡来したといわれ、果実酒として用いられていたので柚(ゆ)酢(す)がユズとなったようです。スダチ・カボスもユズの仲間。冬至に柚子湯に入ると一年中感冒にかからないといわれます。
リウマチ・神経痛・冷え症・腰痛:ユズの皮の風呂がよく効きます。ユズの成分のうち、精油(ピネン・シトラールなど)が皮膚を刺激し、血行をよくします。そのほか、リウマチには種を黒焼きにして熱湯をさして飲んでも効きます。
魚も骨がのどに刺さって取れないとき:種子を砕いて熱湯をさし、少しずつ飲みます。種子と南天の葉を煎じて飲んでも良いです。また、種子の黒焼きを、ご飯粒と一緒に練って貼ると取れます。消化不良・胃腸病:胃腸の働きを助けるので、色々な料理に利用できます。
柚餅子
材料:ユズ10個くらい、むきクルミ100g(荒く刻む)、味噌400g(白味噌200g・赤味噌200g)、みりん1/4カップ(50cc)
作り方
①ユズは水洗いして水気を拭き取り、ヘタの方をフタになるように横に切り落とす。下の方はスプーン等で中身をくりぬいて器(ユズ釜)にする。
②むきくるみを荒く刻み、味噌にみりんとクルミを合わせてよく練り合わせる。
③器(ユズ釜)に練り合わせた味噌を6分目くらい詰めてフタをする。詰め過ぎると蒸かした時に中身が吹きこぼれてしまうので少し控え目くらいで丁度良い。
④蒸し器に並べ、中火で40~50分くらい蒸す。蒸し上がったらそのまま冷ます。
⑤キッチンペーパーなどで巾着形に包んでタコ糸で縛る。
⑥雨や日光を避けて北側の軒下などに1~2ヶ月間吊るして干す。完成したら紙をはずしラップで包み直して冷蔵庫で保存する。約1年くらい保存可能。
温性をおかずであり、五味は酸味以外に配され、臓腑経脈は全てに帰入しています。食欲をすすめ、身体に良いおかずとなっています。
柚子の皮に味噌、山の幸を入れたもので、戦国時代に武士が戦に携行した保存食の1つとして作られたようです。薄く切ってお茶漬けや酒の肴(さかな)にし、ご飯のおかずにもなります。食を進める為のもので、膈(むね)を利し、胃を開き、食を進め、痰を逐うのである。あるいは、茗(ちゃ)・酒の佐(つまみ)とするのもまたよいもの。
柚餅子の中身に、味噌の垂れ汁でもち米粉あるいは糒(ほしいい)を餅のように煉り、ゴマ・クルミ・カヤの実・胡椒・川椒(さんしょう)の類を合わせたものを入れる場合もあります。
・吸い物に 熱い汁物の吸い口にユズの皮をチョット入れると、香りでいっそう美味しく頂けるので、食欲不振にもよいです。
・ゴマ味噌で ユズを二つ割にして中味をとり、黒ごまを練り込んだゴマ味噌を双方に詰め、それを合わせてホイルに包み、火にかけ、ユズのお尻が少し焦げる程度に焼きます。
ユズの香りと味の移ったゴマ味噌を、玄米ごはんまたは半つきご飯に付けて食べると、消化不良と胃腸病によく効き、風邪を引かずに丈夫になります。もちろん、ユズ味噌にして食べても構いません。
・ユズジャムに 皮と中の袋の実だけ利用し、汁は酢に使って、これを煮つめてジャムを作ります。これは気管支の弱い人によく、内臓の粘膜を丈夫にします。
・種子で薬用酒を 焼酎に漬けます。この種子は、ガンその他慢性病によいアミグダリンも多いので、大切に利用します。