お米は、「ご飯」として食べる“うるち米”と「餅など」としてたべる“もち米”があります。2つの大きな違いはお米のデンプンの性質の違いです。お米のデンプンはぶどう糖の結合の違いにより、アミロースとアミロペクチンに分けられ、それらの割合が違うため、“うるち米”と“もち米”に分けられます。
・うるち米:アミロース20%・アミロペクチン80%
・もち米 :アミロペクチン100%
アミロースは粘らないデンプンであるため、うるち米ではアミロースの含有量が低いほど(アミロペクチンの割合が高くなるため)粘るお米とされています。
米
[気味]甘、平
[帰経]脾・胃・大腸
[主治]気力増進、血脈を通す、五臓を和らげ顔色良くする。米は少しも毒気ない(補中益気・健脾和胃・除煩渇・益精志・涼血解暑)。
ご飯
[気味]甘、温
[帰経]脾・胃
[主治]五臓を補い気血を益し、百病を治し、人間に一日もなくてはならないもの(健全消化)。
粥
[気味]甘、温
[帰経]脾・胃
[主治]脾胃を能く調え、元気を益し、五臓を養う。下痢の後の体調を調え、小児の吐乳によい。
玄米
[気味]甘、微涼
[帰経]脾・胃・肝・腎
[主治]補気健脾・利水化痰・安神・補肝腎
もち米
[気味]甘、温
[帰経]脾・胃・肺
[主治]胃腸肺虚弱による疲労・食少ない・下痢・便秘・頻尿・自汗冷え症(補中益気・健脾止瀉・補肺養陰)。多食を避ける。
餅
[気味]甘、温
[帰経]脾・胃・肺
[主治]気を益し、血のめぐりをよくし、脾胃を温め、小便の回数を減らし、汗を止める。多食すると胃に停滞し熱の害を生ずる(補中益気・健脾止瀉・補肺養陰)。
米は甘味があり平性の性質で、効能は、気力増進、血脈を通し、五臓を和らげ顔色良くする。米は少しも毒気ない。病気の時は薬となり、健康な時も薬となるので、一朝一夕も人身から離すことの出来ぬもの(補中益気・健脾和胃・除煩渇・益精志・涼血解暑)。
本草書・人見必大著『本朝食鑑』に、「天が五穀を生じ、人を養う所以(ゆえん)は、中和なる自然の気を保持し、等しく万物を長養させる功を有するからである。人は、これを得ると生き、得なければ死ぬ。したがって、一日たりとも五穀なくして済ますことはできない。とりわけ、米は五穀の筆頭であり、生命の係わるところで、気味を知らずにすますわけにはいかない。・・・たとえ金石草木、鳥獣虫魚が百薬であるとしても、米の人身にとって大切なものであることには及ばない。例えば、参甘(人参・甘草)は百薬の長であるが、無病の人が常に服用すると温熱・寛緩の患を免れない。これが薬の米に及ばぬゆえんである。・・・」とあり、また「米は少しも毒気もなく、病気の時は薬となり、健康な時も薬となるので、一朝一夕も人身から離す事が出来ぬもの、死生のよるところ天命の定まるところといえよう」と書かれています。
ご飯(めし)(精米を水で洗浄し釜で煮たもの)
・ご飯は、甘味があり身体を温める性質がある。効能は、五臓を補い気血を益し、百病を治します。人間に一日もなくてはならないもの(健全消化)。
・菜飯(なめし) 細かく刻んだ生の蕪(かぶら)の葉を米に混ぜ入れて、焼乾飯(たきぼしまい)に煮たもので、味は甘美で香ばしい。能く気をおだやかにし、胸を寛(くつろ)げ、食気を停滞させない。蕪の根を混ぜたものもある。
・カブは、甘味と辛味、苦味があり身体を温める性質である。効能は、食を消し(消化)、気を下し、痰を逐い、嗽を治す。気を下し、食を消すけれども、脾胃の気を損わないので、平生の飲食の助とする。その有益さから、根葉茎ともにこれを用いる(下気寛中・清熱利湿)。
菜飯の作り方
鍋に湯を沸かし、ティースプーン山盛り1杯ほどの塩(分量外)を加えます。ゆでるのはまずは根元の茎から。30秒ほどゆでた後に全体を落とします。 全体を落としたら、落とし蓋をするか、途中上下を返すなどして、さらに1分ほどゆで、冷水に取ります。
ゆでた菜っぱは軽くしぼって6~7㎜幅に切るのですが、この後の塩を加えるタイミングがポイントとなります。切った菜っぱをボウルに入れ、菜っぱに塩小さじ2/3を混ぜ合わせ、2~3分塩味をなじませたら、手でぎゅっとしぼって、あたたかいごはん400gほどと混ぜ合わせます。全体が混ざったら茶碗に盛り、ごまを少し散らして完成です。
赤小豆(あずき)飯 気をおだやかにし、水を利し、泄痢(せつりげり)を止め、酒毒・腫れものを解し、寒熱を除き、
瘀血(ふるち)を散じ、産婦や小児の痘疹に最もよい。
・アズキは、甘味と酸味があり少し冷やす性質がある。効能は、気分穏やかにし、湿を除き、利尿消腫、乳汁の出をよくし、急性伝染病の高熱を取り、魚毒を解す。甘い物を食べると小便が出にくくなりますが、羊羹や饅頭は、アズキが基本になっているのでそれを予防しています。
枸杞(くこ)の葉飯 滋養強壮に働き、心肺の熱を除き、虚を補う。
・枸杞葉は、甘味と苦味があり身体を少し冷やす性質がある。効能は、上焦熱(口唇に瘡を生じ、頭脹腫痛)、心肺の外部から加わった熱を除く。茶がわりに服用して利尿、高血圧、滋養強壮に
豆茶飯 感冒、頭痛、気鬱を治し、食を進める。
材料:米1合、大豆茶碗一杯、番茶適量、塩少々
作り方
①茶を沸かし、大豆を一晩漬け、大豆を粗く刻む。
②米に普通量のお茶を入れ、少量の塩を加え、①を加えて炊く。
③冷やしたご飯も美味しい。
各食材・調味料・薬味の四気・五味・効能
・大豆は、甘く身体を温める性質がある。効能は、気をおだやかにし、腹中をげ、血をし、百薬の毒を解る。
・お茶は、苦味と甘味があり身体を冷やす性質がある。効能は、頭目を清くし、熱気を破り、気を下す。食べ物を胃と五臓に導く。
・塩は、甘味と鹹味があり冷やす性質がある。効能は、脾胃を調和し、食べ物を消化し、食中毒を解す。
奈良茶飯 感冒・頭痛・気鬱等の症を能く治す。
鶏飯 クチナシと鶏肉を使用する。腹中を能く温め、元気を益し、陽道(男性の精力)を壮(さかん)にし、腰膝を暖める。
蓮葉飯:腹中を寛(くつろ)げ、脾胃を強くし、三焦の働きをよくし、生発の気を資(たす)ける。
その他、角豆(ささげ)飯・芋飯・大豆飯・豆腐の滓(かす)飯、麦飯、栗飯、稗(ひえ)飯、蕎(そば)飯などがあります。
粥は、甘味があり身体を温める性質がある。効能は、脾胃を能く調え、元気を益(ま)し、五臓を養う。下痢の後の体調を調え、小児の吐乳によい。
米の粥は、味が濃くて美味しい。飯の粥は、味が淡い。五穀および豆・蕎麦(そば)は、いずれも粥にすることが
出来る。とりわけ大麦の粥は、宿痾(しゅくあ)(ながわずらい)や羸弱(るいじゃく)(病みつかれて、痩せ弱る)の人が毎(つね)に嗜むものである。
炊く水分量で分類すれば、
全粥は、米の5倍量の水で炊いたもの(重湯がない粥)
七分(しちぶ)粥は、米の7倍量の水で炊いたもの(全粥7:重湯3)
五分粥は、米の10倍量の水で炊いたもの(全粥5:重湯5)
三分粥は、米の20倍量の水で炊いたものである(全粥3:重湯7)
小豆粥や地黄粥は、正月の十五日にこれをすすれば、邪を避けるという。小豆粥は身体に滞る余分な水分を追い出します。地黄粥は身体中が温かくなります。いずれも無病息災を願っての行事です。
地黄粥(じおうかゆ)
アカヤジオウの根を堀採り水洗、細かく切って器にとって置き、これを普通に作る白粥の出来上がる寸前に鍋の中に入れ、塩で味を付け、火から下ろして少々蒸らして置けば、これで地黄粥の出来上がりです。
温かみのある鮮黄色の地黄粥は、見る目に新鮮で、この粥を啜っているうちに身体中が温かくなり汗ばんできます。
少々の風邪ならどこかへすっ飛んでしまいそうです。地黄は、生きている新鮮な根を使います。
茶粥(ちゃがゆ)
米をほうじ茶または緑茶(粉茶)で炊いたもの。もとは奈良の僧坊で食べられていたものが民衆に広がり定着したとのいわれがあります。茶は木綿などで作った茶袋に入れ、湯を沸かした鍋で先に抽出し、そこに米を入れて炊き上げます。
文化としては「大和の茶粥」として奈良が発祥とみられるが西日本各地でこの食文化は見られます。
もち米は、甘味があり身体を温める性質がある。効能は、脾肺の虚寒・腸胃の冷弱な者に宜しい。
毎(つね)に多食するならば、性は粘滞のため、運転(めぐり)ができずに、腹につかえ痰を凝(こ)らし、風を動かして熱を発する。ただ、老人の小便回数の多い時、婦人の産後血暈(脳貧血の類)の回復しない時には、共に味噌汁で餅を煮て食すると、気を斂(おさ)め血を定め、冷を温める(補中益気・健脾止瀉・補肺養陰)。多食を避ける。
餅は、甘味があり身体を温める性質がある。効能は、気を益し、血のめぐりをよくし、脾胃の虚寒を温め、下腹部の軟弱を堅くし、久泄(くだりはらの長いもの)虚痢(下痢の類で虚証に属するもの)を止め、老人の小便頻数を縮める。
また、能く血を収め、気を縮めるので、新産・血暈から回復しない場合には、味噌汁と一緒に煮食するとおさまる。されども、多食して胃に停滞すれば、熱毒が人を害する場合が少なくない。ややもすれば塊積(塊は水毒などが体内に滞って病因となること。積は腹内に病毒の滞るもの)を成して永らく沈痼(久しくいえない病)の廃疾に至らせる。
昔から、鏡餅で賀儀を祝するには、二箇相重ねて一重(ひとかさね)という。鏡もちは元来、年神様へのお供えとした餅のことで、その形は「三種の神器」鏡・玉・剣を表しているといわれています。餅が鏡、蜜柑(橙)が玉、干し柿が剣を表しています。
飾り方は、鏡餅の上に蜜柑を飾るスタイルが一般的で、基本的には天辺に橙、もしくは蜜柑を飾り、御幣(ごへい)・四手(して)といった紅白の紙細工を橙の下に置き、お餅の下には、紅で縁をとってある四方紅といった紙を敷き、裏白を置き、お餅の下に飾ります。
江戸時代の人見必大著『本朝食鑑』にも、次のような餅が書かれています。今も食べられているものです。
五穀を餅に造ることが多い。粟・黍(きび)・大麦・胡麻・トウモロコシの類がそうである。
ヨモギ餅は、艾の若(わか)苗(なえ)を採(つみと)って茎をとり去り、煮熟して、蒸したモチ米に混ぜ合わせて搗き、餅にしたものである。葛餅も蕨(わらび)餅(もち)も共に、草の根を採って、細かく刻んで、さらし干しして、粉にひき、煮ながら煉って、餅にしたものである。牛蒡餅は、牛蒡の根を煮熟して、細かく砕き、蒸したモチ米と合わせて搗いた餅にて、麻油で煎(い)り、乾かしたのを食べる。砂糖の煎汁を和して食べるのも佳い。近頃茄子(なす)餅というものがある。生茄子の紫皮を刮(けず)り去り、二つに裂き、内側をえぐり取り、絞った汁でモチ粉の粉を煉(ね)り、それに砂糖を加えて団(まる)めたものを、初めにけずり開いてあった処に充塞(つめ)て二つをもとどうりに合わせしておき、その外側を稲草(わら)で緊(きつ)く縛って、せいろで蒸熟(よくむ)してから取り出し、豆粉・砂糖をまぶして食べる。
強飯(こわいい)(おこわ、蒸糯(むしたもちごめ)のまだ餅についていないもの)
小豆を加えて蒸して造るものもあれば、黒豆を加えて蒸して造るものもある。また青い蓮の葉に包み、青い燈草(とうしんぐさ)でしっかり縛るものもある。7月15日に各家で供している。蓮飯のことである。
母多餅(ぼたもち)
モチ米とうるち米とを組み合わせ、蒸熟して飯とし、すり鉢で磨ってから団餅にまるめ、蒸した小豆餡を抹(まぶ)したり炒った豆粉を抹したりして食べる。一名萩(はぎの)花(はな)という。形状が半泥半粒で、白い萩の花の窠(はなぶさ)(花房)に似ている。
また蒸した赤豆泥を抹したものも紅紫色の萩の花の窠(花房)に似ている。