桜皮
[気味]甘、温
[主治] 咳・痰、腫れ物、湿疹、蕁麻疹、皮膚病、ウルシ・髪染めかぶれ、魚・菌(茸類)の毒消し。一切の瘡毒を遂う。
桜桃(さくらんぼう)
[気味] 甘、温
[帰経] 肝・胃・腎
[主治] 足腰の痛み・しびれ・食欲不振・疲労・冷え症(袪風湿・透疹・補気益中)。
サクラはわが国固有のバラ科の植物です。鎌倉時代より花といえばサクラ、サクラの言えばヤマザクラでした。
ヤマザクラは長命で、百年をゆうに越える老樹が各地に散見、「敷島のやまとごころ」と賞され、観るものに「もののあわれ」を知らしめる日本の代表的な樹木と評されています。
ヤマザクラとは、北海道と東北地方の一部を除いた本州のほぼ全域、四国、九州に分布する日本特有の落葉高木です。
染井吉野は伊豆半島の江戸(えど)彼岸(ひがん)と大島桜の間に自然雑種だそうで、東京の染井の植木屋が始めて売り出したことに由来しています(この名は明治5年に付けられた)。
樹皮を乾燥したものを桜皮として薬用に用いる。『奇方録』に「一切の食毒に桜の甘肌を乾かして末にして用ふ」とあり、食中毒や急性胃腸カタル、痢疾などの用います。
華岡青洲は、化膿性皮膚疾患・蕁麻疹・急性湿疹などの使われる「十味敗毒散」に桜皮を用いました。
古事記にある木花開耶姫(コノハナノサクヤビメ)がサクラの語源だという説から、
見渡せば春日の野辺に霞み立ち咲きにおへるは桜花かも(『万葉集』 巻10 1872 作者未詳)
み吉野の山辺に咲ける桜花 雪かとのみぞあやまたれける(『古今和歌集』紀友則」
たぐひなき花をし枝に咲かすれば桜にならぶ木ぞなかりける(西行)
さまざまの事思ひ出す桜かな (松尾 芭蕉)
しきしまのやまと心を人問はば 朝日に匂ふ山桜花(本居宣長)
等々、そして江戸期末に至るまでの間、多くの人々に愛で親しまれたサクラというのは、ヤマザクラまたはその近似種であったと想像できます。
「本居宜長四四歳自画自賛像」の賛には「めずらしきこまもろこしの花よりもあかぬいろ香は桜なりけり」とヤマザクラの大きな枝を挿した瓶の前に端座する自画像を残しています。
木花之(このはなの)佐久(さく)夜(や)毘賣(ひめ)は桜樹の権化(ごんげ) 本居宣長はサクラを薬とした
花とは、本居宣長の説によると、木花之佐久夜毘賣は桜樹の権化で、「満の木花の中に桜らぞ勝れて美しき故に佐久良とは云えり」、万葉集藤原朝臣(あそん)廣嗣(ひろつぐ)の桜花を娘子に贈る歌を例に此花とはサクラなり「いよいよ後には、ただ花といえば、もはら桜のことなれり」と、江戸中期ごろよりこのかた単に花と詠まれれば、なべてサクラの花を指すようになった、といいます。
宣長は、サクラをこよなく愛し、これが嵩じてか、薬としての開発をしました。
・桜は酒毒を消します。八重桜の花の塩漬けは、に白湯(さゆ)に戻して愛飲されます。二日酔いの妙薬として有名です。
・葉も同じく解毒薬、塩漬けにして桜餅を包み、防腐を兼ねて体内に滞(とどこお)る古血を清め、肝臓機能を助ける役目を果たします。
・桜の幹の皮は生薬で「桜皮(おうひ)」とよび漢方処方の十味敗毒(じゅうみはいどく)湯(とう)・治(ち)打撲(だぼく)一方(いっぽう)に配剤され、消炎・解毒・鎮咳祛痰剤、食中毒、食傷、下痢または外用して漆被れに使われます。
・咳・痰に桜皮5gを煎じて1日3回に分服。
・腫れ物・湿疹・蕁麻疹・皮膚病・ウルシかぶれ・髪染めかぶれに桜皮10~15gを煎服。また煎汁で患部を洗う。
・魚・茸の中毒に桜皮10~15gを煎服。(蛇に噛まれた時に付けると良い)
・アセモ・皮膚病には葉をいれて入浴する。